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私人逮捕系動画投稿者に反抗してみた3


 和谷は一歩後退した。

「は、はぁ? 僕は盗撮魔を捕まえようとしてただけだ。この人達はともかく、なんで僕が責められなきゃならないんだ」

 茶髪男と短髪の男がぴくりと眉を動かした。

「女の尻追いかけ回してた奴に盗撮魔とか言われたくねーっての」

 奏介は調子に乗り始めた男達をぎろりと睨む。

「うるさい、ド変態の痴漢野郎。言ってんだろ。スカートにカメラ突っ込んだ時点で犯罪だっつーの。それとも何か、そこの女性は奥さんか彼女なのか? だとしても特殊な遊びしてる時点で周りに迷惑だろうが」

 すると、和谷の後ろにいた女性が慌てる。

「ち、違います。し、知らない人です」

「ですよね。失礼しました。決まりだな、変態。お前らにこいつを責める権利はないんだよ」

「このガキ、偉そうに」

「駅員さん、こいつら痴漢なんで連れて行ってもらえます? そこの女性に話を聞いて、映像も提供しますので」

 やがて何人かの駅員がやってきて、男達は連行されていった。

「着いて来いよ」

 固まっていた和谷に声をかけると、はっとしたようだ。人集りがざわざわし始めたので、奏介は歩き出した。彼も思うところがあるのだろう。何も言わずに着いてくる。

「……そうやって動画のことばかり考えてるから痴漢野郎につけ込まれるんだよ」

「なっ! 動画のことばかりだと!? 僕は、被害にあっている人達を助けるために」

 人通りの少ない駅の通路、少し端によって立ち止まり、振り返る。

 近くで路上ライブをしているグループが何組かいるので、目立たないだろう。

「だったら、なんであの女の人の顔を撮ってたんだ。カメラ突っ込まれてるところを映した後、カメラを上に向けたよな?」

「……」


『この怯え顔も撮ってっと』


 そう心の中で呟いたのは確かだ。

 女性の絶望的な表情は動画的に必要だと思った。顔にモザイクはかけるものの、雰囲気的に嫌そうにしているのは分かるものなのだ。

「ほら、動画映えを考えて、再生回数を稼げるように、編集して動画サイトに上げようとしてんだろ?」

「さ、再生回数なんて二の次だ! 苦しんでる被害者を救い、犯罪の抑止力にするために見せしめにしてるんだよ。そのための動画なんだ」

「勝手な判断で素人が他人を犯罪者扱いしていいのか? お前、未成年だろ? 警察や検察がするような捜査をすっ飛ばして、自分と関係ない他人を一方的に犯罪者呼ばわりする権利があると思ってんのか?」

 奏介の問いに、和谷は眉を寄せる。

「何を言ってるんだ? ……偽善者か」

 和谷はそう言って、

「目の前で起こった犯罪の犯人を捕まえて警察に突き出して何が悪いんだよ? 僕らは警察じゃないから、悪いことをしてる人がいても、捕まえちゃダメーって? そんなの、犯罪にあってる人を見殺しにしてるだけだろ。イキりながら出てきて説教する君みたいな奴は、結局何も出来てない。見て見ぬふりフリしか出来ないくせに、偉そうにするな。被害者の痛みもわからないくせに! 警察に頼んでも対応してくれないなら、僕がやるしかないんだよ!」

 奏介は目を細めた。

「なら、動画サイトに上げるなよ」

「え?」

「人助けを、見世物にするんじゃねぇって、言ってんだよ」

かなり遅くなりました。待って下さっている方がいたなら、すみません。3日以内に続き上げますので!

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― 新着の感想 ―
現実でもそうだけど私人逮捕をエンタメ化する奴はいずれこうなる事は分かってたんよなぁ。私人逮捕の現場になんてそうそう遭遇するわけないんだから、最初は良くてもいずれ動画のネタが尽きる。そうなればワイタニみ…
[一言] 【妄想劇場】  和谷か奏介に説教されていた頃、彼の自宅に訴状が投函されていた。  和谷が上げた映像により自宅を特定された被害者女性たちが集団で告訴したのだ。
[一言] ぶっちゃけ偽善者の方が自分が気持ちよくなってるだけな分君よりマシ 和谷君の場合承認欲求満たすのと金銭を得るために自分じゃなくて他人のプライバシー切り売りしてる状態だからな? 身内亡くしたばか…
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