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男性看護師を馬鹿にする老人達に反抗してみた2

「なんじゃと!?」

 奏介は肩をすくめた。 

「で、大津さんに対して医者になれない出来損ないの男とか言ってましたけど、それってどういう意味ですか?」

「何を言っとるんじゃ。そやつは、医者の資格を取れなかったんじゃぞ。そんな欠陥品に世話をされたくないだけじゃ」

「わたしも、医者のなり損ないに面倒を見られたくないですよ。本当に嫌ですわ」

「へぇ。じゃああなた達は、医師免許を取れなかった人が看護師になると思ってるってことですか?」

 二人は眉を寄せる。

「なんで黙るんですか? そう思ってるんでしょ?」

「……実際、そうじゃろ」

「んなわけないでしょ。医師免許も看護師免許も国家資格。医師免許試験を取れなかったからって看護師免許を試験なしで無料でもらえるなんてあるわけないでしょ。看護師さんを舐めてません? 国家資格ですよ、国家資格。意味分かります? 試験を受けて、国が認めた技術を持ってる人達です。そもそも、看護師を目指すのと医者を目指すのでは勉強する内容も試験内容も違う箇所があるでしょ。てか、試験受かった人に対して偉そうですけど、何か国家資格持ってるんですか?」

「そんなもの、持っておらんわ! なんじゃ屁理屈を並べおって!」

 怒鳴り散らす老害。

「屁理屈も何も本当のことを教えてるだけでしょ。知り合いの担当看護師さん……仕事中の大津さんに水ぶっかけといて、なんで怒ってるんですか? 頭にきてるのはこっちなんですが?」

 むっとする伊角。

「ちょっといきなり出てきて、関係ないのに文句を言ってくるなんて」

「うちの連れにも水ぶっかけたでしょ。初対面の人間にそういうことして許されると思ってるんですか?」

 伊角の反論にすかさず反撃。

「大津さんに対しての暴行、暴言、業務を妨げるなどは犯罪行為です」

「犯罪行為? はんっ、そやつの行いが悪いのだろう。何かと絡んできおって!」

「言っておきますけど、大津さんがあなた達を気にしてるのはお仕事だからです。分かります? 関わりたくないけど、お給料のためにやってるんですよ。それを絡まれたくないだのなんだの。そう思ってるのは大津さんの方ですよ。ですよね? 遠慮しなくて良いですよ、大津さんが心の底からどう思ってるかで答えてください。水かけられたんだから、一言言い返しても大丈夫です。俺が保証します」

「つーか、俺もかけるれてるしな!!」

 とばっちりを喰らった高平は半ギレである。

 大津看護師は、ハッとした様子で、

「そう、ですね。堀後さんや他の患者様には看護師として尽くしたいと思っていますが、こうした仕事に影響が出るような嫌がらせをされてしまうと考えてしまいます」

 大津看護師がすっと顔を近づけた。

「彼が言った通り、あんたみたいな迷惑人間に関わるのはおれも仕事なんだよ。わかんだろ? じーさん」

「ひっ!?」

 低く唸るような声と冷ややかな視線に、ビクッと肩を揺らす天部と伊角。

 舐めていた相手にこれをやられたら、背筋が凍るだろう。奏介は、スマホの画面をタップ。音声が流れ始める。



『で、大津さんに対して医者になれない出来損ないの男とか言ってましたけど、それってどういう意味ですか?』


『何を言っとるんじゃ。そやつは、医者の資格を取れなかったんじゃぞ。そんな欠陥品に世話をされたくないだけじゃ』


『わたしも、医者のなり損ないに面倒を見られたくないですよ。本当に嫌ですわ』


『へぇ。じゃああなた達は、医師免許を取れなかった人が看護師になると思ってるってことですか?』



 流れた音声に、天部達が驚いてこちらを見る。

「看護師さんをバカにしてる発言、録音してるのでよろしくお願いします」

 程なくして、看護師長が駆けつけ、びしょ濡れの大津とついでに高平の姿を見て、激怒。

 医院長に伝わり、奏介の録音音声の酷さと天部達の素行は家族へ通報され、強制退院の後、来院拒否をされたらしい。

 天部達は最後まで大津に暴言を吐かれたと訴えていたが、その証拠はどこにもない。


 

 後日。

 堀後さん経由で大津に食事に誘われた。高平と2人で、指定されたカフェで待っていると。

「ごめんね、待ったかな?」

 慌てた様子で入ってきたのは大津である。シンプルなパーカーとジーンズ姿。非常に爽やかな装いだ。

「お疲れ様です。仕事だったんですよね」

「うっす。久しぶりっす」

 大津はにっこりと笑って向かいの席に座った。

「まだ注文してなかった? 好きなの頼んでくれていいよ」

 奏介と高平は顔を見合わせた。遠慮するしないのやり取りの後、結局お言葉に甘えることに。

「いや、先日は本当にありがとう。実はもう限界で、辞めようと思ってたんだ。というか、あの水をかけられた瞬間、明日からはもう出勤出来ないって思ったよ」

 奏介はゆっくりと頷いた。

「知ってます。あの瞬間、そういう顔してましたよ」

 溜め込んだものが一気に噴き出して、全てがどうでも良くなる瞬間だった。大津は目を瞬かせる。

「参ったな。だから、あの時来てくれたのかな?」

「いや、ほんと素早かったよな、お前」

 あの瞬間の精神状態なら、そのまま自殺してもおかしくなかったと思うのだ。それくらい、酷い表情をしていた。

「そういや、大津さん元ヤンか何かっすか? 最後のあれ、迫力あったんで」

「あはは。あれは、好きな不良漫画の真似したんだ。なんかこう、スッキリしたね」

 恥ずかしそうに頭をかく。

「良かったと思いますよ」

 誰かに助けられただけだと復讐心が芽生える可能性がある。言葉で脅しておくのは重要だ。

「まぁ、とにかく、続けるよ。僕は……看護師になりたくて試験を頑張ったんだから」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 読者の皆様も書かれてますが、『患者・患者の家族に問題ありでの強制退院&診療許否』、同系列はもちろん、地元の医療関係の繋りで、隣街どころか隣の県まで通達されます…
[良い点] 悪質な老害が可及的速やかに排除されて何より。しかし奏介さんや、貴方、人の顔色見て精神状態まで即座に察知するスキルまで…一体どこまで強くなるつもりだ? [気になる点] 地元の話ですが、この手…
[一言] クソ老害どもが病院を追われてすっきりですね。こいつらみたいなのは身内からも嫌がられてるから病院とか特養に入れられるのにそれですら追われるってことなので姥捨山に置いていかれるのがお似合いです。…
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