それって恋じゃん
彼女達の話を聞いていたら和美は瑞穂の良いところが見えてきたような気がした。瑞穂は人の悪口を言わない。たとえ二股をかけられても元カレの悪口を言わないで自分の悪いところを探そうとするような女の子だ。
「最近、瑞穂から連絡がなくてほっとしているような淋しいような気がするんだよね……」
和美はそんなことを話していた。
「おおー!!」と一斉にどよめきたった。
「え、何?」と再び固まる和美、そんな和美の肩をポンと叩いて朱里が言った。
「カズミ、それって恋じゃん」
僕が瑞穂に恋してるー?
「そんなことないよ! 瑞穂は僕の理想の女の子とはかけ離れているんだけど!」
「カズミって意外と奥手なんだー」
「いやいや、恋愛経験の少ない男の子ってそんなものじゃない?」
「理想の女の子だってー」
まるで蜂の巣を突いたように騒がしくなる。
「だってカズミって今まで優佳が理想の女の子だって思ってたんでしょ? 今日の優佳の話を聞いてどう思ったの?」と朱里が楽しそうに聞いてきた。
和美は、優佳ちゃんはみんなが思ってるような女の子じゃない。色々恋愛で苦しんできたんだよって言いたかった誤解を解きたかった。でも今この場で和美が優佳をかばったら、火に油を注ぐようなもの、更に優佳が非難されるのは目に見えていた。和美は確認のためにアリサを見た、目の合ったアリサは和美の気持ちがわかったらしく小さく頷いてみせた。
「う~ん……。理想とかイメージって何か違うって思った」と慎重に和美は答えた。
「でしょう。理想と現実ってそんなものでしょ?」と嬉しそうに朱里が言った。
瑞穂って同性から人気があるんだなぁ……。和美はそんな些細なことが嬉しく感じた。




