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見た目いじめられっ子の俺は喧嘩売られたので反抗してみた  作者: たかしろひと
第3章 続・だらだら日常編(波乱あり)
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過去のいじめを覚えていない同級生に反抗してみた

 丸美(まるみ)カナエは待ち合わせの駅前で辺りを見回していた。

「ん~……。あっ」

 近づいてくるのは四人。小学生の頃の同級生である、檜森リリス、味澤、宇津見、長池だ。桜柳高校(おうやなぎこうこう)に進学した四人組。手を振って近づいてくる。

「久しぶりですね」

 相変わらず檜森はモデル並みの容姿である。他三人も変わらない。少し遅れて喜嶋安登矢も加わり、懐かしいメンツが揃った。

「えーと、後は?」

 喜嶋がスマホの画面を見る。

「今日これだけじゃね? 今回都合合わない奴多すぎ」

「放課後だし、なんか期末テストが今頃のとこもあるんでしょ? うち終わったけど」

 宇津見が肩をすくめて言う。

「六人いれば良い方じゃないですか?」

 リリスが皆を見回して言った。

「まぁ、そうかもね。しゃーないかぁ」

 カナエはため息を一つ。仲の良いメンツで騒ぐのは好きだ。特に小学生の同級生とは時間を忘れるくらい楽しい。

「てか、丸美はほぼ皆勤賞だな」

「高校上がってから結構プチ同窓会やってるけど、必ずいるよな」

 そう言ったのは苦笑を浮かべた味澤と長池である。

「だってうちお嬢様学校で、友達は三味線にお琴に茶道に華道で忙しいんだよね。習い事してないって言ったらちょっと引かれたしさ」

「お嬢様、か。なぁ、丸美。二、三人おれに紹介を」

 喜嶋が真面目な顔で言うので、檜森はあきれ顔だ。

「あんな目にあったのによく同じことをやろうと思いますよね……」

「いや、今度からは一人を一途に思うことにしたからさ! 運命の女の子を見つけるんだ」

「喜嶋、ほんっとに変わんないね。女好き、そしてバカ丸出し」

「丸美、うるせーって」

 と、味澤が駅前の時計を見上げた。

「で、どうする? とりあえずカラオケか?」

「賛成~。お前らは?」

 長池が他三人に問う。

「構いませんよ」

「おれもオッケー。丸美は?」

「ま、放課後ならそんくらいしかないよね。良いよ」

 ふと、そこで視界に入った人物が。

「うぇ!?」

 声を上げた丸美に五人が一斉にそちらを見る。

「ぶはっ、ね、ね、あいつ覚えてる? すっご、全然変わってない」

 少し先、こちらへ歩いてくるのは菅谷奏介だった。小学生の頃の同級生である。

「えっと、名前なんだっけ? ほら、うーんと」

 丸美は考え始めるが、リリスが咳払いをした。

「えーと、それでカラオケでしたっけ」

「良いんじゃね?」

「予約取るなら、あたしやるわよ。会員だから」

 他の五人は何事もなかったようにカラオケの話に戻った。

「え、ちょっとちょっと、名前思い出せないんだけど? 石田が目茶苦茶からかってたやつだよね?」

 奏介はこちらに気づいたようだが、すぐに興味をなくしたらしく、視線を外して六人の横をすり抜け、ようとしたが丸美が遮った。

「久しぶりぃ」

 知り合いがいたら声をかけずにはいられない性格なのだ。奏介は足を止める。

「……丸美さん?」

「あ、覚えてた? 名前なんだっけ?」

 奏介は怪訝そうな顔をする。

「……菅谷奏介」

「あっ、そうそう。菅谷君だ。全然変わってないねぇ。てか、あたしのこと覚えてると思わなかったよ」

「まぁ、色々あったし」

 憂鬱そうな顔をするので少し思い出してみる。

「なんかあったっけ?」

「なんかって」

「あっ、そういえばお尻蹴りゲームとかやったよねー。凄い盛り上がったし、楽しかった~」

「俺は痛かったけど」

 奏介がムッとしたのがわかった。

「だってあれは罰ゲームみたいなもんだし、そんな強く蹴ってないし」

「痛かったって言ってるだろ。後、ノロマとかマヌケとか言ってきたよね」

 あからさまに不機嫌になっていた。その様子がなんだか妙におかしかった。気弱なオタクが精一杯の抵抗をしようとしている感。

「あ、あの、カナエ? それくらいにしませんか」

「丸美、カラオケ行くんだからさー」

 檜森と喜嶋が少し慌てた様子で止めに入ろうとするが、

「ぷっ……あははっ。何何? まだ怒ってんの? だって何年前よ。小学生の時だよ? それをまだ根に持ってるとか女々しい~。執念深い~。しかもその時のセリフまで覚えてんの? ぷっはっ」

