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「天帝」の使い

「よー?おきたか…?」


 焚き火を真ん中に置き、丸太の上に座り、火の光に照らせれている金髪の男。長髪で丸い眼鏡が特徴的だ。


 知らないやつだ。


「今日は星が綺麗だなー、こんな日は滅多にない」


 パチッパチッ


 焚き火の静かな音と共に空を仰いだそいつは、そう呟き


「泣くほど辛い夢だったか…?」


 と、静かに、そう俺につぶやいた。

 

 その言葉と静かな声に、寂しさの渦が小さく主張をし始めるが、泣く気にはなれない。


 かき消すとは違うが、その寂しさを直視するのをやめる、あとは多少の自制で寂しは大きくならないで済む。


 パチッパチッ


 周囲の静かさと夜空の淡い明るさ


 それをみていて、また感じ始める心の渦


 なんか、苦しんでばかりだな

 「疲れた…」


「夢なんでしょうか……」


「……夢…ねぇ…どうだかね……」


「ただ」と前置きをし、その動作に夢の話に続きがあるのかと一瞬、期待する。

 こんな感情が出てくるんだな。

 良くも悪くも絶対に肯定はできないが……


「俺と関わりを持ってるってことは、何かしらの干渉があったって事だからな」


 俺は何も言わずに、続きを促す。

 何を語り出すのだろうか…ほんの少し、

 疲れた心に興味が湧く


「干渉ってのは、「天帝」の意思による物だ。俺はそれをするために、直接、「天帝」の使いから、指示を受けるのさ。干渉するんだ、なんらかの現象に対してな、名前くらい聞いたことあるだろ?」


 そう俺に聞くがそんなのは初めてきく、というか忘れてるんだろうな、そういや記憶喪失だった

 

「いや、僕はどうやら記憶喪失らしくて…」


「ほう……また大変だな…そりゃ……どこまで覚えてんだ?」


「それが…まったくないんすよね……」


「へ?まったくないのか?」


「はい……ところで全然違う話にはなるんですが…」


 そうだ。先からずっと思っていた事がある、

 あのじーさんの行方だ。

 辺りを見回したが、ここにいるわけではないらしい。


「あの…僕といた、1人のお年寄りを見ませんでしたか……あなたが助けてくれたんですよね?」


「ああ」と言い、その声のトーンや態度はどこか、軽い、深く考えてるそぶりもないと感じた。

 それに安心感を覚えるのは、一応長くいたからだろうか。「俺はすぐに影響されるんだな…」


 自分に対する、生々しく嫌な羞恥心が働いた、

 

「あのじいさんか……大丈夫だとは思うが、今はどうか知らないな。そのあとはお互い別行動だからな……」

 

 どうでもいい思考は早いのか、言葉を続ける短い合間にそんなことを考えれる。


「つまり?」


「俺を見たら、すぐにお前を頼むと言ってとんでいったんだよ。」


「僕を?…」


「ああ……でも、あの爺さんには近づかない方が良い……」



「え?なんでですか?」


「天帝」の使い。の方にも繋がってくる話でな……記憶ないんならちょっとした説明が必要だが良いか?」


 それはもちろん、それが本題だ。


 やっとだ。やっと何かを知れる。


 気づいたら何も知らずに草原に立っていた、

 訳のわからなさや、どうしたらいいかわからないことに恐怖覚えて、いきなり何かの化け物と対峙して死を自覚したり……


 状況がわからないことには慣れていたが…どんどん変なことに巻き込まれて、疲れたんだ。


 とうとう知れる、それくらいの結果は出たっていいじゃないか……こんなに苦しんだのさ


 そんなふうに思う気持ちにも呆れる…


 だから


 世界だけのせいにするは、あまりにも滑稽で嫌悪感の感じるものだ。


 それは自分自身の心身の動向が嫌気が差すほど愚かなものだから。


 「天帝」の使い


 それは「天帝」と呼ばれる者の意思を世界に下ろす役割を持った、人間の総称だ


 ただ、それだけだ。


 特別な能力は何も持っておらず、ただ世界に小さな、影響を与える、そんな役目だ。

 

 だが、二つだけ、変わったものがある、


 それは、好きな世界点に行けることと、未来を少し見ることが出来る事。あとこれは能力ではないが、白龍との繋がりが、かなり敏感である事。


 全ての人間や生物ありとあらゆるものには、白龍と繋がっている。


 白龍はそもそも、それ自体が「天帝」の使いと呼ばれている、存在であり、「天帝」の使いとはそこから取った言葉である。

 故にこの世に存在しているもの全ては「天帝」と繋がっていることになる


 そして「天帝」の意思とは、この地球において、人類の全てを通して具現化なされるものである。


「その意思とは何かわかるか?」


「……いや、分からない…」


「正解!そう何もわからんのさ!」


「へぇ…どういう意味か聞いても?」



 なかなか面白い話だ、早く続きが聞きたいが、そんな気持ちを抑えがら相手を気遣う、俺はなんなのか…


 俺は本当に変なやつだな。


 そんな思考を押し殺し、好奇心だけに身を任せる


 繰り返しだ。


「そうだな…つまりは」




 淡く光る夜空、辺りは暗く先は見えないが、うっすらと、樹々が見える。

 それにしてもも大きい、不気味なほど存在感を醸し出している、そう感じるのは、霧がかった暗さのせいなのか。


 話を聞きながら、そんなことを考えれる自分は器用なものだ。

 

