表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
328/392

『第146部』痴漢被害に遭った女子高生を中傷するサラリーマンafter

146話、147話の後日談です。

 川又昌晃かわまたまさあきはぎゅっと拳を握り締め、歩いていた。

(あのガキどもめ)

 良くしてもらっていた上司の赤根朝雄あかねあさおを痴漢として告発し、社会的な立場を奪った女子高生とその仲間達には腸が煮えくり返りそうだ。電車内での言い合いのせいで川又自身も警察に突き出されそうになった。最終的に暴言を吐いただけとして口頭注意で解放されたが、噂が出回り、会社にも居づらくなった。

(どうにかして、あいつらに復讐を。特にあのデカパイ女)

 赤根の解雇によって奪われた出世の話はもう戻って来ないのだ。

(そうだ、手を出さなきゃ良いんだ)

 それなら捕まらない。


 数日後。

 朝の駅で桃華学園の生徒、橋爪ミツハの姿を見つけた。通勤ラッシュと呼ばれる時間帯の一本前の時間だがそれなりに混んでいる。制裁を加えるには問題ない。

(昨日は姿を消しやがったが、電車の時間を変えやがったな)

 連日の嫌がらせに疲弊しきているのだろう。ぐったりとしている。

(まあ、俺は指一本触れてねえけどな)

 ポケットに忍ばせたモノを確認、電車が来たタイミングでミツハに近づく。

 電車が発車し、少し揺れる区間に入ったところで、

「ひっ」

 ミツハが声をあげた。針のない注射器で彼女の首元から髪にかけて液体をかけたのだ。

 そして、乗客が訝し気な表情をする。

「え、なんか臭」

「ちょ、お酢みたいな」

「うわ、強烈」

 ミツハは慌てたように首元を触る。濡れていることに気づく頃には、乗客がじろじろとミツハを見ていた。

 ひそひそと。

「あの子?」

「なんか濡れてない?」

「ええ?」

 ミツハは顔を真っ赤にして、次の駅で降りて行った。

 髪についたものはすぐには臭いが落ちないだろう。

(酢は危ないものじゃねえしな)

 これを数日繰り返しているので、次第に酢臭女として有名になるだろう。SNSにも匿名でその旨の投稿しておいた。

(電車に乗れなくしてやるぜ?)


 その翌日。

(車両変えたって無駄なんだよ)

 彼女の乗車位置は一番後ろだった。昨日は真ん中の車両なので変えたのだった。

 いつも通り、電車に乗り込んだところでドア近くの彼女のそばへ。ちなみに服装から何から、毎日変えているので、気づかないだろう。このために帽子数種類にウイッグやピアスなども買ったのだ。

(今日もかけてやるよ! お酢という名の香水をなあ!)

 肩を叩かれた。

 どきりとして振り返る。

 そこには男子高校生が立っていた。限りなく無表情だ。

「何してんだ?」

「え…………」

「その手に持ってるもの、こっちに渡せ」

 冷や汗がだらだらと。容赦なく男子高校生、もとい奏介に掠め取られた。

「この臭い、調味料のお酢か?」

 周りの乗客達の視線が集まって来る。

「注射器に臭いの強い液体を入れて、何してたんだよ」

「っ!」

 丁度次の駅に到着した。

「くっ」

 ミツハに手を触れたわけではないし、現行犯でなければ逃げ切れる。車両の出口までダッシュだ。

 そう思ったのだが。

「うぐっ!?」

 服の襟を掴まれて、一瞬首が締まった。

「逃げんな」


 そして、


 ミツハが撮っていた証拠映像と、被害届によって川又は暴行傷害と痴漢容疑で正式に逮捕されたのだった。

明日(3日金曜日)も更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 尊敬する上司と同じ末路を辿れてよかったね(棒)
[良い点] こうして痴漢男の部下も 上司と同じように逮捕されましたか!(ニヤリ) 前回含め 逆恨みなんてしなければ 傷が浅く済んだものを! まさに愚か!(ニヤリ) [気になる点] ところで男子高校生と…
[良い点] 147/328 第3章 続・だらだら日常編(波乱あり) 痴漢被害に遭った女子を中傷するサラリーマンに反抗してみた2 の川又ですけど、あれだけのセクハラを連日しておいて、警察にも厳重注意され…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