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初級ダンジョンRTA走者 世界最速を達成したので解説動画を公開したら参考にならなすぎで大バズりしてしまう【書籍化決定】  作者: ねこ鍋


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第88話 神殺しのケンジ

地獄から戻ると、そこは神殿の様に荘厳な図書館だった。

配置的にも直前のホールのすぐ横みたいだな。

どうやらショートカットにはならなくて、ただの寄り道になっていたみたいだ。


仕方ないですね。ショートカットが毎回成功するわけではないですし。

トライアンドエラーこそRTAの醍醐味ともいえます。

これを見てるみんなも、深海図書館で地獄の門を見つけた際は入らない方がいいと覚えてもらえれば嬉しいですね。


>言われなくても入らないけどなw

>あんなやばいこと書いてあるのに嬉々として入る方がおかしいんだよw

>希望を棄てるのは閻魔の方だったかあ


新しいショートカットもないみたいなので、先に進みましょうか。

後はボス戦くらいしか残っていません。

トラブルがなければ1分とかからずに着くはずです。


>走りながら天使がなぎ倒されていくw

>もはや解説すらもないとは

>天使がゴミのようだw

>え!?いま金色の宝箱がなかった!?

>レア宝箱!?

>上級ダンジョンの宝箱……どんなぶっ壊れアイテムがあるんだ……


ここの宝箱には、神性を帯びた武器が入ってることが多いです。

天使が持ってる装備に似ているので、もしかしたら同じものかもしれないですね。


>天使武器!?

>そんなのが手に入るの!?

>これが上級ダンジョン……

>神性を帯びてるってことは、天使も倒せるのか……?

>ガチの壊れ武器じゃねえか……

>むしろ人類が生き延びるのに必須の武器なのでは

>天使が倒せない人はそれを使って攻略するのもありってこと?


確かにそうですね。

神を宿して神性を得るには多少コツがいるので、慣れないうちは拾うのもありかもしれません。

自分には必要ないのでスルーして先に進みましょう。


>なんでだよ!

>わかってたけど!!

>夢を見させてくれよ!!


部屋を抜けながらどんどん先に進んでいく。

やがて図書館の一番奥の部屋に辿り着いた。

目の前には、真珠のような輝きを放つ白亜の扉がある。


「ここが深海図書館の最後のステージ、全知全能の間です。通常は開けられないのですが、神性を獲得していると開けられます。中にボスがいるので、さっそく入りましょう」


>上級ダンジョンって神がいるんだよな……

>天使たちのボス……つまり……

>ごくり……


白亜の扉を押し開く。

とてつもなく重くて硬い手ごたえがするのに、まるで綿を押しているかのように軽く、一切の音を立てずに開いた。

不思議な感覚だ。これも天使のいるダンジョンだからだろうか。


中は美しい空間だった。

扉と同じ白亜の床が広がり、壁も天井も同じ素材で作られている。

松明や照明といった物は一切ないのに、まぶしいくらいに空気が光り輝くほどの清浄な気配に満ちていた。


正面にあるのは巨大な玉座。

およそ10メートルはありそうな白亜の椅子に座っていたのは、荘厳な気配を持つ一人の老人。

黒い髭面のおっさんだった閻魔とは対照的に、白く豊かな髭を蓄えた、筋肉ムキムキのおじいちゃんだ。


おじいちゃんは入ってきた俺を見据えると、ゆっくりと立ち上がった。

その背丈は人間なんかよりもはるかに大きい。十数メートルはありそうだ。


「……来たか人間よ」


ほとんど唇を動かすことのない小さなつぶやきが、まるで世界を震わせるかのように響き渡る。

身長は十数メートルほどだが、立ち上がった威容はまるで山を前にしていると錯覚するほどの迫力だ。

手には剣のように伸びた雷を手にしている。

雷を帯びた剣ではなく、雷そのものだ。


雷霆(らいてい)を持つ全知全能の神……

>ゼウスじゃねーか……

>これガチのラスボスでは……


立ち上がったゼウスは、威厳に満ちた表情を怒りで一変させた。


「いつもいつも神である我を虚仮にしおって! 今日という今日こそは貴様を完全に消し去ってくれる!!」


>ガチギレしてるwww

>一体何をやらかしたんだwww

>いくらでも思いつくんだよなあ

>クリアしたのも初めてじゃないらしいし


「閻魔を退けたようだが、その程度でいい気になるでないぞ!」


退けたのは俺じゃなくてシオリなんだが、黙ってた方がいいだろうな。


「消え去れッ!!」


ゼウスが叫ぶと、声が衝撃波となって襲いかかってきた。

ゼウスから俺に向かって直線状に床が分解されて消し飛ぶ。

ちょうど魔力の膜を張っていた俺の周囲だけが、丸く残されていた。


「どうやら原子レベルで分解してきたようですね。素粒子の風みたいなものでしょうか」


>ええ……叫んだだけでこの威力かよ……

>原子レベルに分解って、いきなり最強クラスの攻撃じゃん

>これが神……


こいつは出会うたびに新しい技を使ってきます。

なので初見での対応が求められる難所ですね。


特に最悪なのは、時間魔法で周囲の時間の流れが遅くなっていることです。それでこちらの動きを遅くしてくるんですね。

時間が遅くなるため、タイムも遅くなるので、その点は問題ありませんが。


>問題しかないって!w

>スピードを落とすとかケンジくん対策じゃんどう考えてもwww

>正攻法じゃ勝てないから物理法則の方を捻じ曲げたのか

>ガチのチートかよ

>強ボスにデバフをかけるのは人類の常識

>ケンジくんがボス扱いで草

>言っとくけどそっちが挑戦者だから

>てか時間魔法は神の魔法ってこと?