 まぁ、それはそれで、良いのだが、その器用さを他に回せないのかと、呆れる気持ちが残る。


 また、そんな心緒を押しとどめ、語られる話に身を任せた。

 

 「天帝」と呼ばれる存在は、この世界の創造主らしい。


 だが、それ以外は全くの未知の領域で、よく分からないもの


 創造主であること、そしてそれが、在ること、

 それしか分からない。


 それがどこを目指し何をこの世界でしようとしてるのかも分からない、この世界は「天帝」でできているのにもかかわらず、一体何が目的なのか 

 すらも分からない。

 だが、白龍は心を通して言う、それをしなさいと、それが「天帝」の意思だというらしいのだ。


 「天帝」の使い、なんて区分は、本当は存在しない、それは全てが、その意志であり、それそのものだから、けれど、その役割を与えられた。


 それも意思だ。


 では厳密には何なのか。


 それは苦しみの因果を与える役割だ、人にとって苦痛を与えるような事件を起こす役割だ。


 小さな影響を与えるために、それが原因で


 何が起こるのかは分からないし、見たことはないらしいが、そう伝えられたそうだ。


 白龍とは、目に見えぬ世界の住人であり、この物資世界での、学びを司るものらしく、「天帝」の使いと、呼ばれるものと通じる役割を持つ何かだそうだ。


 何かと表現するのは所詮、目に見えぬ世界など見たこともない、白龍ですら、見た回数は指で数えれるほどだからだ、そして、あの老人に合わない方がいいというのは、白龍からのメッセージだったようだ。



「そして、そんな俺とかかわった、お前は、何かの因果なんだろうから、その夢って奴が意味がないとは思わないな。」


「…なるほど」


 白龍と「天帝」か…それは全ての存在に繋がっていて、そのものが「天帝」か…白龍は学びを司るもの。


 それと苦しみを与える役割を持つ「天帝」の使いと呼ばれているもの…が通じている…ね



 空を見上げる、淡く光る夜空に点々と光る星が見える、見えぬ世界とは、宇宙とも、繋がっているのだろうか…神秘的だな。

 その壮大さに心を簡単に奪われる。


「白龍か……」


 今の気持ちと相まって、白龍という響きの良さに、気持ちが昂る自分がいるが、


 見ていて萎えるものだ。こうも単純なのか。俺は……


 昂る気持ちをできるだけ抑えつつ、自省に入る思考を止めようとし少し前からずっと思い出していた事を思考にいれた、関係はないとは思うが、言ってみるのは、いいだろうか。


 それは夢に入る前の記憶、巨大な白龍を見て、何かを俺に伝えてきた記憶だ。


 あまりにデカく、印象的だったため、目覚めた時でさえ、記憶の淵にあった程だ


「そういえばなんですが……関係あるかは分からないのですが……」


 関係ないと馬鹿にされそうな感じがして、恥ずかしくて、言い難い気持ちがある。


 口にし始めた途端にきたので、整理がおいつかない。


 やめて欲しい。


「夢に入る前に、白龍を見たんですよ、その時になんか僕に…伝えてきたんですよね。いや、そんな気がする…んです…が…」


 言葉にしながら自分だけ気まずさを感じていたが、思考というのは関係のない事を、脳内のスクリーンに映し出すものだ。

 あの獣はなんだろうか…そんな疑問が一瞬の内に脳内に大きく短く響いた、思考の淵にはあったのに、何故今更なのか。



「ほう?そいつからなにを感じたんだ?」


 自分の思考に意識しすぎて、彼の言葉が一瞬理解できなかった。

 

「聞いてるか?龍を見たのか?どんな感じだった?それによってはお前もおれと同じ……苦痛の…使いかもだぞ?」


「そうなの…?あ、いや…あれですよ」


 そこまで大したものではないような気がしたが、思い返して言葉にすると、変なところが、分かる。



「一瞬だったので感じたものは、あまりないんでが……かなり落ち着く感覚はありました、あとは意識がそこで途切れたのも、今考えると不思議ですね。あと、繋がれてよかった?なんてことも伝えてきたと思います」


 意識がそこで途切れたんだ。覚悟は決まっていたが、眠れるほどの、心境ではなかったはずだ。

 そう考えると何かありそうだな。


「あーなるほど!はははっ」


 俺が真面目に思い返していると、突然笑いだした、それは、冗談に使う典型的な作り笑いだ、その笑い方に気が緩んでしまうのだが、


 だが、そんなことにのってやれる気分ではない。


「……どうしたんすか?」


「いやーお前俺たちと同じらしいな」



 不思議だな….…なにも感じない。

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