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魔法が苦手な魔法使いなどいらない! パーティ追い出され女子の鉄球ぶん殴り攻略  作者: たまぞう


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助けて──

挿絵(By みてみん)

 塔の攻略をはじめた頃から苦楽を共にしてきた槍遣いの死に冷静でいられるほど、オスメは仲間を失うことに慣れていない。


 子どもの頃から辿っても、せいぜい魔法を使えない魔法使いを追い出して、代わりにララを加入させたくらいのものだ。


 そしてそれはザーパフとユズも同じで、途中加入のララもとっくに槍遣いのゲルッフを家族同然として親しみを感じる仲間として想っていた。


 だからこその火事場力。だからこその無謀。


 道中で物言わぬ死骸となったのはなにもゲルッフだけではない。


 先に行くその背中を見送った者たちのほとんどが足元に転がり壁に赤いシミを作っていたのだから、引き返す選択をしてもおかしくはないところを、彼らはその激情だけで突き進んだ。


「よくも、よくもゲルッフをおおぉっ」

「“アイギス・アーマー”っ!」

「“リジェネーション”っ」


 そうして彼らが行き着いた先はやはり巨大な階層主が悠々と武器を振るえるほどの広間で、魔物にしては珍しく全身鎧姿の階層主が血に塗れたハルバードを構えて待ち受けていた。


 何人もの仲間を叩き潰した斧の刃先を濡らすものを見て激昂し叫びながら突貫するオスメに、重騎士のザーパフが最高峰の守りのスキルで補助し、ユズも高い継続回復力のある魔法を施す。


「力を授けたまえ──“リインフォース・クラトス”っ」


 仲間からのバフを受けたオスメは一時的に自らの身体能力を爆発的に高めるスキルで強化し、階層主のハルバードによる迎撃を潜り抜けて振り下ろした腕を力強く斬り付けた。


「鎧ごとっおおおおああっ」


 危険を顧みないオスメの全力は階層主の右前腕を守る籠手を砕いて太い腕に食い込む。


「刃が、くそっ」


 しかし鋼鉄の鎧に躊躇なく叩きつけた剣はすでに鋭さなど失っており、階層主を唸らせはしたものの致命傷を与えるようなものではなかった。


 身の丈六メートルはある巨人にとって痛みは感じさせても切断するほどには到底なり得ない攻撃は、ここに来る前に受けたララの火魔法による火傷のダメージを刺激して怒りを買うだけで、オスメは鬱陶しく飛び回るハエを払うような階層主の仕草で叩き飛ばされた。


「オスメっ! このぉ……くらえ“ガイアの怒り”」


 とはいえオスメもそのくらいは織り込み済みで、痛烈に壁に叩きつけられてもザーパフとユズのバフにより重傷を負うほどではない。


 それでも頭に血の上ったララは、四方を土に囲まれた環境で絶大な威力を発揮する地魔法を放つ。


 あと先考えない魔法に体内の魔力は根こそぎ奪われたララだが、その甲斐あって地面と壁から突き出した五つの土塊の腕は強力で、階層主を続けざまに殴りつけてその鎧を凹ませる。


「ララっ、しっかりっ」

「あいつだけは絶対にゆるさな……ごほっごほっ」


 本来であれば極太の腕が衝突した衝撃そのままに敵を拘束する魔法も、回復しきっていない魔力では半端なところで終わり、魔法は制御を離れたとたんに地面に落ちて畑の畝のような盛り上がりを残すだけとなる。


 単純な打撃だけとなった魔法に耐え切った階層主はララをターゲットに据えたらしくハルバードを振りかぶったが、重騎士のザーパフがガードに入って挑発をすると続けざまに振るわれる攻撃を歯を食いしばって耐えていく。


「おおらあっ、無視すんじゃねえぞっ!」

『ブモオオオオオオっ』


 すると今度は刃が潰れた剣を担いで現れたオスメが、ザーパフに夢中になっている階層主の顔面を兜越しに思い切り斬りつけて悲鳴を上げさせた。


 それでも重騎士ザーパフのスキルが階層主の本能に訴えるのか、階層主はひたすらにザーパフにハルバードを叩きつけるばかりで、オスメの攻撃にはいやいやと首を振りたまに頭突きのような動きをするばかりだ。


 狂ったように武器を振り続ける階層主と、それに応える重騎士。今この時とばかりに頭を叩きつけるオスメの剣はいよいよその剣身を砕いてしまい、柄で殴るような有様になっている。


 そんななかでぐったりするララを抱えたユズはザーパフに絶えず回復の魔法を施しながらその目に涙を溜めて嗚咽を漏らす。


 チーム“南風”がそれぞれに持てる最高の魔法とスキルで押していけそうだと思えたのはララの魔法までだった。


 繰り返される質量と膂力の強烈すぎる暴力に盾役のザーパフがひとりで耐え切れるわけもなく、武器を失ったオスメは残っていた剣の柄すら捨てて拳で殴っているが、既に血まみれで目も当てられない。


 いかに顔面を殴ろうが、階層主の硬い兜の守りを打ち破るまでには至らず、状況は瞬きの間に劣勢を極めていた。


「大丈夫かっ⁉︎」

「うわ、本当にでかっ!」

「待てや筋肉ハゲ」


 そんな戦闘の行く末を槍遣いのゲルッフのそれと重ねてしまい涙するユズの背中から、どこかで聞き覚えのある声が聞こえた。


 振り返ったユズが目にしたのは、やはりよく知った者たちで、その中に大切な友だちである魔法使いのはずの女の子を見つけた。


「モエ……っ」

「ユズちゃんなのですっ」


 お互いに、出会ったことに驚きが隠せないふたりだが、モエたちを見て最も強く反応したのは階層主であった。


 さっきの殴られたときの叫びよりももっと大きく動揺したような雄叫びとともに、階層主は体を激しく振り回してオスメを払いのけ、ザーパフを叩いていた手も止めたかと思うとハルバードを投げ捨ててその手に魔力を集める。


「ユズちゃん危ないのですっ!」

「──っ!」


 階層主が魔力を溜めて固めたものを両手で上から投げつけた。


 間一髪、モエの言葉に反応したユズは抱えていたララを突き飛ばし、自身もその身体をのけぞってどうにかかわしてみせたが、慌てて振り向いたユズは息がつまってしまう。


「そんなの、あんまりだわ……っ」


 窮地に現れた救いのメンバーがいるはずの通路に巨大な直方体の岩石がいくつも突き刺さって、階層主が通れるほどもあった間口は完全に塞がれてしまっていた。



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