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超記憶レオの魔導書蒐(あつ)め  作者: かず@神戸トア
レオは人付き合いが苦手

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クレモデナ王国とルングーザ公国

乱立する小国の1つクレモデナ王国の王城の離れにおいて、マルテッラ公女に見張り役の侍女も何人かつけられながら、自身も継続して側仕えすることになったレオ。公女がきれいなドレスに着替えたように、レオも子供の使用人程度にはきれいな服に着替えさせられた。その際に革鎧も取り上げられたので、シラクイラで調達していた諸々は木の身分証以外何一つ残っていないことになった。魔法発動体の指輪が継続してマルテッラの親指にはまっているのを除けば、である。

侍女も居るためにマルテッラと会話することもできず、ただ近くに居るだけになり、正直言うと暇を持て余すことになったレオ。この状態になるとすぐさまの命の危険ももう無いようであるが、かといって剣を振り回す訓練をさせて貰える状態でもない。夜に個室に入れられた後は筋肉トレーニングをすることはできても、昼間に無言でマルテッラの近くに侍るだけのときは、外に漏れないように魔力操作の訓練をしたり脳内で魔法や武技のイメージトレーニングをしたりするだけの日々になった。


マルテッラも暇を持て余すのかとみていると、敵対国とはいえ王国貴族としての付き合いはあるようで、誘拐して来た公女に対してでも色々な面会者が現れるため、彼女がいうように幽閉ではなく身代金交渉をしているのだと思われた。

そういう日が過ぎていくなか、個室に居るときに魔法の発動を試してみたところ、魔法発動体の指輪が無くても発動だけはできることが分かったので、密かに訓練を続けることにした。昼間の脳内トレーニングと夜の実演により、シラクイラに居たときより訓練時間が増えたことで、限られた日数ではあるが日々の成長量は多いことを実感する。


そして、きっとレオには想像もつかないような額の身代金の折り合いがついたのであろう、公国へマルテッラ公女を戻すという話が来た。レオはここが一番命の危険があるところと思っていたが、ルングーザ公国まで一緒に送り届けられることになった。その際には取り上げられていた革鎧や片手剣など一式も返却され、使用人の衣類もレオ用に補正したから他に使えないので、と貰うことになった。

身代金を払うのと併せて迎えに来た馬車にマルテッラは乗ることになり、レオは並走する別の使用人用馬車に乗ることになった。ルングーザ公国までの間は宿場町の宿で泊まること幾日、野営をすることなく公国に着く。レオも宿で個室を与えられ、その時に初めて片手剣を抜くことができた。捕虜になる前、片手剣の攻撃が妙に上手く行ったときのことが気になっていたのである。あのときと同様に右手に魔力を集めて剣を振ってみても違いは無かったが、剣に魔力を込めるように振ったときには手応えが違った。もしかすると魔力操作が武技のコツなのかもしれないと理解し、片手剣や盾に魔力を込める訓練もその夜からは開始することにした。


そしてルングーザ公国の城に着くとレオはマルテッラと共に応接会議室に通される。そこには壁まわりに騎士が居るだけでなく、かなり身分が高そうな人が2人着座していた。

「父上、ただいま戻りました。この度は色々とご心配をおかけして申し訳ありませんでした」

「いや無事でよかった。良く帰って来た、マルテッラ。護衛の数が少なかったのじゃ。移動経路や時間帯も誰かが漏らしたのだろう。本当にすまなかった」

「マルテッラ公女様、よくぞお戻り下さりまして誠におめでとうございます」

マルテッラより3歩ほど後ろに控えていたレオに対しても声がかかる。

「そなたがずっとマルテッラに付き添ってくれていたと聞いた。父としてお礼を言わせて貰う。本当にありがとう」

「いえ、公女様のお陰で私の命も助けて頂いたようなものでした。逆に誠にありがとうございました」

と腰から頭を下げたままでいる。

「そうは言っても何かお礼が必要であろう。何が良いかな、宰相」

「ありきたりではありますが、金品、武具といったところでしょうか」

「では、父上、魔導書はいかがでしょうか。彼は魔法使いなんです」

と言ってレオの魔法発動体の指輪を見せる。

「ほぉ、その若さで。どれほど使えるのかな」

「まだ水魔法と火魔法の初歩のみでございます」

「魔導書は公国においても貴重であるので、閲覧なら許可する。マルテッラも読んでいた物だ」

「誠にありがとうございます」

その後は、マルテッラの居住屋敷における応接室のようなところに案内される。そこには彼女に以前から仕えていた侍女たちしか居なかったようで、中に入って扉を閉めた途端に、マルテッラは侍女に抱きついて泣き出した。

「エルパーノやトニー、みんな死んでしまったのよ……」

「お辛かったでしょう。ずっと気も張っておられたのですよね。ここでは存分に泣いて頂いて良いのですよ」


レオはそこに居て良いのだろうかと居心地も悪く、侍女が持参して来た回復魔法の初級≪治癒≫と中級≪回復≫の魔導書の読み込みに集中する。今までの水魔法、火魔法とも系統が違うためかなり違った魔術語が並んでいる。また、以前にも自ら経験したように回復魔法は治癒する対象の魔力を操作して回復を促すと解説されており、他の魔法系統とは違った使い方になるようである。魔法陣も他者の魔力を操作することを図示化したような幾何学模様が含まれている。

かなり集中して読み込んでいたようで、気がついたときにはマルテッラも泣き止んでおり、こちらを面白そうに見ていた。

「本当に魔法が好きなのね。レオの指輪は記念に貰いたいの。別のものをあげるから許して貰えないかしら」

断ることもできないと頷くレオ。

「あら、先ほどは父上たちには返事していたのに、本当に無口なのね」

と呆れられつつ、見本を見せてあげると、レオの手に小さな傷をつけた上で

≪治癒≫

を発動してくれる。


そのままその日の晩は公女の客室に泊まらされることになった。部屋で誰も居ないところで、自身に針先のような小さな傷をつけて≪治癒≫を発動する練習を行った。治癒対象が自分自身であり、自分の魔力操作であるので習熟不足であったとしても回復させることができていた。


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