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恐れていた事態(歩視点)

彩華が見つからない事に苛立つ中、時間だけが過ぎ去っていく。

二条と華僑が登校途中にある防犯カメラを全て確認したが、手掛かりは何もない。

日華にも事情を話し、付近の病院へ連絡をとってもらったが、彩華が現れた形跡はやはりないようだ。

そんな中、僕は立花さくらを見張っていると、スマホの着信音が響いた。

慌ててスマホを取り出すと、そこには北条の名前が表示されていた。


「北条!!!何があった?彩華は無事か?」


「一条様申し訳ございません。彩華様は……無事ですわ。今ミスコン会場へ向かわれております」


「よかった……。君はどこにいる?」


僕は北条の居場所を聞き出すと、すぐに校庭へと走っていった。

その間に二条、華僑、日華へと彩華が見つかった旨をメッセージで送信していく。

そうして校庭へとやってくると、北条は人気が少ないテニスコート近くのフェンスに佇んでいた。


「北条、無事でよかった。それで何があったんだい?」


そう問いかけてみると、北条は俯いたままにボソボソと話し始める。


「あの、その……彩華様の体調が……」


「それならあんなメッセージは送らず、電話をしてくるはずだろう。それにメッセージ後すぐに位置情報を確認したが、すでに電源が切られていた。さらに言えば付近の病院へ行った形跡もない。何を隠しているんだ?」


「……一条様、すみません。あの……言えませんの……ごめんなさい、ごめんなさい」


北条は衰弱した様子で顔を上げると、今にも泣きそうな表情を浮かべ必死に頭を下げる。

その様子に僕は彼女の肩を掴むと、無理矢理に視線を合わさせた。


「なら、なぜ言えないかを話すんだ」


「それは……あの……言えば彩華様の……うぅぅ……ッッ申し訳ございません……私が守り切れなかったから……ッッ」


「彩華のなんだ、ちゃんと言うんだ」


北条は潤んだ目で僕を見つめると、頬に涙が伝っていく。

只ならぬ彼女の様子に不安が渦巻く中、彼女は視線を落とすと、小さく口を開いた。


「……言えば彩華様の写真をネットでばら撒くと……」


蚊の鳴くような小さな声に耳を傾ける中、僕は彼女の言葉に目を見開いた。


「写真?……どんな写真なんだ」


北条は大粒の涙を零すと、ポタポタと地面を濡らしていく。


「うぅ……ッッ、ヒィック……ッッ、彩華様の下着姿の写真ですわ。……たぶん彩華様も私と同じように脅迫されたのだと思います。今回の事を話さないでほしいと、彩華様から言い出したの。それに解放される直前、彩華様は男にスマホの画面を見せられて、何か揉めておりましたもの……」


男……?

彩華の下着姿……。

なぜそんなものが?

一体何があったんだ?

怒りのあまり腕が震え始めると、僕は知らず知らずのうちに拳を強く握りしめていた。


「北条、全てを話せ。今すぐにだ」


そう静かに命令すると、彼女は縋り付く様子で僕の胸を掴んだ。


「一条様、お願いです。どうか、どうか犯人捜しはおやめください。はっきりとその写真を見ましたわ。彩華様の写真がネットに流れでもすれば取り返しがつきません。だから……」


「わかってる」


僕は北条を鋭く見据えると、彼女はビクッと肩を大きく跳ねさせた。

話せともう一度命令すると、北条はハンカチを取り出し涙を拭いながらに、ゆっくりと話し始めた。


朝学園へ向かう途中に、覆面の男たちに囲まれ拉致されました。

車内で薬を嗅がされ、次に目覚めた時には薄暗い倉庫のような場所でしたの。

彩華様の姿はなくて、腕を縛られ拘束され身動きが取れませんでした。

そんな中、男が部屋へと入ってきましたの。

男は私のスマホを片手に、理由は何でもいいから、学園に居る友人に、遅れる旨をメールしろと命令してきました。

そこで私は一条様にメールを送ったのですわ。


きっと一条様でしたらあのメールで異変に気が付くと思い、場所が探知できるよう電源を入れさせたままにしようとしたのですが……メッセージを送ってすぐ男に電源を落とされてしましたの。

彩華様の無事を尋ねると、別室に居ると説明されました。

その男に拉致した理由も尋ねてみたのですが……教えて頂けませんでしたわ。

只時間が来れば解放する、そう言い残して男は出て行きました。


暫く部屋に放置されて……次に現れたのは別の男の人でした。

その男が言ったんです。

もう一人の女が取引に応じたから解放してやると……。

内容は教えて頂けませんでしたが……彩華様は何か取引をしたようですの。


それでバイクに乗せられ、学園の近くで下ろされました。

そこで彩華様の写真を見せられたんです。

今日の事を喋ればネットにばらまくと……取引についても誰にも話すなと……。

こちらを探る素振りを見せれば、すぐに拡散すると、そう言われました。


「私が知っているのはこれが全てです。彼らがなぜ彩華様を拉致したのか……何が目的だったのか……それはわかりません。それに彩華様は一体どんな取引をしたのか……でも彩華様お優しい方です。大丈夫だと申しておりましたが……彩華様でしたら私に心配をかけないよう、何かあったとしても、何も話さないと思いますの」


彼女の言葉に目の前が闇に染まると、憎しみと怒りが胸の中を渦巻いていく。

彩華が……男たちに……?

捕らえられた彩華の姿が頭を過ると、どうしようもない怒りに体が小さく震えていた。


「車種やナンバーは見ていないのか?拉致された場所は覚えているか?」


「車種はわかりませんわ……。ですがフルスモークの張られた、セダンの黒い●●●と言う車です。ナンバープレートは布で覆われていて確認できておりません。帰りはバイクで運ばれてきたのですが……バイクも同じようにナンバープレートは薄い布で覆われていて……。車種は……ごめんなさい、バイクにはあまり詳しくないのでわかりませんの。ですが監禁されていた場所はわかりますわ。バイクの後ろに乗っていたので、道を覚えてきました。ですが……もしその場所を探れば、相手にばれる可能性があると思いますわ。相手はこういった事に慣れている様子でした。道をわからぬよう気絶させて……現地まで運んで、顔を隠して、手袋もしておりましたわ。なのに最後の最後で道をわかるように運ぶなんて、怪しすぎますもの」


北条の言葉を頭の中で整理する中、僕は苛立ちをぶつけるようにフェンスを大きく揺らせた。

そんな僕の様子に北条は俯くと、彩華の名前を呟いている。


「経路を紙に書いて僕に渡してくれ」


「ですが……あの……」


「わかっている。写真を相手が持っている限り、こちらも迂闊には動かない。だが少しでも相手の手掛かりは欲しいんだ」


僕の言葉に北条は頷いて見せると、カバンから紙とペンを取り出し書き記していった。


文化祭編はここで終了です!

お読み頂きまして、ありがとうございますm(__)m

次話より新たな登場人物がメインでストーリーは進んでいきます。

楽しんで頂ければ嬉しいです(*'ω'*)

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