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同じマンションに住む妊婦さんの義母に反抗してみた2

 田辺義母は顔を引きつらせながら奏介を見る。

「し……失礼なっ」

 奏介は口元を押さえた。

「あ、初対面なのに失礼しました。申し訳ないです」

 奏介は軽く頭を下げてから、

「でも、そちらも失礼じゃないですか? いきなり、浮気してるなんて言われたら、誰でも頭に来ると思うのですが。後、初めましてですよね? 礼儀という概念がないのでしょうか?」

「っ! ちょっとユキノさん、誰なのこの失礼な子はっ」

「だから、同じマンションに住んでいて、田辺さんが大変そうだったからお米を運ぶのを手伝ったんです。ああ、名前ですか? 五階に住む菅谷といいます」

 田辺義母は歯噛みをする。

「で、出て行きなさいよっ、失礼過ぎるわっ」

「その前に浮気扱いしたことを謝ってもらえませんか? あと、失礼なのはあなたです」

「出て行かないと警察呼ぶわよっ」

「どうぞ」

 その場がしんとなる。即答に驚いたのか、女性は固まっている。

「どうぞ? ここは田辺さんの家であって、あなたの自宅ではないですよね? なんでここの住人じゃないあなたに出て行けとか言われなきゃならないんですか?」

 奏介は息を吐いた。

「あの、ちょっとお聞きしたいんですけど、田辺さんにお米買ってくるように頼んだのってあなたなんですか?」

「……それが、どうしたって言うのよ?」

「見て分かる通り、田辺さんは妊娠をされていて、今大変な状態でしょう? なんで一人で買い物行かせた上に重いものを持たせてるんです? 高校生の俺でも知ってますよ。妊婦さんは重いものを持っちゃいけないって」

「そんなの、迷信よ」

「いや、医学的に言われてるでしょ。医者でもないのに知ったような口きくのやめてもらえません? どうですか、田辺さん。お医者さんに言われてません?」

「あ、うん。流産とか早産の危険があるから、なるべく持たない方が良いって」

「ですって。もしかして、お孫さんを流産させようとしてます? これ殺人未遂ですか?」

「あなた何様なの!? 訴えるわよ!?」

「何をどう訴えるんですか? 妊婦さんに重いものを持たせちゃダメですよって言ってるだけで、訴える要素ないでしょ」

 田辺義母は次の言葉が出ず、黙らざるを得ないようだ。

 まったく謝罪をする気はないらしい。

「後、そのお味噌汁。田辺さんが大きなお腹を抱えて頑張って作ったのになんでそういうことするんですかね?」

「味が悪かったからよ。文句ある!?」

「味が悪かったって、薄ければ味噌足して、濃ければ水足して、出汁が足りないなら出汁の素足せばいいでしょ。材料代だって無料じゃないんですよ? 水道代、ガス代、味噌、豆腐、ネギ、わかめ、全部お金かかってるんです。それを全部流しに捨てるって、もちろん田辺さんに弁償するんでしょうね?」

「うぐ」

「俺、何か間違ったこと言ってます?」

 と、その時。

「ぷっ」

 田辺さんが口を押さえていた。

「あはははっ、確かに! お味噌汁作るために今日の昼にネギとお豆腐買ってきたのよね。それ全部捨てられちゃったとか家計に響いちゃうわ」

 田辺義母が表情を引きつらせる。

「こ、このくらいで家計に響く? あるわけないでしょっ」

「うち子供生まれるので節約してるんです」

田辺はそう言い切って、

「すみませんけど、お義母さん。しばらく実家で過ごしますね。子どもに悪影響出ちゃいそう」

「それが良さそうですね」

「ありがとね、菅谷君」

「いえ、じゃあ俺帰りますね」

「うん」

 奏介はそのまま田辺家を後にした。

 田辺義母が怒鳴っているようだったが、笑って対応しているようなので心配なさそうだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 実際頭がイカれた姑が警察よんだところで、田辺さんが事情を説明したら警察の人はこのババアマジかよ……みたいな目でキチガイババアを見るだろうなぁ。
[一言] 奏介見事に鬼姑やりこめるw 奥さんも実家に帰って正解ですよ。 旦那さんは気付いてなかったのかな?
[一言] 私の母親も同居した時味噌汁捨てられたって言ってたね。
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