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仲良くしていたのに裏切っていじめっ子側についた元同級生に反抗してみた おまけ

※298部も更新してます。二話同時更新です。


※227部~の話が関わっています

「降りなさい」

 パトカーのドアが開いて、警察官に促される。どうやら警察署に着いたようだ。

「早くしなさい」

 動きを止めた堅野に、警官が感情の無い声で言う。内心で舌打ち、パトカーから降りて警察署内へと足を踏み入れる。

(未成年だし、大人しくしてりゃ普通に解放されんだろ)

 人を殺したわけではないのだ。謝罪の言葉を口にするなど反吐が出るが、態度で反省するふりは出来る。

 数人の警官と共に取調室へ移動中、先の曲がり角で大声と物音が聞こえて来た。

「いやだぁ! 僕じゃない! 堅野が、堅野が悪いんだ! 騙されたんだよぉ!」

 息が止まるかと思った。どう聞いても、阿佐美の声だったのだ。

 警官が気づいて、堅野の前に手を出す。

「止まって。場所を変えるから、入り口まで戻ります。二階の取り調べ室の空き状況を」

「はい、行ってきます」

 一人の若い警官が戻って行った。

「……!」

 顔を合わせを避けるための処置だろう。

「堅野が菅谷をいじめてたんだ! 僕もいじめられてて、脅されてたんだ! やらないと殴られるって!!」

「静かにしなさい。暴れると危ないですよ」

 阿佐美の絶叫の後に警官達の冷静な会話が聞こえてくる。

「ふざけんな!!!」

 堅野は警官の間をすり抜けた。

「おい、待て」

 全力で駆け抜けて、曲がり角を右へ。

「おい、裏切り野郎!」

 阿佐美は足をばたばたしていて、床に押し付けられていた。近くの部屋のドアが開きっぱなしになっているので、逃げだそうとしてすぐ押さえられたのだろう。

「なっ! かた、の……?」

 青ざめる阿佐美。

「てめえ、やっぱりかよ。全部オレに押し付けて罪軽くしようって魂胆か」

「だ……だってお前が全部の元凶だろ! 人を閉じ込めて放置しようとか頭おかしいって! 刑事さん、こいつなんですよ」

「はあ? この」

 反論しようとしたところで、肩を後ろに強く引かれた。

「止めなさい。おい」

 堅野は腕などを掴まれて、強制的に入り口まで引きずられた。それでもなお、阿佐美の叫びは響き渡っていて、絶えず堅野を批判し続けている。

 堅野は思いっ切り息を吸い込む。

「お前を友達だなんて思ったことねえんだよ!!」

 二人の少年容疑者の大暴れは警察署内で、しばらく語り継がれるほどだった。




 パトカーの音が聞こえなくなったところで、佐野と加納は足を止めた。細い路地である。

「はあ、はあ……。もう、なんなのよ。嘘でしょ」

「菅谷を警察に突き出せるとかいうから協力してたのに、自分が警察に追われてるってバカじゃないの!」

「ねえ、どーすんの?」

「どうすんのって、警察に顔見られてないんだし、別に大丈夫でしょ。何かしたわけじゃないし」

「……だよね。でもさ、あの菅谷をどうにかしないとあたしら本当にヤバくない?」

「うん、子供のころのことにむきになっちゃってマジで怖いんだけど」

「やっぱさ、上嶺君に頼むしかなくない? あの誤解されるような写真を流したのも菅谷なんでしょ?」

 佐野は眉を寄せる。

「でも上嶺君、あたしのことブロックしてるっぽいんだよね」

「え、なんでよ」

「知らないけど、あれから連絡取れないし。てかさ! スマホのデータ消されたんだけど! 犯罪でしょ、これ!」

「とにかく、後で連絡取ってみよ! 菅谷を野放しにするのは危ないって」

 彼女達は知らない。上嶺父にクレームを入れ、暴力写真を提供したのが加納と佐野だということになっていることに。もちろん、奏介の工作ではあるが、上嶺は佐野と加納を裏切り者だと認識している。

 それを未だ知らないのだ。



 菅谷家にて。

 奏介は見王刑事に加えて、彼の上司である谷口刑事とテーブルで向かい合っていた。母は席を外している。

「まあ、そういうことだから、危ないことはしないことだ」

「いじめていた相手に文句を言いたいのは分かるけど、こっちとしては止めてほしいんだよ。もしかすると、君も何かの罪に問われるかもしれないし」

「はい、反省してます。……でも、やっぱりいじめで殺されかけた恨みはどうしても抜けなくて」

「それはそれだ。別問題だ。君はもっと自分を大事にしなさい」

 谷口刑事にぴしゃりと言われてしまい、奏介は黙る。いじめられていたという事実を振りかざして無茶をしても見逃してもらっていたが、通じなくなってきたようだ。

「脱水症状気味で点滴したんだろう? その身体で抜け出すなんて。そりゃお母さんだって心配するよ」

「はい……」

「見王、次があったら取調室手配しろ」

「はい!」

(あ、それで済むのか)

 見王刑事はため息を吐いた。

「それにしてもいじめに関しては、加害者が罪に問われないことが多いですよね」

「学校ぐるみでもみ消して警察の介入を許さないことが多いからな。泣き寝入りしてる被害者は少なくないだろう」

 谷口も憂鬱そうだ。

「学校の中って、やっぱり警察が絡むのは難しいんですか?」

 奏介が問う。

「ああ、凄くな。警察なんか呼んだら噂になるし、大事になったら評価にも関わる。いじめがあった学校に通わせたい親はいないしな」

「学校はいじめっ子の味方、ですね」

 見王刑事と谷口刑事は顔を見合わせた。

「そうならないようにしてほしいと願うばかりだな」

 谷口刑事が呟いた。

※298部も更新してます。二話同時更新です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 脱水症状気味になるで自分を追い込みましたか! さすが奏介ですね!(ニヤリ) これでは他の連中たちも 捏造しようにもリアル度でボロ負けでしょうね!(ニヤリ) 裏切り者と同窓生共への おまけ…
[一言] >「学校はいじめっ子の味方、ですね」  ほんと、そう。仮に先生に言えてもその場で注意するだけで解決までしないから悪化するのもよくある話で……。
[良い点] 奏介君は『自爆突貫くん』扱いになっちゃいましたか…… でも大丈夫! 次は例え校内でも「お巡りさん、アイツらです!」って、最強セ○ム仲間が付いてますから♪ 「ボクの全力で潰してあげるよ(社…
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