表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見た目いじめられっ子の俺は喧嘩売られたので反抗してみた  作者: たかしろひと
第3章 続・だらだら日常編(波乱あり)
123/392

学校で賭け事をしている女子に反抗してみた3

 数時間前。

 奏介は『カフェルル』が入っているビルの前に立っていた。

「ここか」

 ビルの中へ入り、地下へ行く前にスマホに『110』を入力する。

それからエレベーター横の一階のトイレへと入った。

『はい、110番です』

「あ、あの助けて下さい」

 受話口に小声でそう言う。

 事務的な口調だったオペレーターの女性に緊張が走る。

『どうしました?』

「今、喫茶店みたいなお店に入ったんですけど、周りのお客さんが麻雀とかトランプみたいな札でゲームしてて、お金を賭けてるみたいなんです。今トイレなんですけど、これって……犯罪ですよね……?」

『確かですか?』

「はい。俺もやらないかって誘われて、怖くなってトイレに入ったんです。どうしたら良いですか? 帰してもらえない雰囲気で怖くて」

 声を震わせ、今にも泣きそうな声を出す。

『落ち着いて下さい。まず、あなたの住んでいる地域を教えて下さい』

 答えると、

『その店の名前と住所分かりますか?』

 自分の住んでいる町の名前と詳しい場所を伝える。

「桃中駅の近くのビルに入ってる『カフェルル』ってところです」

『あなたの名前は?』

「菅谷奏介です」

『何歳ですか?』

「十五歳で桃華学園、高校一年生です」

 自分の個人情報は全て開示する。

『わかりました。まずはそこから無事に出ることを考えて下さい。出られたら、近くの交番へ行って下さい』

 その後、何点か確認をされ、一先ず通話を切った。

 と、真崎からの着信が。

「もしもし」

『よう、警察には電話したのか』

「ああ、今したよ。針ケ谷、悪いけど」

『悪くねぇよ。近くの警察署に駆け込んで、『友達が賭場に引き込まれて軟禁されてる』って言えば良いんだろ? 任せとけ』

 奏介は頷いて、階段を降り始めた。表向きの『カフェルル』は会員制の店であり、高級なお茶やお菓子が楽しめる大人のカフェだそうだ。

 奏介はユウキからもらったチケットを見る。

「今はまだ、警察には売らないでおいてやるよ」

 奏介は薄く笑って『カフェルル』のドアのインターフォンを鳴らした。

 




 その翌日。

 ユウキはいつも通り学校へ登校していた。机に座っていると、自然と体が震える。

(どうしよう。どうしよう)

 『カフェルル』へは今年の四月から週一ペースで通っていた。学校での賭け事をまとめた会員制ブログを通じ、つまりインターネットで知り合った人からの紹介で会員になることが出来たのだ。

 同級生、先輩、後輩の中から気弱そうな相手を狙って、何人も店に引き込んできた。現在はゴールド会員の一つ下、シルバー会員の会員証を持っている。

(顧客名簿とか調べられたら……)

 自分が出入りしていたことが公になったら、今までの生活が崩壊するだろう。

 帰宅して警察が待ち構えていたらどうしよう? もし学校へ乗り込んできたら? 

 ユウキは嫌な想像を振り払ってスマホを取り出した。

『カフェルル』からのメッセージや連絡先はすべて消去済みだ。手が震える。

(大丈夫。惚ければ良いんだもん。知らなかった、普通の喫茶店だと思ってたって)

 と、スマホがメッセージを受信した。

「ひっ!」

 バイブで震えたので、背中がヒヤリとした。

 恐る恐る見ると、発信者は菅谷奏介だった。

 話がある、とのことだ。

(こんな時に構ってる暇は……あ

昨日のニュース見たってことね)

 それで怖くなって連絡して来たのだろう。

(てか、話なんかしなくたって同罪で仲良く逮捕だって)

