#28 『つがいの杖と白夜の宝玉』
楽しみにしている方、更新遅くなってすみません。
絵とか頑張ってる場合じゃないですよね。ほどほどにします。
カフワはその後、事前に連絡してあったティコの親類のお婆さんから【白夜の御杖】を受け取った。
「孫のお願いだからお譲りはしますが、どうも先代が使ってしまったみたいで、それはもう何の役にも立たない杖ですよ?」
「いいんです。ちょっと調べたいことがあって……」
杖の効果がない事を親切なティコのお婆さんに念をおされるが、その目的はあえて伝えなかった。
知ったらきっと止められるだろう。
もしかしたら、譲渡を拒否されるかもしれない。
そう思ったカフワはティコのお婆さんにお礼を言った後、杖を持って足早に首都へ戻った。
魔導士ギルドのハンター詰所でグレインと合流する。
「戻ってたんですか、カフワさん」
「ああ、これからすぐ例のブルンジのアジトへ向かうよ」
「僕も同行と言いたいところですが、残念ながら急ぎの依頼が入ってそっちへ行かないといけないんです」
「大丈夫だよ。小さな盗賊団くらい一人で何とかするさ」
一人でも大丈夫と豪語するカフワにグレインが何か言いたそうにしている。
「カフワさん、それがですね……」
グレインの話によると、ブルンジ率いる盗賊団【ラーベ】は非魔法習得人民【ロブ】のレジスタンスと繋がりがあるらしい。
レジスタンスは裏で特殊な魔道具の取引や怪しい研究をしており、グレインはこの後、そのレジスタンスの一味の犯行と思われる博物館から盗まれた貴重な魔法結晶の奪還に向かうのだそうだ。
「俺の潰したテロ集団とも関係ありそうだな」
「そうかもしれませんね。地霊祭も近いのに犯罪が急増して首都は大混乱ですよ。ギルド長のホンジュラスさんもそれで忙しくて大変そうです」
「……何か嫌な予感がするな」
「とにかく気をつけて下さい。カフワさん」
グレインに心配されながらも、カフワはギルドで貰った情報を頼りにブルンジのアジトへ向かった。
「首都のしかも、こんな近くに潜んでるなんて。灯台下暗しとはよく言ったものだな……」
カフワはそう呟いてそっと【隠者の狢外套】で姿を隠して様子を伺う。
すると、そこで見覚えのある男が通りかかる。
(あいつは……俺から賞金を盗んで街で尾行してた奴だ!)
カフワはゆっくりとその男に近づき周囲に誰もいないのを確認すると、男を捕獲する。
「騒ぐなよ……俺の質問に正直に答えれば殺しはしない」
「だ、誰だ!? 姿が見えない!?」
男は驚いてはいるが、明らかに不利な状況に抵抗する様子はない。
「お前に賞金を全部盗まれた間抜けな魔導士さ……」
「ムンドとノーボを殺った奴か! わ、わかった。金は返す! 返すから見逃してくれ!」
男は震えだし、あの時の事を思い出して必死で命乞いをしてきた。
「賞金の事はもういい……あのブルンジの持ってた杖は今どこにある?」
カフワの目的は一つ。
2つにわけられた一対の杖、魔道具【白夜の御杖】のもう片方を探してやって来たのだ。
そして男は全てを自白した。
あの後、役に立たなくなった杖はブルンジが売ろうとしたが足がつくのを恐れて一旦持ち帰ったそうだ。
今はこの裏にある倉庫のどこかにあるだろうという事がわかった。
「鍵は?」
「ここにある! だから見逃してくれ!」
「……わかった。お前には用は無いからな。だが、念のため暫く拘束させてもらう」
カフワは練成した宝石で男の手足を固定し、アジトから見えない場所に運んだ。
「これで良しっと……」
裏の倉庫前まで来て異変に気づく。
(この鍵……魔道具だ!)
