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見た目いじめられっ子の俺は喧嘩売られたので反抗してみた  作者: たかしろひと
第3章 続・だらだら日常編(波乱あり)
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オムライスなクレーマーafter

 磯木(いそぎ)須磨(すま)は並んでラーメンをすすっていた。

 美味しいと評判の店であり、平日の四時半過ぎという微妙な時間も客入りはそこそこある。

「……どうすんの?」

 と言ったのは須磨。

「……金、少ねえし」

 答えたのは磯木である。

 付き合って半年ほど。お互い社会人だが、給料日前になると決まって金欠になり、こうした評判の美味しい店で騒ぎ立てる。


『まずい! 金を返せっ!』


 店側は慌てふためいて、無料になる確率も高くなる。店内から連れ出されて、割引や半額で交渉されることも。

「じゃあ、やってよ」

「なんで他人事だよ。お前も合わせろよ」

 お互い無言になる。

 とある給料日前のある日、オムライスが美味しいと評判の店で騒ぎ立てたところ、高校生らしきカップルにこれでもかとやり込められたのだ。結果的に無料になったので、磯木達の勝ちではあるのだが、店長や客に蔑んだ視線を向けられ、そのカップル達にはボロクソに非難されたのだ。

「あれからビビりやがって」

「あんたもでしょ」

 ラーメンは半分程食べた。頃合いだろう。磯木は深呼吸をして、拳でテーブルを叩いた。乱暴な音が周りに響く。

「なぁ、店員さんよぉ」

 店内がざわつく。低い声で言ってやると、中年の男性店員が顔を引きつらせた。その後ろにいる初老の女性店員も同じ反応だ。恐らく、家族経営なので二人は親子だろう。

「このラーメンがなぁ」

 そう言いかけたところで、凄まじい視線に気づいた。はっとして隣を見る。

 無表情の奏介が頬杖をついてこちらを見ていた。その威圧感は恐怖すら覚える。

「……」

「……」

 磯木の冷や汗が止まらない。須磨は震えながらラーメンどんぶりを見つめている。

 奏介はどこまでも無言だ。

「あ、あの、お客様?」

 男性店員が恐る恐ると言った様子で声をかけてくる。

「う、うるせぇ! 目茶苦茶うめえって言いたかったんだよっ、文句あっか!?」

「え、あ……それは、ありがとうございます」

 磯木と須磨は急いでラーメンを平らげると、きっちり代金を支払って店を飛び出した。

「何あれっ! 何あれぇ!」

「もう考えるなっ、やめだやめだっ、これからは節約だっ」

 喧嘩になったら百パーセント磯木が勝つだろう。それでも、あの高校生は只者ではないと思った。




 クレーマーカップルが店を出ていくと同時に、頑固だと評判の店主が戻ってきた。妻や息子と会話を交わしている。

「おお、こういうことか。僧院、よく見つけたな」

 奏介の隣でラーメンをすする真崎が感心したように言う。

「でしょ? やらかそうとしてる顔で中入ってくんだもん」

 そう言ったのは真崎の隣のヒナ。そして彼女の隣の詩音が、

「あのオムライス屋でそんなことがあったんだー。ていうか、ここのラーメン美味しい」

 そう言った。

 奏介、詩音、真崎で帰宅中にヒナから連絡が入ったのだ。

「あいつら、まったく反省してないな」

 奏介が不満そうに言う。

「ありゃ、流れ的にやろうとしてたよなー」

 真崎、苦笑い。

「うーん、奏ちゃんの一睨みで態度変わってたね。……どんな制裁したの?」

 詩音がヒナに問う。

「他のお客さんと店員さん味方につけて、食い逃げ野郎って煽りまくった」

「奏ちゃんの常套手段だね!」

「なんか犯罪の手口みたいだな」

「いや、しお。言い方良くないぞ」

「でも助かったよ。ありがとね、菅谷くん。ボクだと手加減できなさそうだからさ。二人もわざわざ帰るところだったのにありがと。もちろん、ここは奢るからさ!」

「僧院……手加減する気がないだけだろ」

「えへへ~」

 古風な誤魔化し方である。


 奏介は店の出口へ視線を向ける。

 今度こそ、反省してくれれば良いのだが。

 なんとなく、そう思った。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >それにしても馬鹿は死んでも治らないと言いますが シャーマンキングの作者が「バカは死んでも治らない、死ぬまでに死ぬほど痛い目を見ないとバカは治らない」 って言ってたのが印象深いんで …
[良い点] > 無表情の奏介が頬杖をついてこちらを見ていた。その威圧感は恐怖すら覚える。 恐怖(トラウマ)で見た幻覚かと思ったら本当にいやがったでゴザル [気になる点] コイツら、本当に反省できるの…
[一言] そんなこと繰り返してたら、 気付いてみたら外食に行ける店が無くなってましたとか普通にあり得るのになぁ…… 目先の得に飛びついて将来の自分の首絞めてると気付けるのかな?
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