 と、返信をする前に電話がかかってきた。

 慌てて教室を出て、人がいない方へ走りながら通話に応じる。

「もしもし」

『ニュース見ましたか?』

 少し高い、静かな男性の声だった。それはネットで知り合って『カフェルル』に招待してくれた人だった。

「み、見ました。あの、『カフェルル』はどうなるんですか?」

『あそこは切ります。一応聞きますが、警察を呼んだのは津倉さんではないですね?』

 静かな怒りが伝わってきた。背筋が震える。

「ち、違います。絶対に」

『……昨日、津倉さんが新しい客を連れてきたとのことですが、その客も違いますね?』

「はい。そのお客さんは絶対にないと思いますっ」

 脅すための写真も撮ったのだ。菅谷奏介のはずがない。

『分かりました。また連絡します。目立たないよう、いつも通り過ごしていて下さい』

「は、はい。……あの、わたし達大丈夫ですよね?」

『君の客引きは優秀でしたからね。こちらでなんとかします』

「ありがとうございますっ」

 これほど安心出来る言葉もない。もう一度お礼を言って、通話を切った。

「あの人が言うなら大丈夫。うん。……よかった」

「……津倉さん?」

 突然声をかけられ、振り返る。

「あ」

 菅谷奏介だった。

「き、昨日のニュースのことで」

「ああ、昨日のこと」

 奏介は青い顔をしていた。

「やっぱり『カフェルル』って賭場っていう場所だったの!? 賭け事って、一円でもかけたら犯罪だって見たんだ。俺達もしかして逮捕されるんじゃ」

「昨日、賭け事をしたのは菅谷君でしょ?」

「え」

「わたしは隣で見てただけだもの。知らないよ」

「そ、そんなっ、『カフェルル』に出入りしてたなら、津倉さんもやったことがあるんじゃ」

 ユウキは目の前をふさいだ奏介の胸元を突き飛ばした。

「あうっ」

 廊下の壁にぶつかる。

「それじゃ」

 その背を見送りながら、奏介はスマホの録音機能を停止した。眉を寄せる。

「自白なしか。やるな」





 妹の様子がおかしい。

 橋人は今朝のユウキの様子が気になっていた。何かに怯えているかのようで、朝食もあまり手をつけていなかった。

 引っ掛かっているのは昨日のニュースだ。近くで賭場が摘発されたとのニュースである。あの報道を見た瞬間、ユウキは真っ青になり、逃げるように自分の部屋へ戻って行った。どうやら昨夜も眠れていなかったようなのだ。

 放課後になり、ユウキを迎えに行くことにした。

 教室から出ていったとのことで、探していると、菅谷奏介と話す妹の姿が。

「なんで菅谷と」

 奏介が何か言うと、ユウキは何やら機嫌が悪くなったようで、教室とは反対方向へ去って行ってしまった。

 すると奏介が何やらスマホを取り出す。


「自白なしか。やるな」


 カッとなった。

 まさか妹を罠にはめようとしているのだろうか。

 土岐の時のように。

(俺への当てつけというわけか。ユウキは何もしていないだろうっ)

 スマホをしまった奏介に歩み寄る。

「菅谷、君は話を聞いていなかったのか?」

「ん?」

 奏介がこちらを見る。

「話? なんの」

「止めろと言ったはずだ。復讐をすること、それに、人を罠にはめるような真似をだ」

 奏介はにやりと笑う。

「人を罠にはめるのを止めろ? へえ。なんかお前の発言はいちいち癪に触るな。問答無用で妹を警察に売っても良いんだぞ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 津倉は火元に灯油ばら蒔くのがお得意なようで。次回奏介に何言われるかが楽しみでございます。 妹の方はこの様子だと自爆するのも時間の問題ですね。
[一言] 最高だわwww この頭お花畑の兄が絶望する様が楽しみすぎるwww この作品見てるとほんと次回への渇望が…。 てか罠にはめる?先にしてきたのはそちらの妹さんなのでやり返されても文句言えないよ…
[気になる点] >ただ、街中の監視カメラの可能性がちょっと怖いかなと 《そういう》店は、監視カメラのあるところに店舗をかまえませんよ。 出入りしてるところが証拠になっちゃうじゃないですか! 汚職…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