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同窓会メンバー3人に精神的ダメージを与えるために反抗してみた9

在賀ありがみえと鎌田かまたマヨ、そして松中まつなかネネはそれぞれ欠伸をしながら、下校していた。帰宅路をつまらなそうに歩く。

「てかさー」

 鎌田のだるそうな声かけに在賀がこちらへ視線を送ってきた。

「なやっちって何があったの? 連絡なしに、急に」

 三人の友人である佐野なやかは先日、退学した。噂では警察の厄介になり、学校側と揉めた上で自主的に退学したとのことだった。

 心配してメッセージを送ってみても、返事は返ってこない。何があったのか、謎のままだ。

「なやちゃん、多分スマホ解約したよね。昨日電話したけど、番号使われてないって」

「まじかー。なんだろ。そういえば小学校の同級生とめっちゃ仲良さげだったよね?」

「ああ、うん。皆で普通にいじめとかしてたって言ってたし」

 そんな二人のやり取りに、松中が盛大なため息を吐いた。

「もう、佐野さんのことはどうでも良いでしょう? もうすでに同級生でも友達でもないのだから」

「え」

 在賀が目を瞬かせる。鎌田は苦笑を浮かべる。

「ねねっち、厳しいね~。でもさ、一応、一緒に青春を過ごした仲間で」

 ネネは長い髪をかき上げて、

「聞いたでしょ? 警察にお世話になってるのよ。こちらまで巻き添え食らうかもしれないのに、友達だったみたいに言わないでくれる?」

「それ、噂だよね? 本当なの?」

 在賀が恐る恐る聞く。

「実際、本当らしいわよ。だからこそ、もう他人の振りを」

 と、その時だった。

「佐野なやかとつるんでた三人て、お前ら?」

 進行方向に立っていたのは、桃華学園の制服を着た男子生徒だった。険しい顔、いわゆる仁王立ちだ。

「は、誰」

 鎌田は思わず、呟くようにそう言った。

「申し遅れました。桃華学園の菅谷と言います。若原さんの、まあ友人ですね」

 在賀と鎌田は少しびくっとした。若原咲人、学校の先輩である彼に謂れのない噂を流し、周りからの信用を落とさせた。

 そんな中、松中が目を細める。

「佐野さんは友人でしたが、退学してしまったので友人ではなくなりました。若原さんというのは、ウチの学校の若原先輩ですか? あまり関りがないので知りません」

 松中がさらりと佐野との関係を否定したので驚いた。

「ちょっと、友達じゃなくなりましたって酷いでしょ」

「そうだよ、言い過ぎだって」

 桃華学園の生徒、もとい奏介も目を細める。

「これは確認なので、友人でよく一緒にいたことは分かってますから。堂々と嘘を吐くのはどうかと思いますね」

「ああ、そうですか。それはそれとして、何故他校の生徒がウチの学校の問題に首を突っ込んでくるのでしょうか? 関係ないでしょう」

 松中は強気だ。元々勝気な性格なので、一歩も引かないといった様子。

「言ったでしょ。おれは若原さんの友人なんです。あなた達が流した若原さんの悪い噂のせいで、彼はかなり苦しんだようですよ」

 在賀と鎌田は思わず視線を逸らす。

 松中は鼻を鳴らした。

「そんなことしてません。証拠でもあるんですか?」

「……」

 奏介が黙ったのを見て、松中は反撃に転じる姿勢。

 在賀達は思わずほっと胸を撫でおろした。

 鎌田は思う。

(どうしよう。あの時は、なやっちとねねっちに誘われて)

 同じ心境の在賀と目が合う。

 誰かの根も葉もない噂を四人でこっそり広める。背徳感を強く感じ、ちょっとしたイタズラはスリルがあった。なんとなく正常な判断ができなかったように思う。

「いきなり話かけて来て、失礼な人ですね。警察呼びますよ、変質者」

「一切反省してないってことですね?」

「なんの反省をお望みで?」

 奏介はため息を一つ。

「あのですね。若原さん達は色々調べたみたいですよ? 噂の出所を調べていくうち、いきついたのはあなた達四人の証言です。波風が立たないようにこうやって間に入って俺が来てるんです。くっだらないことして一人の人間を陥れようとしたんですから、反省するのは当然だし、謝るべきでしょ」

 と、奏介の後ろから若原咲人が現れた。

「! 行きましょう、二人とも。付き合ってられませんよ」

 松中の指示で、在賀と鎌田は走り出した。このままでいいのだろうか。

 追っては来ない。後ろ髪を引かれるようだった。


 〇


 咲人登場で、逃げた三人の背中に奏介は呆れ顔。

「ドクズ佐野はともかく、謝れば済みそうなのに」

 咲人も苦笑を浮かべている。

「悪かったって反省してたら、許すかどうか考えようと思ってたんだけどね」

 そもそも認めない気らしい。

「まあ、仕方ないですね。若原さんの人生潰しそうになったのに知らない振りをするとか、佐野と同レベルでクズです」

 奏介はスマホを取り出した。

「では、あの三人に悪い噂をお返しするってことで良いですか?」

 若原は、ふっと息を吐いた。

「うん。夢に見るほどトラウマなんだ。許さないよ」

 奏介は準備していた仕掛けを発動するために、スマホの画面をタップしようと親指を近づけた。その時。

「「あの」」

 声が重なった。

 そこには息を切らした、在賀と鎌田、二人が立っていた。

 奏介は親指をキープしたまま、彼女達に向き直る。

「どう、したんですか?」

 慎重に、そう声をかけた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おおっ、ミサイル発射ボタンに手がかかっていた、その時に戻ってくるとは! まさに首の皮1枚で首が繋がったか〜 マジで、ここが運命の別れ道だったかも。 犯罪として訴えられていたらアウトだろう…
[良い点] 更新ありがとうございます。 作者様、ごめんなさい! 佐野の『元』友人3人の名前を見て、 【みかんのマヨネーズ和え】 という、クソマズかった小学校の給食メニューの1つを思い出して噴きました…
[一言] なんかほんと若原さんが全てにおいて可哀想で笑えないですね。在賀と鎌田はケツ割って助かろうとしてますけど彼に盛大にキレ散らかさられて欲しい気持ちが大きいです。 松中とかいうのは論外ですから存分…
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