プロローグ:いつもの?
* 今回のあらすじ *
俺は歴史好きの高校生・下田一郎!
クールな幼馴染・莉央ちゃんと共に、3世紀前半の中国――みんな大好き三国志の時代に来てしまった!?
「今は西暦にして228年。蜀の諸葛亮が第一次北伐を敢行した年ですね。
我々は結果を知っていますが……当時この作戦はかなり用意周到であり、魏は大ピンチに陥っていました」
歴史にifは無いが、もしこの北伐が成功していたら……と誰しもが考えるだろう。
しかし作戦をぶち壊しにした一人の蜀将がいた。
三国志フリークなら誰もが知る、今日まで「登山家」として汚名を知らしめてしまった、自称インテリの馬謖である。
何故彼は敗れたのか? そもそも何で山になんか登ったの?
「泣いて馬謖を斬る」の真相に迫る!?
「どうしてこうなった……どうしてこうなった!?」
俺は莉央ちゃんとはぐれ、絶体絶命の危機に陥っていた。
どうあがいても味方に勝ち目はない。山に登ったはいいが、水は絶たれ、喉の渇きに苦しむ兵たちに戦う力などありはしない。そもそもがして総大将が――
もうすでに、敵兵が目視できる位置にまで近づいている。俺は絶望し、覚悟を決めた。
***
事の発端は、俺が三国志のゲームにハマり、熱が上がった時だった。
「しっかしまあ、馬謖ってどうしようもねえ奴だよなあ!
師匠の諸葛亮に気に入られたのを鼻にかけて、いざ大将をやったら命令無視でボロ負けするなんてよ。
水も確保できねえクセに山に登るなんてポカしたせいで、ネットじゃ『登山家』呼ばわりされてるんだぜ!」
俺の言葉を聞き、クールな幼馴染・莉央ちゃんはピクリと眉をひそめて言う。
「……確かに。何故そんな事をやったのか、は私も気になりますね」
「何故って、決まってんだろ! 馬謖がアホだったからだよ!
頭でっかちで中身を伴わねえ、机上の空論だけで戦をやろうとしたからさ!」
「下田さん。私たちは結果を知っていますから……後からいくらでも批判や分析はできます。
ですが当時の人々が失敗した理由を、軽々に『頭が悪かったから』と断じてしまうのは、一種の思考停止というものですよ」
「えー? そうは言うけどよ莉央ちゃん。じゃあ一体どんな――」
……という言葉のやり取りがあった所までは覚えているのだが。
ここまで書いた所で、勘のいい読者の方ならお気づきだろう。
俺と莉央ちゃんが、古代中国は三国志の時代――しかも諸葛亮の第一次北伐が始まった時期に、タイムスリップしてしまった事に。




