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124 バックビート・マドモアゼル

 十一夜君と話していると、聖連ちゃんが来た。ラップトップを抱えてトレイを持つ様子がちょっと危なっかしく見えるが、これで十一夜君並みに鍛えているというのだから人は見た目では分からない。


「現場付近の防犯カメラの映像を解析してみたけど、ナンバープレートは映ってなかったです」


 ラップトップを開いて聖連ちゃんがお茶を口にしながら残念そうに話す。


「目撃者がいれば警察に通報が入るかと思って警察無線も傍受しているんですが、ダメみたいですね」


 そう言いながらも華奢な指先はカタカタとキーボードを叩いている。


「今、現場から逃走した車両の特徴と進行方向から、防犯カメラやNシステムのデータを使って索敵するシステムを組んでます。黒塗りのビーグルなんて目立つので、システムが組み上がったら多分見つけられるはずです」


 ほぉ。相変わらずさっぱり分かんないけどなんか凄いや聖連ちゃん。


「特異点って言ってるけどなんだろう? 磁場が違うとも言ってるなぁ」


 確かになんかそんなこと言ってた。何のことだか分かんないけど。

 と、そこへわたしの携帯にメールの着信がある。


『みなさんお揃いね』


 ん? すみれさんからだけど、近くで見ているかのようなメッセージだ。思わず辺りを見回してしまう。


「どうした? 華名咲さん」


 警戒心もあらわに十一夜君がわたしを注視する。


「いや、細野先生のお祖母さんから。全然お祖母さんって感じじゃなくて素敵な人なんだけど」


「あぁ、最近兎拂を嗅ぎ回ってる人か」


「知ってるの?」


「兎拂は一応監視対象だからな。寝返ったり騙そうとしてたりする可能性もあるから監視してる。当然兎拂の周辺を嗅ぎ回ればうちらの網に引っかかるのさ」


 なるほどなぁ。さすが十一夜家。


「今回の件では武蔵さんと手を組んでるんでしょ?」


「まぁね。あの人は情報分析のプロだから、そっち方面は多少任せてる」


「多少……なんだ」


 苦笑してしまうが十一夜君はクスリともせず当然というような顔をしている。そうそう簡単に余所者は信用しないとでもいうところか。わたしのこともそうなのかなぁ。


『わたしのこと、彼に紹介してもらってもいいかしら?』


 再びすみれさんからだ。彼に紹介? 十一夜君のことかな。聖連ちゃん(彼女)もいるんだけどなぁ。見えてないのかな? 面倒臭いことしてないで、いるならさっさと出てくればいいのに。


『近くにいらっしゃるんですか? 十一夜君とその妹さんも一緒にいますよ。いらっしゃるならぜひどうぞ』


 返事を返して再び周囲を見回す。だけどすみれさんは見当たらない不思議。朧さんチックだな。

 そういえば朧さん、今頃何してるんだろ。


「お久し振り。夏葉ちゃん」


「えぇっ⁉︎」


 いつの間にか横に立っていた女性がキャペリンを脱ぐと、ブワッと長い髪が降りてくる。そしてサングラスを外せばそこにいたのはいつもと違う洋装のすみれさんだった。

 店内の席にいたらしいが、普段和装のイメージだったのもあって全然気付かなかった。


「あなたが噂の十一夜君ね。そして妹さん。細野すみれです。いつも孫がお世話になっております」


 そう言って華麗にお辞儀をするすみれさん。そう、お辞儀が華麗なのだ。和装だったらまた楚々とした感じだったはずだが、上質な麻のワンピースの裾を揺らす様子がまた華麗なのだ。ホント素敵な人だ。


 十一夜君と聖連ちゃんも立ち上がってお辞儀する。


「こちらこそお世話になってます」


 おぉ。十一夜君、こういうことちゃんとできる人だったんだ。いっつも寝てるか食べてるイメージが強かったけども。


「ひとまずどうぞお掛けください」


 わたしが座るよう促すと、四人掛けで一つ余っていた席にすみれさんが移動してみんな座った。


「すみれさん、何か進展でも?」


 いきなり現れたすみれさんに驚き、調べていた兎拂家に関して何か分かったことでもあるのかと考えた。


「そうね。それもあるわ」


「それも……?」


 と言うと他にも? まあそういうことだろう。一体なにが分かったんだろう。あんなことがあったばかりだし、ちょっとドキドキする。

 十一夜君は様子見という感じか。聖連ちゃんは構わずパソコンをかちゃかちゃやってる。一方のすみれさんは十一夜君のことをじっと見つめている。


「うん。わたし、あなたのひいお祖父様にはお世話になったのだけど、面影があるわね」


 そう言ってにっこりと微笑んだ。


「曾祖父に? そうですか。十一夜家ではたまに話題に出る人ですけど、僕は会ったことがないのでよく分かんないんですよね」


 え? またそんな。ちっちゃい頃可愛がってもらったって前に言ってたじゃん。嘘吐き。何か警戒心なのかな。


「そうなのね。とっても素敵な方だったわよ。腕も立つし、茶目っ気もあったかしらね」


 ふふん。花とカードを贈ったり、飲み代を先回りして払っていたりしたっていうあれか。確かに茶目っ気があるかな。そこいくと十一夜君は茶目っ気ゼロだなぁ。ザ・朴念仁って感じだもんなぁ、この人は。


「ところで十一夜君。預かっているチップについては主人が分析と調査を進めていてね、もう直ぐ見解を示せるはずよ」


 十一夜君は黙って頷くだけだ。なんか緊張感漂ってますが、すみれさんは何を言いに来たんだろう。わざわざここに姿を現すくらいだから何かよっぽどのことがあるんだろう。しかも結構登場シーン演出したっぽいし。


「ねぇ、十一夜君……」


 来たかこれ? 何が飛び出すの、これ⁈


「あなた、夏葉ちゃんのことどう思ってるの?」


「はぁっ?」


 おっと、思わずおっきい声が出ちゃったけど話ってそれぇっ?


「ぶっふぉーーーっ」


 あぁーあ、聖連ちゃんが盛大にお茶吹いたぞ⁉︎

 十一夜君は……と、固まっちゃたな。

 どうすんのこれ? 友紀ちゃんたちでもそんなこと訊かないぞ。武蔵じっちゃんじゃないけど、わたしもその場で頭を抱えるのだった。この危急の時にすみれさ〜ん……。

Subtitle from 高田漣 - バックビート・マドモアゼル - (2017)

Written by Ren Takada


新作も書いてます。

「バンドマンと学園クイーンはいつまでもジレジレしてないでサッサとくっつけばいいと思うよ」

という学園ラブコメです。よろしければそちらもぜひご覧ください。

https://book1.adouzi.eu.org/n2650fx/

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― 新着の感想 ―
[一言]  ご投稿お疲れ様です。  こっちも更新してらしたw    すみれさーん、この状況でそんな会話ですかー! 読者も同じ気持ちだよw
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