 奏介が無表情になったところで、喜嶋をはじめとした五人がそっと視線を外す。

「ほぼ四年前だな。何、丸美さんは四年前のことすら覚えてないの? え、記憶力ないんじゃない? 頭でも打った?」

「はは……は?」

 目を瞬かせて彼を見る。奏介はにやにやと笑っていた。

「ていうか、尻蹴りあげるとか暴行傷害罪だから。あの後痣出来てたし。犯罪やっといて覚えてないって頭おかしいんじゃない?」

「ぼ、暴行傷害って、いや、単なる遊びだったんだよ?」

「なら、試しにその辺の通行人の尻を蹴ってみなよ。遊びでやった、覚えてないって言ったら許してくれんの?」

 心臓がドキドキしてきた。口調はあまり変わらないが、責められている。

「今ここでやってみなよ。見ててやるから」

「えと、いや、そんなことしたら、さ」

 奏介は目を細める。

「何? どうなる? 謝れば許してくれる?」

「……いやぁ、もうあたし達、大人みたいなもんだし、それやったら普通に犯罪だし」

 奏介はクスッと笑った。

「出来ないんだ。腰抜けのヘタレ女」

「!! ちょっ、あんたバカにしてる!?」

「分かってんなら、友達みたいに絡んでくんの止めてくれる? ウザ過ぎ。大体、小学生の時だって尻蹴ったら暴行だっつーの。記憶力皆無で脳みそ軽いんだから俺に構う暇あったら脳トレゲームでもしてろ。なんなら病院行け」

 奏介は鼻を鳴らして、丸美の横を通り抜けた。表情をひきつらせたまま、固まる丸美。

「菅谷どこ行くの?」

「……バイト」

 喜嶋の質問に少し嫌そうに答える奏介である。

「菅谷さん、バイトしてるんですか」

「まぁ」

「もしかして、スーパー? この前見かけたような」

 宇津見が言う。

「ああ、この近くの」

「おれもバイトすっかなぁ……」

 味澤がぼやく。

「遊んでると金の減りはえーしな」

 長池も同調する。

「それじゃ」

 奏介はそう言って去って行った。

「え、なっ!? あいつ何!?」

「次、絡みに行くと大変なことになりますよ」

 檜森がため息混じりに一言。

「ありゃ、がっつり怒らせたよなー」

 と言ったのは苦笑気味の喜嶋。

「は? え? 何?」

「関わるなってことだ」

「そうそう」

 味澤と長池。

「さっさと行くわよ。ネット予約取れたし」

 五人とは普通に雑談をしているように見えた。彼らと菅谷奏介の間で何があったのかは知らないが、煽りに何も言い返せなかったのは事実だ。そしてあの冷たい目。改めて思い出すと背筋が震えた。

「なん、なの」

 尻を蹴るとピーピー泣いてた菅谷奏介の記憶が少しだけ霞んだ気がした。

珍しく一話完結です。

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― 新着の感想 ―
[一言] とりあえず、俺の中のメインヒロインの出番なんだなってことと、リリスがめちゃくちゃ丸くなってるってことは理解した
[一言] >相手誰をイメージしてます?笑 お嬢様学校となると、《あの人》に家の繋がりがありそうだよね。 奏介のことだから、今回の会話も録音してるはず。 「御存知?彼女、お尻に蹴りを入れなさるのが小学…
[一言] これ一話で完結しないパターンでは……(笑)。 あと何処かで聞いた話なんですけど過去のクラスや学校の時の関係でしかイキれない人間は精神的に幼稚な奴が多いと聞きましたが丸美の存在がそのまま表して…
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