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見た目いじめられっ子の俺は喧嘩売られたので反抗してみた  作者: たかしろひと
第3章 続・だらだら日常編(波乱あり)
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告白詐欺after

 放課後。

 その日は真崎に誘われて、ラーメン屋に行くことになった。新しい店を見つけたらしい。

「それで、店主が目茶苦茶頑固オヤジでな。今時、珍しいんだ」

「そういう店って、美味しいイメージだね」

「ああ、評判良いぞ。騒いだりすると怒られるけど」

 真崎に連れていかれたのは、細い路地にある、見た目小さなラーメン屋だった。とは言っても、カウンター席のみで二十席以上ある。店舗の奥行きがあるのだろう。

「いらっしゃい」

 無愛想な白髪の店主が迎えてくれた。隣で鍋をかき回しているのは、奥さんだろうか。

 真崎がおすすめだというチャーシュー麺を頼んで、カウンター席に並んで座る。その瞬間、二つ空けて隣の席に座っていた女子がびくりと肩を揺らした。

「……?」

 見ると、檜森リリスが目を見開いてこちらを見ていた。一緒にいた味澤、宇津見、長池の姿もある。

 奏介はため息をついた。

「あ、あの、お疲れ様ですっ」

「お、お疲れですっ」

「うっす、菅谷、さん」

「ど、どもっす」

 怯えた様子で挨拶をされた。お疲れってなんだよと思ったものの、無視したからと言って何か言うつもりはなかったのかだが。

「……お疲れ」

 そう呟いて奏介はため息を吐いた。

「ん、なんだ、知り合い?」

「うん、小学校の同級生」

「小学校って……」

 真崎は四人の様子を見る。

「調教済みか」

「いや、誤解を生むような言い方しないでよ」

 と、店主の奥さんが声をかけてきた。

「君ら、ごめんね。ちょっと店長、席外したから、少し出るの遅くなるね」

「あー、別に大丈夫っすよ」

 真崎が笑って声をかける。

 ちらりと横を見ると、四人とも青い顔でラーメンをすすっている。

「……」

 ここまで怯えられるとかわいそうになってくる。せめて真崎と席を替わった方がいいだろうか。

 なんとなくそんなことを考えていると、

「でなー?」

「へぇ、そうかぁ」

 チャラそうな男二人組がしゃべりながら入ってきた。制服はリリス達の高校と同じだ。

「おっとー? こりゃラッキー。恋愛詐欺集団じゃん」

 バカにしたように言う。

「ど、ども。先輩」

 長池が顔を引きつらせて頭を下げる。

「ここ、お前らの奢りな」

「え?」

 リリスが目を見開く。

「月に何人も付き合ってたんだから金持ってんだろ?」

 すると、味澤がおずおずと、

「あの、最近は先輩達に毎日購買でパン買って行ってますし、むしろ金欠で」

「それとは別だろ。恋愛詐欺とかいう最低なことしといて、言い訳か?」

「だよなぁ!」

 下品な笑い声を上げる。

「針ケ谷」

「どした?」

「いるよね。悪いことした奴らになら何やっても良いって思い込んでる大バカ」

「あー、よくいるな」

 途端にぎろりと彼らに睨まれる。

「あ? んだ、てめぇ。嘗めた口聞いてんじゃねぇぞっ」

 かなりの短気らしく、いきなり胸ぐらを掴まれた。

 奏介はため息をついた。大声を出さないよう、彼に聞こえるように口を開く。

「関係ない癖に何偉そうに味澤達ディスってんだ? やってること、恐喝だろ。こいつらが恋愛詐欺したからってなんでお前らにラーメン奢らなきゃならないんだ? 意味分からないんだよ」

 奏介の言葉に味澤達が驚いたように目を見開いた。

「ぶっ殺すぞ、てめぇっ」

 その大声に他の客達がざわついたところで、

「おおい、坊主、何してんだ?」

 見ると、青筋をたてた店主が腕組みをして立っていた。

 奏介が慌てるふりをする。

「た、助けて下さい、いきなりこの人が絡んできて」

 店主が味澤達の先輩を睨み付ける。

「その制服、近くの高校か。うちの店でよくもいざこざ起こしてくれたなぁ?」

 先輩が顔をひきつらせる。

「い、いや、こいつが」

「名を名乗れ。学校に連絡してやる」

 彼らは怯えた様子で、

「か、帰るぞっ」

 逃げるように店を出て行った。

「まったく。マナーも守れんのかっ」

「まぁまぁ、お客さん待ってるから早くしてちょうだいよ」

 店主と奥さんの会話を聞きつつ、

「あいつら、顔見たことあるな。うーん。後でしめといてやろうか?」

「この店に何かしてきたらで良いんじゃない?」

 その後、評判通り美味しいラーメンを頂き、店を出たのだが。

 何故か先に食べていたはずの彼らと同時だった。

「毎度ありー」

 外へ出ると味澤が頭を下げてきた。

「さっきは、ありがとう。最近、あの先輩達に奢らされまくっててさ。でもおれらに拒否する権利なくて」

 それから口々にお礼を言われる。あの件以来、自分達のやらかしで苦労しているようだ。

「人をバカにしてると、いつか返ってくるんだよ。身を以て知れただろ?」

「そう、ですよね」

 リリスが呟く。

「あ、あのっ、菅谷君。私小学生の頃、あなたに酷いこと言ったことがあるの。……ごめんなさい」

 宇津見が言う。

「おれも、石田に騙されたとは言え、悪かった。本当に」

 と、長池。

 奏介は目を瞬かせた。

「なんでこの前土下座して謝ったのにまた謝るの? 回数重ねたからって許さないって言ってんだろ」

 全員涙目である。

「まぁ、反省するのは良いんじゃないか。あの便乗恐喝野郎の言うことは聞かなくていいけど」

「はは。じゃあ、恐喝に困ったら俺がしめてやるよ」

 真崎が言う。

「え、ああ、うん?」

 ポカンとしている四人を残し、真崎と帰宅することにした。



 奏介は珍しく腹立たしげだ。

「まったく、何がラーメン奢れだ。俺が制裁したのに」

「なんだ? その怒りポイント」

「あいつら叩きのめすのに結構手間をかけたんだよ。ようやく反省させたのに、横からかっさらうような真似をしたでしょ」

「あー分かるようなわからないような。……感情が複雑だな」

 真崎は苦笑を浮かべた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 謝罪を聞く事とそれを受け入れて許す事とそいつらの悪評を他者が利用するのを許容する事って全部別だもんなー
[一言] 笑顔でしめてやるよ。っていう真崎は強者感ですぎ。
[一言] 自分で仕留めた奴を第三者に好き勝手されてたらそりゃ腹立ちますよね。 そういえば檜森達は土岐が逮捕されたことって知ってるんですか?
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