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二日目

窓から差し込む光に、私は薄っすら目を開けると、目の前に香澄の顔が度アップで映し出された。

うん……香澄ちゃん……でも一緒に寝ているはずないし……これは夢かな……?

寝ぼけ眼で目の前に見える香澄に手を伸ばすと、柔らかそうなほっぺを、ツンツンとつついてみる。

柔らかい……うん…………?

次第に意識がはっきりとしてくる中、香澄はうーんと声を上げ、私の手から逃れるように寝返りを打った。

あれ……いや、これ夢じゃない……!?


私はパチリと目を開けると、ベッドから飛び起きた。

えっ!?どうして香澄ちゃんがここに居るの!?

え……あれ……、いや……昨日の夜、部屋に戻った時……私一人だったはず。

混乱する中、ベッドの上に座り込んでいると、香澄が薄っすらと目を開け、体を起こした。

私は香澄の動きに、思わず後ろへ体を引くと、その拍子にベッドから体が滑り落ち、体に鈍い痛みが走る。

いたた……っっ。


「お姉様、おはようございます」


目を擦りながらそう呟く香澄の可愛さに、思わず笑みがこぼれと、痛むお尻をおさえながらも、おはようと立ち上がる。

香澄は大きく欠伸をする中、腕を伸ばし、背筋をピンッと張った。

あれ……いやいや、何和んでいるの自分!


「かっ、香澄ちゃん、どうしてここで眠っていたの?」


「お姉様慌ててどうしたの?……それは……ふはぁ……、昨日夜中に、お姉様の部屋へ入ったからですわ」


平然とした様子で話す香澄に、私は大きく目を見張ると、サッと扉の方へ視線を向ける。

昨日は寝る前に天国確かにカギはかけたはず……。

扉と香澄を交互に目を向けていると、彼女はニッコリと笑みを浮かべた。


「ふふ、鍵の事ならねぇ……私スペアーキーを持っているの」


香澄はどこからかスペアーキーを取り出すと、私へ掲げて見せる。

その姿に私はその場で項垂れると、小さく笑う香澄の声が耳に届く。


「だってぇ~、お姉様にちょっかいを出してくる男が侵入してきたら危ないでしょ……。だから私がお姉様を守りにきたのよ!」


その言葉に私は顔を引き攣らせると、とりあえずありがとうと呟いておく。

すると扉から何やら激しいノック音が響いた。


「彩華様!!何か大きな音がしましたけど、大丈夫ですか?」


花蓮の声に私は慌てて立ち上がると、扉の鍵をあける。

心配かけてごめんなさい、何でもないの!!と口を開く前に、香澄がニヤリと笑みを浮かべながら、花連の前に立ちはだかった。


「どうして香澄さんがここにおられるのですか?」


「私はお姉様と一緒に寝ていたからですわ~ふっふふん」


二人がバチバチと睨みあう中、次第に険悪なムードになっていく。

そんな彼女たちの様子に、私は頭を抱えながら、そっと扉から離れた。


「もう!!あなたが勝手に入ったんでしょ!!見てみなさいよ、彩華様が困っているじゃない!!!」


「煩いわね、花蓮。私とお姉様は仲良しなの!一緒に寝ていてもおかしくないでしょ!」


ギャギャと始まった言い争いに、私は一人洗面台へ逃げ込むと、彼女たちをそのままに着替え始める。

止めに入ろうとすると、私まで巻き込まれるんだよね……。


遠くから聞こえる言い争いに、聞こえない振りをする中、私は顔を洗い、歯磨きをしていると、脱衣所の扉がドンドンドンと叩かれ始める。


「お姉様~~~!!花蓮ったらひどいの!!!」


「やめなさいよ、はしたない!……彩華様ゆっくり着替えてくれて大丈夫ですわ」


二人の声に苦笑いを浮かべる中、外では無視できないほど、大きな声が響きわたっていた。


騒々しい朝が過ぎ、キッチンルームへ向かうと、もうすでに全員が集まり朝食をとっていた。

慌てて私たちも席へ着く中、二条が徐に口を開く。


「なぁ、ちょっと良いか?ここから少し距離はあるんだが、いい海の家があるんだ。みんなで行かないか?」


二条の提案に皆賛同すると、朝食を終え、皆一度部屋へと戻っていく。

正午前にもう一度皆リビングへ集まると、二条に続くように別荘を後にした。


二条からその海の家の話を聞いてみると、何でもそこの焼きそばが絶品らしい……。

名家に焼きそば……イメージはつかないけど、二条に焼きそばは似合うなぁ。

そんなどうでも良いことを考えながら、プライベートビーチを抜け、公道を歩いて行くと、海水浴客でにぎわい始める。

私は立花さくら姿を探すようにキョロキョロと歩いていると、日華先輩がどうしたの?と私の隣へ並んだ。

誤魔化すように笑みを浮かべると、口を開いた。


「人が多いなと思いまして……、なんだか、目のやり場に困る……なんて……」


そう日華先輩へ顔を向けると、彼は爽やかな笑みを浮かべた。


「まぁ、そうだねぇ。でも彩華ちゃんがこの人込みの中でも輝いているよ」


日華先輩はこちらウィンクして見せる。

その姿に私は顔をひきつらせると、日華先輩から視線をそらせた。

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