女湯を覗こうとするヤンキーに反抗してみた3
黒木は絶賛反抗中の両親に対し、怒りが湧いてきた。この構図、目の前の少年に言われてここへやって来たように見える。
「……んだよ。こんなところに来てまた説教か? うっぜえんだよ。てか、このクソオタクとグルかよ」
黒木父が拳を握りしめる。
「いい加減にしろ! 俺達だけならともかく、よそ様に迷惑をかけて」
「迷惑? そんなん知ったこっちゃねえよ。なあ?」
黒木が友近達に話を振る。
「そうそう。説教できるほど偉くないよね?」
「常識のある大人~みたいな態度がきもい。ああ、お前の親父だっけ? あのハゲ」
三瓶田がニヤニヤと笑いながらいう。
「デブババアとハゲでお似合いだろ? うちの親。なんでもかんでも文句言って来て、きめえんだよなー。あいつら」
ぎゃははと笑う。
息子の友人という立場からの罵倒に絶句する黒木夫妻。そしてそこに、派手めの女性が現れた。
「牧人」
本名、友近牧人ははっとしたようで、その女性を見る。
「何を、してるのよ……。行部さんに迷惑でしょ!?」
「はあ、もしかして、全員呼んでる?」
友近が奏介を呆れた様子で見る。
「色んな男と遊びまくってる女に言われたくないね」
友近に冷たく言われて、派手な女性、もとい友近母はやはり青い顔をする。
「で、うちの親も登場、と」
三瓶田がつまらなそうに言うと、かなり高齢の男性が息を切らして浴場に入ってきた。
「か、和久。やめなさい。恥ずかしくないのか」
「自分の妻に出て行かれた奴が何言ってんだよ。やめなさい? 笑わせんなっての」
(親には強気だな)
奏介は内心で、ため息を吐いた。自分の親だから反抗的な態度をとっても、なんとかなる。大事になどなるはずがない。ある意味信頼しているわけだ。
黒木はどうやら両親の過干渉による普通の反抗期。友近は母親の男遊びを良く思っていなくて、三瓶田は母親が父親のせいで出て行ったことを良く思っていない。
黙ってしまった親達に黒木達は調子を戻したようだ。
「これが奥の手ってか? こんな奴ら呼んだからってなんなんだよ? ああん?」
「調子に乗ってんじゃねえよ。覗きのオカマ野郎。女湯覗きながら何、親に文句言ってんの? そこがキモいって言ってんの。下手な化粧してスカート履いて、女子トイレにも入ってたよな? 腰にぶら下がってるそれをぶった切ってから、女性のランジェリーショップに入れよ。どういう感覚でいたら店頭で堂々とブラとか試着できるの? せめてネットだろ」
黒木達はぽかんとした。早口で何を言われたのか、よく分からなかった。
親達の表情が別の意味で驚愕のものに変わる。
「お、おま、お前、何を……。じょ、女子トイレ? スカート?」
「うう、うううっ」
黒木母が泣きだしてしまい、父の方が彼女を支える。
「こ、この変態息子が! 恥ずかしくないのか!」
「お、男が好きってこと? ま、まさかまさか……下着を揃えるってことはそういうことも」
友近母の動揺に奏介は笑顔で言う。
「ええ、そういうことです。でも、友近さん、今時そういう方がいるのは普通です。同姓が好きな方はいますしね。でも、男性の体で下着の試着をしたり女湯を覗いたりするのはちょっと配慮にかけますよね」
「……」
奏介の言葉に黙る友近母。相当ショックだったようだ。
「そ、相談してくれれば悩みを聞いたのに。和久、自棄になってるのか?」
と、三瓶田父。
「いや、三瓶田さん。あの人、悩んでないしかなりオープンですよ。でも、男性の体で女湯に入るのはちょっとおかしいですよね。やっぱり戸籍を変えてからしないと」
黒木は目を見開いて、固まる。
「何を……何を言ってんだ!? 一から十まで、デタラメ言いやがって」
奏介は鼻で笑う。
「こっちは調べてんだよ。惚けても無駄だから」
そう言うと、奏介は誰一人動けない状況で脱衣所まで行き、着替えを入れるための籠を持ってきた。男性の服が乱雑に投げ込まれている。
「そ、それはオレの」
黒木の服らしい。
奏介は床にそれを置いて、その中に手を突っ込む。
「ほら、こういうことだろ?」
籠の底から出てきたのは可愛らしいピンク色のブラだった。ちなみにAカップだった。
奏介がどうやってピンクなアレをそれを用意したか? 彼には女子の友人がたくさんいますので(笑




