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超記憶レオの魔導書蒐(あつ)め  作者: かず@神戸トア
レオは故郷に錦を飾る

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ムッチーノへ到着

 全員が戦馬(バトルホース)に乗っていることもあり、襲歩(しゅうほ)駈歩(かけあし)ほどではないものの、常歩(なみあし)ではなく速歩(そくほ)の速さで進んでいる一行。

 第1公子の軍隊といえども全騎兵が戦馬というわけではないので、自然と距離が縮まって行く。


「なんだ、お前達は!」

 普通に軍隊行動をしているところに16頭もの騎馬集団が近寄ってくると警戒されるのは当然である。

 ただ、ある程度近づいた後は、マルテッラの屋敷の者達が両手をあげてゆっくりと前に進む。

「我々は第3公女マルテッラ様の一行です。後から追いかけてくるようにとの第1公子フルジエロ様のご指示で参りました」


 すぐにフルジエロのところに確認が飛んだようで、本人がやってくる。

「おぉ、マルテッラ。もう到着したのか。乗馬も上手くなったのだな」

「まぁ機会も多かったですし」

「そして、コグリモ準男爵も。あの者達が頼りの仲間か。期待しているぞ」

「は、ありがとうございます」

「お兄様、このままゆっくり進んでいては危険では?」

「分かるか。そうなんだ、だんだんムッチーノの街が心配になって来たところだ。行ってくれるか?」


 自由気ままな冒険者だった仲間達が軍隊行動を一緒にするのは気疲れしそうなので、渡りに船と思って先発隊をありがたく受け入れる。

「せっかくこんな広々とした草原を、あんな軍隊行動していたら疲れるだけだからな」

 想像通りのカントリオ達の行動である。

 フィロ達も馬を乗りこなすようになり、競争という遊びを入れながら北東にどんどん進んで行く。



「おい、あれって」

 野営も繰り返した上で北東に向かっていた一行。

 フィウーノ王国の手前の街、ムッチーノに到着する頃に遠くで狼煙が上がっているのを見つける。

「フィウーノ軍に囲まれているってことか!」


 駈歩(かけあし)よりも襲歩(しゅうほ)に近い速度で北上を続ける。

「まずいな。結構な軍勢だぞ」

「あの狼煙を見たお兄様も援軍を出してくるでしょう。でも、今は私達しか居ません」

「この人数で闇雲に突っ込んでも。まずは城門の中に入ってしまった方が良いよな」


 フィウーノ軍に見つからない程度に離れた場所で夜になるのを待つ。そして闇魔法≪大夜霧≫と風魔法≪飛翔≫を活用して、城門の中にマルテッラを連れて行く。

「うわ!何者!」

「こちらは第3公女マルテッラ様である。援軍だ。まず指揮官に合わせて貰おう」

「は、ははぁ」

 慌てて上官のところに走って行ったと思われる衛兵。

「少し貫禄が出たのかしら」

「仮面もしないこんな子供に貫禄もないですよね」

 走って行く衛兵の後ろを、マルテッラを抱えながら≪飛翔≫で追いかけるレオ。

「やっぱり代官館、街の真ん中に向かうみたいね」

「じゃあ、最初からそこに降りれば良かったですかね」

「ま、今さらね」



「私はこのムッチーノの街の代官のニーニエロでございます」

 代官館で慌てて出て来たのは、目の下にクマが出来て苦労がにじみ出ている中年男性であった。

「こんな時だから挨拶も簡単で良いわ。私はマルテッラ。こっちはコグリモ準男爵よ。まずは怪我人のところに案内して」

「え?あ、はい。承知しました」

 まずは怪我人、特に大怪我の者を優先して2人で治療にあたる。一息ついたところで状況を確認する。


「はい、2日前の早朝からこの街を取り囲んで攻撃を受け始めました。最初は敵の数も少ないように見えたので、こちらの騎馬隊を門から送り出して蹴散らそうとしたのですが、それほど効果をあげられなかったどころか、だんだんと敵兵の数も増えてきて。今では城門を閉じて、城壁の上から矢を射るのが精一杯です」

「魔法使いの数は?敵と味方それぞれ」

「敵には中級ぐらいの者が数人いるように思えます。味方には中級が1人、初級が3人だけになります。昼間に城門の上から可能な限りの攻撃を行なって、今は魔力回復のためにも休んでおります」


 近づいてみるとわかったのだが、東西南北の城門付近にはフィウーノ軍が集まっているが、その間、例えば南東付近に敵兵は居ない。マルテッラには代官館で待機して貰い、レオだけが≪飛翔≫で仲間達のところに戻り、その隙間の近くまで連れてきた仲間達を次々と城壁内に送り込む。

「流石にこれは筋力も要るから疲れたよ」

「レオ様、お疲れ様です。私達も早く≪飛翔≫を習得します」

 悪魔達にも手伝わせながら、多くの戦馬も含めて移動したので、疲労感がいっぱいである。そこから戦馬に乗り、街の中心の代官館に戻る。


「これが仲間です。治療や城門での防衛活動に参加させて貰います」

「ありがたい!皆様にはこちらでお休み頂けたら」

 代官館で来賓用エリアは公女マルテッラとお付きの3人が使用することに。レオ達もそちらを勧められたが遠慮して近くの小さな宿屋を貸し切ることにした。

「こんな夜分に申し訳ないです」

「いえ、この街を救いに来た方でしたら大歓迎です」

 城門を閉鎖しているので旅人が増えるわけでもなく、客無しであった宿である。貸し切ることに問題は無いようである。


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