鍵自体にも微弱な魔力が込められており、なんらかの効果があるようだった。
それが何かは分からないが、もしかしたら罠かも知れない。
「……考えても仕方ない。いくぞ」
悩んでも意味が無いと考え、倉庫のドアに鍵を差し込むとドアはあっさり開いた。
別段何か異音がしたり、変化は無く問題は無さそうだ。
カフワはそのまま倉庫の中に入り、目的の物を探す。
(やっぱりだ。盗んだ貴重品意外にも武器や魔道具が沢山置いてある)
そこにはガサツな盗賊らしく、不揃いに並んだ高そうな魔道具に少し興味が湧くも目的の杖を探した。
「あまり時間はかけられないぞ。盗賊団に気づかれたら面倒だ」
しかし、倉庫はかなりの広さで目的の物は見つからない。
時間がたち焦ってきた頃、カフワの背中に背負った魔道具【白夜の御杖】の宝玉が何かに呼応するように光りだした。
「これは!?」
もしかして、もう一本の杖が近づいている事に関係があるのかも?と思いカフワは背中の杖を手に持ちかざしてみる。
杖を少しずつ動かしてみると、僅かに光が強くなったように感じる方角があった。
「こっちか!」
倉庫のその方向へ進むと、向こうの暗がりでも杖と同じ赤い光が見える。
「見つけた!」
その光の場所へ行くと、杖は木箱の中に無造作に差し込まれていた。
ソコには他にも杖があったが、全く同じ形状の【白夜の御杖】は一目で分かった。
それを手に取り、2本の【白夜の御杖】を並べると一層光が強まる。
「これで、どうすれば良いんだ?」
考えあぐねた末、カフワは色々試した。
そして先端の宝玉同士をくっつけてみた時、変化は起こった。
はめ込まれていた宝玉はひとりでに外れて浮遊し、赤く眩い光を一瞬放ったかと思うと一つの宝玉となり床へ転がって落ちた。
カフワはそれを拾うと、体がズドンと重いものでも両方に乗ったのかと思うほど力が抜けて両膝をついた。
「ぐっ! こ、これは!? 宝玉の力なのか!?」
一つとなり元の力を取り戻した【白夜の宝玉】はそれを手にしたカフワの魔力を勝手に根こそぎ吸収しようとする。
(最近の俺、魔力奪われてばっかだな……でも! これでカロが戻るなら!)
膝をついた衝撃で腰に刺していた黒い本も床にこぼれ落ち、それを目にしながらカフワは叫ぶ。
「宝玉よ! カロを……カロを元に戻してくれっ!」
そう言って玉を黒い本の方へ差し出すと、赤い光が奪ったカフワの魔力と共に本の方へと送り込まれてゆく。
「……ヮ……フワ……」
「ぐぅぅぅ……カロ! 聞こえる? そこに……居るんだね?」
魔力を凄まじい勢いで奪われ苦しそうにするカフワだったが、それでもカロの微かな声に反応し声をかける。
「……カフワ! 全部聞いてたわよ。まったく無茶して! 早くその宝玉を放しなさい!」
「それが……さっきから試してるんだけど……玉が吸い付いて離れないんだ!」
「早く放さないと! このままだとあんたが力全部奪われて死んでしまうでしょうが!」
「ううう……そんな事言ったってぇ」
そうこうしている間もカフワの魔力、生命力も全部吸い取られるように無くなってゆき、玉を持ったまま倒れ込むカフワ。
「ダメ! このままじゃ、カフワが死んじゃう!」
カロはその本としての制御を取り戻し、急いで宝玉とカフワを引き離そうとする。
「怒れる少女の右拳!」
カロは本から腕を伸ばし宝玉をカフワの手から弾き飛ばす。
宝玉は2つに割れた後、さらに崩れて砂となった。
「……」
すでにカフワの意識は無く床へ伏したまま動かない。
「しっかりして! カフワ!」
こうしてカフワはカロを助けるためにその身を犠牲にしたのだった。
カロも本の中でそれを知っていて止められなかった事を酷く悔やんだが、どうにもならない。
そして今、一番の問題はここがブルンジのアジトの倉庫である事だ。
敵地の中で動けなくなるカフワ。
その回りで浮遊し焦るカロ。
この絶体絶命のピンチをどう切り抜けるのか?
「起きてカフワ! カフワ! カフワ!」
敵アジトで動けないカフワのピンチにカロは一体どうするのか?
次回『復活!無双の魔法少女』




