フィウーノへの反撃2
公女マルテッラにも言われたように早めに宿に戻ったレオ。
仲間たちにも状況を伝え、明日は城門を守るだけでなくなるべく遠くにも攻撃をするように頼む。
「私たちは良いのですが、レオ様は大丈夫なのでしょうか」
「うん、まぁ何とかするしかないよね。みんなが各陣営に攻撃してくれると安全度が上がるからお願いね」
「もちろんですが……」
仲間たちも心配してくれる通りだが、万全を期すためにも睡眠時間を確保することにする。
そしてその夜。
レオは予定通り敵陣営の上空に移動して、馬のいる小屋を狙って火魔法を発動して行く。フィウーノ軍は兵糧を守ることに注力していたため、いつもと違う攻撃対象に戸惑う。
「早く火を消せ!馬が怯えて暴れているぞ!」
馬は意外と臆病な生き物であり、このような騒動が起きると落ち着かせるのが大変である。
明日に公子フルジエロたちの陣に攻めてくる中心になると思われる西門側の陣営には特に念入りに火をつけていく。もちろんその他の方角の陣営でも馬小屋を燃やして行くことで、翌日の味方の安全度を上げておく。
一通り狙ったところまで火をつけた後は、事前に許可を貰っていたように公太子達の陣営で自分に与えられた寝床に降り立つ。
「上手く行きましたか?」
公子への連絡用の兵士が待機していたので、予定通りである旨を伝えた上で眠りにつく。
明日はかなり危険な役回りである緊張と、今も危険な夜襲をしてきた興奮で寝付きは悪いが、無理にでもと思い目をつむっているといつの間にか寝られたようで、気がつけば朝であった。
「じゃあ、今日も頼むぞ」
せっかく美味しい朝食を貰っていたところにフルジエロが顔を出して来て、一言かけられる。
普通ならば光栄なことであるはずが、公子が怖いレオにすると緊張するだけである。
「ははは。目が覚めたか?お前が怪我をするとマルテッラが悲しんで俺に怒るだろうからな、無事に帰って来いよ」
「は!」
「出ました!」
レオは≪飛翔≫で上空にいるから確認できた、南門からバルバリスたち騎士団が飛び出して来たことを地上に伝える。
「よし、こちらも南の敵陣に対して出発!」
フルジエロが先頭となった騎兵集団が足元から飛び出して行く。
細かい駆け引きは分からないが、ムッチーノからのバルバリスたち330騎兵との挟撃で、フィウーノ王国が南門の外側に構えていた陣営を撃破するつもりであることだけは分かっている。
レオは足元にある、フルジエロたちが飛び出した後のルングーザ公国の陣営を守ることが任務である。
そのため、この陣営に攻め込んでくるはずの、ムッチーノの西門の外側の敵陣営からの軍勢に嫌がらせをするのである。
「よし!」
気合いを入れて北側に≪飛翔≫を開始する。
夜襲の場合には、敵が自分の姿を視認するのも難しいことから少し気持ちに余裕ができるようになっていたが、この明るい空の下である。空を飛んでいる自分の姿は敵の良い的になり得る。
「うわ!」
今は自分も攻撃魔法などを考えていないので、矢が飛んで来ても避ける余裕はある。
しかし、ここからは無理である。天使グエンと悪魔アクティム、ファリトンに攻撃も防御も期待する。
「行くよ!」
自分への気合い入れも込みで発声した後、敵陣からまさに出発しようとしている騎馬隊の指揮官たちを狙い、闇魔法≪夜霧≫を発動していく。
フィウーノ軍もこの攻撃は予想外だったようで、かなり混乱していることがわかる。何百何千の将兵が揃って動くためには命令伝達が肝であり、その中核となる指揮官たちが周りを把握できなくなったのである。
一度混乱すると方角もわからなくなるため、その場にとどまる必要がある。さらに、騎乗している馬が怯えて動けなくなっている場合もある。
「くそ!なんだ、これは!うちの魔法使いたちは何をしている!」
その叫び声も虚しく、周りの悲鳴や罵声、そして馬のいななきにかき消されていく。どうも火魔法による攻撃も受けているようで、なおさら身動きが取れなくなる。
兵糧を奪われる際に、夜にも使われた話を聞いていたが、明るい昼間に使用された場合にもここまで影響を受けるとは想定もしていなかった。
レオは騎馬隊の中でも声を張り上げている者、他より上等そうな鎧を着ている者を指揮官と推測して≪夜霧≫、そして≪爆炎≫を自身だけでなくグエン達にも発動させていく。
どうもこの西門の敵陣にはケーラが飛ばした悪魔による攻撃もあったようで、かなり混乱をさせることができているようである。
とはいえ、多勢に無勢。レオたちによる影響を受けていない部隊もあり、それが南下してルングーザ公国の陣営を目指しているのも見える。
「後は何とかしてくださいね」
陣に残った留守番組に期待しつつ、レオは他の方角の陣営にも移動していく。
北門ではラーニナ、東門ではベラが召喚した悪魔が、城門付近の防衛だけでなくそこから離れた敵陣への攻撃も開始していたようで、レオが到着したときにはすでにフィウーノ軍は浮き足立っていた。
南門の陣営への援軍を避けたいので、北門での攻撃はそこそこに東門に移動したレオは、遠目に南門付近が混戦になっているのを見る。
「この東門の陣営が応援に行かないようにしないと」
ベラが召喚した悪魔達と一緒にさらに≪夜霧≫による嫌がらせを、騎馬隊に対して実施していく。
「もうこれくらいで良いかな」
東門の敵陣にもある程度目処をつけた後は、いよいよ南門へ向かうレオ。




