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保健室へ

嫌がらせは止むことはなく、過激になっていく。

私は警戒しながら朝早くに学園へと登校していた。

下駄箱はあれ以来一度も開けていない。

中がどうなっているのか想像するのも恐ろしい。

だけど見えるところに落書き等されていないから問題ないでしょう。


私はいつものようにカバンから上履きを取り出すと、誰もいない静かな廊下へと足を向ける。

自分の足音が響く中、ふと誰かの足音が重なった。

私は慎重に振り返ると、そこには日華の姿。

こんな朝早くにどうして……まずいなぁ……。


「彩華ちゃんおはよう、今日も可愛いね~。いつもこんなに早く学園へ来ているの?」


「あっ、はい。早く来て予習をしているんです」


偉いね、と日華が私に微笑みを浮かべると、私の前で立ち止まった。

私はそんな日華先輩の様子にサッと目を逸らせると、彼に背を向ける。


「急ぐので、私はこれで……」


私はそのまま逃げるように教室へと足を向けると、日華先輩も歩き始める。

階段を上り1年の階へ向かうと、日華輩も同じように階段を上ってきた。

3年生の教室は1階だから、階段を上る必要はないはずなのに。

この間の件で怪しんで教室までついてくるのかな。

それはまずい、さすがにあの落書きを見られれば誤魔化すことはできない。


「えーと、日華先輩はどこへ行くつもりなんですか……?」


「……あぁ、図書室へ行くんだ」


4階にある図書室、それならよかった……。

私はほっと息を吐くと、ほっと胸を撫で下ろし階段を上っていった。


3階へ到着すると、私は日華先輩に手を振りA組へと急ぐ。

誰もいない教室の扉を開けると、机には相も変わらずマジックで落書きがされていた。

私はいつものように跡形もなく落書きを消すと、黒くなったティッシュをクシャクシャに丸める

はぁ、焦った、まさか日華先輩に会うなんて。

明日は、今日よりも早く登校しよう、また日華先輩と会ったら心臓に悪いし。

私はティッシュをゴミ箱へ捨てると、綺麗に磨かれた机の上に教科書を広げたのだった。


翌日いつもよりさらに早く学園に登校すると、机の上には何もなかった。

そのことにほっと息をつくと、やっと飽きてくれたことに嬉しくなる。

でもまだ油断はできないよね、偶々かもしれないし、念のため明日も早く登校しよう。

綺麗な机を見つめながら私は小さくガッツポーズを決めると、よしっと小さくつぶやいた。


それから朝早くに登校し続けていたが、。あれ以来一度も見ていない。

クラスの雰囲気は変わらないが、それはそれで問題ない。

そっとしておいてくれるほうが楽だからね。


そんなある日、昼休みが終わり教室へと戻り席へつく。

教科書を取り出そうと机の中へ手を入れると、ピリッとした小さな痛みに、私は慌てて手を引き抜いた。

指に切り傷が付き、ポタポタと血が床へと滴り落ちていく。

恐る恐る机の中を覗き込むと、裏にカッターの刃がテープで固定されていた。

はぁ……まだ飽きていなかったのね。


切っていない手でカッターの刃を外すと、ティッシュに包みゴミ箱へと捨てる。

深く切ってしまったのか、ティッシュで血をふき取るも血が収まる気配はない。

しょうがない、保健室へ行こう。

私は手を隠しながら教室を出ると、そこに先生が立っていた。

保健室に行ってきますと先生に笑みを浮かべると、そのまま振り返ることなく廊下を進んでいった。


誰もいない保健室へ入ると、傷を消毒し手に絆創膏を張って血を止める。

絆創膏が真っ赤な血に染まっていく様をぼうと眺めていると、ガラガラと勢いよく保健室の扉が開いた。


「一条さん大丈夫ですか!?」


体操服姿の華僑は私の元へ走ってくると、真っ赤に染まった絆創膏に、痛いたしそうな表情をみせた。


「これは……どうしたんですか?」


「あー、ちょっと慌てちゃってね。えーと、紙で手を切っちゃったんだ」


私は手を隠すように後ろへ回すと、華僑は真剣な瞳で私を覗き込み、強く肩を掴んだ。


「一条さん、本当の事を話して」


もしかして気づかれた……?

いえ、私が話さない限り確証はないはず……。

私は気まずさに思わず目を逸らせると、肩を掴む手に力が入っていく。


「……ッッ、どうして……」


弱弱しく呟かれた言葉に私は何とか笑みを作ると、おもむろに顔をあげた。


「心配してくれてありがとう。もう大丈夫よ。それよりも、華僑君もどこか怪我したの?大丈夫?」


話題を変えようと問いかけてみると、華僑は悔し気に唇を噛んだ。


「僕は大丈夫です。一条さんが保健室行く姿が見えて、追いかけてきました」


「そうだったのね。ありがとう、でも本当に大丈夫だから。早く戻らないと先生に怒られちゃうね」


私は逃げるように後ずさると、そのまま保健室を出て行った。


教室へと戻ると、なぜか保健室で華僑と二人っきりになっていたと、生徒たちの間に噂が広まっていた。

二条だけでなく華僑にも手を出す尻軽女。

男好きの遊び人だの、ビッチだの、廊下を歩くたびにコソコソと侮辱する言葉が聞こえてくる。


どうしてこんなに早く噂が広がっているの?

疑問に感じながらも答えは出ない。

次第に生徒達から蔑むような視線を向けられ、時には足を引っかけられそうになったり、わざとぶつかってきたり……直接的な嫌がらせが増えていった。

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