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見た目いじめられっ子の俺は喧嘩売られたので反抗してみた  作者: たかしろひと
第3章 続・だらだら日常編(波乱あり)
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自殺をしようとした青年に説教してみた2

 中年サラリーマン、大類はやや動揺した。

「何故、そういう話になるんだ。彼は自ら命を絶とうとしたんだぞ。それを止めた。何か間違っているかね?」

「それは間違っていないと思いますし、あなたが正しいです。正直、こんなところで身投げされたら大変ですしね」

 飛び降り自殺をして、巻き添えを食らい、亡くなった被害者がいたという話も聞く。それに関しては自殺者の行動が腹立たしく思う。

「だったら」

「そうじゃなくて、彼は理由を語ったじゃないですか。それに対して『それくらいのこと』って言いませんでした?」

「ん?」

 大類は眉を寄せる。

「真剣に悩んでいることに対して、『それくらいのこと』で済ませるんですか?」

「む……」

「個人的な話になってしまって申し訳ないですが、俺も自殺を考えたことがあります。真剣に悩んで、死んでしまいたいと思っていることを『それくらいのこと』と言われたら、彼はどう思いますか? 追い詰められている人をさらに追い詰めて良いことはないです」

 大類は黙った。

「自殺に対して説教するのはもちろん良いと思います。大勢に迷惑をかける行為です。ただ、この人が抱える悩みだけは蔑ろにしないで下さい」

 奏介は息を吐いた。

「だから、彼の借金を肩代わりして、彼の悩みを解消してくださいと言ったんです。本当にやれとは言ってません。でも人の悩みをバカにするのは止めて下さい。本当に真剣に悩んでるんですよ」

 奏介は拳を握り締めた。

「バ、バカにはしていない」

 奏介は少しの間黙って、

「それ以外は、あなたがすべて正しいですよ。考え方も間違っていないです。……失礼しました」

 奏介は頭を下げ、そのままホームを歩いて行ってしまった。



 大類は去って行った彼を見、息を吐いた。少し頭が冷えた。

「立てるか?」

 手を差しのべる。

「あ……」

 青年は恐る恐る手を握った。

「悪かった。悩みに関しては」

「……はい」

「しかしな、自殺はいかんぞっ」

「は、はいっ」

「命は尊いものなんだ。それを簡単に投げ出す奴があるか。相談になら乗ろう。だから、もうこういうことはするんじゃない」

 青年はうつむいた。

「でも」

「借金に関しては、君が背負わなくても良くなるかも知れないぞ」

「え!? そんなこと」

「子供だな。法律を知らんのか」

「う……」

「今日の夜は暇か? うまいラーメン屋がある」

 そして、大類は指を指した。

「良いか、それまでにまた飛び込もうとでもしたら許さんぞ」

「は、はいっ」

 青年は背筋を伸ばした。

「よし」

 大類は大きく頷いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 実際問題亡くなったのが一ヶ月前なら相続拒否すれば親の借金は消えますね。 保護者全滅なら公的な支援もあるし、死ぬほどじゃない そう言うのは市役所なり法テラスなりで相談すれば分かることだけど冷静…
[一言] その後青年と一緒にラーメン屋に行き青年の悩みを聞いてる大類の姿があったとか。数年後あの青年は大類の事を大切な恩人です。と語っていたとか。なんて未来を予想してしまいました。
[一言] 渋い弁護士おじさん?また登場の機会を!
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