~番外編~ 夢オチ 他人の家で勝手にシャワーを浴びてた失礼女に反抗してみた
※注意※
こちらのお話には、『見た目いじめられっ子』の世界観にそぐわない(と感じる人もいるかもしれない)漫画、アニメ、ラノベ等におけるラブコメテンプレイベント要素が(少し)含まれています。苦手な方はご注意下さい。
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奏介は玄関のドアを開けた。
「あれ?」
鍵が開いていた。どうやら出かける時に母親が締め忘れたらしい。何度か経験がある。
「まったく。そそっかしいな。……ただいま」
中へと入る。今日は母親がパートに出掛けていて、家の中には誰もいない、はずなのだが。
奥から水音がしていた。ザーという感じの、雨音のような。
そっと靴を脱いで細い廊下を進むと、浴室からの音のようだ。
「……?」
開けると脱衣場には誰もいないが、磨りガラスの向こうに人影があった。
「母さん……?」
夏じゃあるまいし、夕方のこんな時間からシャワーを浴びるとは。
と、シャワーの音が止んで、浴室のドアが開いた。慌てて出ていこうとしたのだが。
目が合ってしまった。タオルで裸を隠しているが、それは奏介と同じくらいの年代の少女だった。金髪碧眼、白い肌。日本人ではなさそうだが。
「きゃ……きゃあああっ」
そう叫ばれて、思い切り頬をビンタされた。
「っ!」
衝撃はあったものの、何故か痛みはほとんどない。とはいえ、完全に不意討ち、なんとか踏ん張ったが尻餅をつくところだった。
「あ、あ、あなたっ、一体なんなの!?」
少女は顔を真っ赤にしてすぐさまバスタオルを体に巻き付ける。
奏介は頬を押さえながら少女を睨む。
「一体何はこっちのセリフだ。お前誰だ?」
「この変態っ」
有無を言わさず、いきおいよく廊下に押し出されたのだった。
数分後、奏介は浴室の前で仁王立ちしていた。しばらくして、金髪少女が勢いよく扉を開けて出てきた。
顔は赤いままだ。しかも涙目。
「この変態っ、よくもわたしのお風呂タイムを覗いたわね!?」
「何が覗いただ。脱衣場に誰かいるのも確認せずに出てきた癖に、言いがかりも甚だしいだろっ。ていうか、お前誰なんだよっ」
「聞いてないの!? 今日からここにホームステイをするティア・ノース・藤野よ」
「知らんっ。もし本当だとしても、いきなり他人の家のシャワー浴びるバカがどこにいるんだっ。絶対許可取ってないだろっ」
「うるさいっうるさいっうるさいっ、とにかくあなたが覗きした事実に変わりはないわっ」
「てめえは不法侵入だろうがっ」
ティアは腕を組む。
「鍵が開いてたんだもの」
「……さては空き巣だな?」
「はぁ!? 失礼にも程があるんじゃない!?」
「出会い頭に顔をビンタしてきたやつに言われたくないんだよっ」
生徒会長とのことを思いだし、さらに腹が立った。
「とりあえず、通報するからな」
スマホに110を打ち込んだところで、奏介ははっと目を開けた。
「……夢」
見慣れた天井にほっとする。
枕元には詩音から借りたラブコメ系の漫画が放置してあった。読みかけで寝落ちしたらしい。
しばらく夢の余韻に浸る。
「……早く通報しとけばよかった……」
買った喧嘩を投げ出して現実へ戻ってきてしまったも同然だ。
失礼女を言い負かして警察に突き出して初めて勝利だったのに。
「次会ったら覚悟しとけよ、ティア・ノース・藤野」
奏介はもぞもぞと布団にもぐった。