>じゃあ時間魔法が使えるケンジくんってやっぱり……


「確かに言葉だけを聞くと難しそうに聞こえますが、実際には大したことありません。しょせんは魔力での攻撃ですから、こちらも魔力で防げます。油断さえしなければやられることはないでしょう」

「貴様……我を見もしないか……!」


配信用のカメラに向かって解説していると、なぜかゼウスが怒り狂っていた。


「いつもいつも舐めた態度をとってくれるが、とうとう今日はよそ見をした上に地上の人間と会話をしながらとはな……! 我との戦いは会話をしながらでもこなせると、そう言いたいのだな!?」

「ああいや、決して舐めてるわけじゃない。今はダンジョンRTAの解説中だからな」

「あーるてぃーえー……? かいせつ……?」

「ここのボス戦は対応を間違えれば長引きやすいです。しかし逆に言えば、上手く戦うことでタイムをいくらでも短縮できるということでもあります。なので今日は出来るだけ早く倒す方法をみんなに教えられればと思います」

「……この我を、いかに早く倒すか教えてやる、だと……?」


ゼウスの声がこれまで聞いたこともないほど震えはじめた。


「人間の考えることなど分かりたくもないが、貴様が我を虚仮にしているというのはよく分かったわっっ!!」


なぜか怒りが頂点に達していた。

特に強化フラグを立てたわけでもないはずだが……急にどうしたんだ?


>そっか、わからんかあw

>どうしてだろうねw

>これは0点


「存在の一欠片も残らず消し飛ばしてくれる!!」


怒りと共にゼウスの全身から雷撃がほとばしる。

それは全身を駆け巡り、雷を手にした右手へと集まると、視界の全てを埋め尽くす光球に変貌した。

燃え盛る恒星と化した雷が、天高くに持ち上げられる。

それはさながら、太陽の顕現だった。


「森羅万象灰と化せッ! ケラウノスッッ!!!!」


神が太陽を握りつぶし、莫大なエネルギーがあふれ出す!


──ズッッッドオオオオオン!!!!!!!!


>うおおおおおお!!

>超新星爆発か!

>これが宇宙を支配する天空神の力……

>星の爆発なんて、生物が耐えられる規模じゃないだろ……

>さすがにケンジくんでも、これは……

>これで生きてたらガチで人間じゃないぞ……

>じゃあなんで映像は途切れないんだ?

>え……

>嘘だろ……

>そんな……まさか……


「全方位攻撃ですか。そんなのもあるんですね」


白亜の部屋は完全に消し飛び、ゼウスが座っていた玉座と、俺の立つ床がわずかに残されているだけだった。

壁が消えて広がった空間には、小さな星々が浮かぶ宇宙空間が広がっている。


「とはいえ今の攻撃には明確な弱点が存在します。それは予備動作が大きい事です。この隙に倒すことで攻撃を回避することができそうですね。

 初見の攻撃だったので解析するためにあえて攻撃を受けましたが、防御に自信がない人は先制攻撃で倒すことを推奨します」


>あえて受けたって……

>どうやって防ぐんだよ……

>超新星爆発に巻き込まれて、なんで生きていられるんだ……


「貴様……なぜ立っていられるのだ……」

「何故と言われてもな。この程度なら誰でも防げるだろ?」


見た目は派手だが、要は攻撃魔法だ。

対処法は強化された初級爆発魔法(エクスプロージョン)と変わらない。

耐熱性と耐衝撃性を強化したうえで、込められた魔力に対応した防御性能を組み込んで防御すればいいだけだ。


>爆発が発生した瞬間にそこまで見抜いたってこと……?

>1秒もなかったけど……

>あの一瞬で魔力の属性を見抜き、専用の防御魔法を構築して、展開した……?

>一瞬でも遅れたら消し飛ばされてたんだろ……

>魔力に対する観察力、理解力、操作精度……なにもかもが規格外すぎる……

>ケンジくんがヤバイのは知ってたけど……ここまでなのか……


「さて、ここのボスの倒し方ですが、方法は簡単です。神性を宿した魔力の剣で核を切りましょう。核の位置はサーチを使えばすぐにわかります。

 道中で拾える天使武器でも倒せるかもしれないですが、その場合は相手まで近づく必要があります。長さを自在に決められる魔力の剣の方が早く倒せるのでオススメですね」


俺は自らの魔力を手に集め、それを伸ばして剣の形状にする。

それを見たゼウスの身体がビクリと震えた。


「ふざ、けるな……っ。この程度で終わってたまるか! 天空を統べ、この宇宙を支配する全知全能の我が、我がっ、たかが被造物のイレギュラーごときに──こんなところでっっ!!」

「初級剣スキルLv1〈スラッシュ〉」


──ザン!


一筋の剣線がゼウスの右胸を通過する。

核を切り裂かれたゼウスは、そのまま空間に溶けるように消えていった。


>神を……初級剣スキルで……?

>ははは……ここまでなのかよ……

>俺も強い方だとは思ってたけど、こんなの見せられたらな……


「さて、ボスも倒しましたし、さっさと先に進みましょうか」


部屋は消し飛んだけど、玉座だけは残されている。

そして海底図書館から出るための隠し扉は、その玉座の裏にあるんだよな。

隠し階段といえば玉座の裏が定番。やっぱ神は分かってる。


ここを抜ければショートカットも完了です。

どれだけタイムを短縮できるのか楽しみですね。


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― 新着の感想 ―
うわあw 面白いです、良い物語をありがとうございます。
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