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公国軍対プーリ侯爵軍②

累計300000PV突破しました。ありがとうございます!

これからもこの稚拙な本作品ですが、応援していただけたら幸いです。




◆プーリ侯爵領軍 本陣



 時は少し遡る。


 プーリ侯爵家当主のカリウス・プーリを始め、プーリ侯爵家に味方する貴族達や武官が本陣であるテントに集まっていた。


「斥候隊、敵の数は?」

「はっ!カリウス様!公国軍は、正規軍約三万に傭兵団一万を含めた約四万もの軍勢です!正規軍の中には、精鋭部隊“竜”や“鷹”の姿が確認されました!」

「そうか、大方予想通りだな。それで、“狐”の姿は?」

「それが...未だに発見出来ておらず、申し訳ありません!」


 その報告にカリウスは、僅かな落胆とやはりなという思いがあった。


「“狐”は、暗殺や工作といった裏の部隊だから仕方あるまい。本陣の警備を厳重にせよ。怪しい者がおれば即刻捕らえるのだ、と警備兵に伝えよ」

「ははっ!失礼致します!」


 敬礼した兵士は、テントから出ていった。残るカリウスや貴族、武官達はう~むと考えを巡らせる。


「やはり“竜”と“鷹”が出てきたか。問題は、“狐”だな。奴等め、一体何処にいるのだ」

「確かに“狐”も脅威ですが、まずは正面にいる四万の軍をどうするか決めなくては」

「此方の総兵力は一万程度、まともに戦っても勝ち目は無いぞ」


 貴族と武官達は、意見を出しあうが平行線を辿っている。すると、そこに黙っていた公王ハマルの妹であり軍の総大将、フィナロムス・フリンが立ち上がった。


「カナベール、確か貴方を救ったカゲマサ殿の魔法は侯爵領軍第一軍を壊滅させたのですよね?」

「ええ、フィナロムス殿下」

「ならば、カゲマサ殿に魔法を放っていただきます。そうすれば、数は減らせるでしょう。早速伝言を」

「ならば、私が行きます。彼を起用したのは私ですから」


 そう言ってカナベールは、テントから出て行った。そして暫く経ち、カナベールが戻ると再び議論を始めようとした。その時。



 戦場に黒き竜巻が出現した。



「な、何だあれは!?」

「あれがカゲマサとやらの魔法か!?」

「なんて巨大な!!」


 貴族達からは、怒号や悲鳴染みた叫びが飛んでくる。一方で、カリウスやフィナロムス、カナベールはというと。


(ぬう、あの仮面男め。どんな魔法を放つかと思えば、恐ろしい魔法を放ちおって。だが、我が精鋭の第一軍を破っただけはある)

(何て威力・・・・!カナから聞いてたけど、本当だったのね。彼は、危険だわ。何時敵に回るかわからない傭兵だからこそ、此方に縛り付けないと)

(素晴らしい威力の魔法ね。さすがカゲマサ様、私の見込んだ通りの御方♪)


 評価を上げるカリウス。警戒するフィナロムス。称賛するカナベール。テントは、そんな状態になっていた。それを監視している者に気付かずに。














◆公国軍精鋭部隊“鷹”



「・・・・・何だ、何だあれは!?あんな魔法見たことが無いぞ!?」


 公国が誇る精鋭部隊“鷹”。その隊長は、生まれて初めて発狂した。それほど目の前の光景が、信じられないのだろう。黒き竜巻が、公国軍を次々に蹂躙している光景など。

 勝てる戦争だった筈だ。数でも練度でも此方が上だ。なのに、今現在公国軍は押されている。いや、災害に巻き込まれていると言えばいいのか。

 黒き竜巻は大地を抉り、人を切り裂き臓物や骨を撒き散らしながら、ゆっくりと着実に公国軍の方へ進んでいる。先頭にいたのは、確か“竜”だった筈。


(あれでは少なくとも半数はダメかもしれん)


 “鷹”の隊長は、“竜”の生存を諦めた。あれほどの魔法を食らったならば一溜りもない。まあ、自分達は別動隊として動くから関係ないか。

 隊長は、そう自分に言い聞かせた。そして、部下達に命令をかける。


「我々は別動隊として、プーリ侯爵領軍の本陣を奇襲する。気取られるなよ?」

「はっ!」


 あの光景を見てなお戦意がある部下達を見て頼もしく思いながら、隊長は行動を起こそうとして・・・視界がぶれた。


(アレ?)


 隊長は、ぶれた視界の中である者を発見する。


(何で、俺の体が)


 それは、自分の体だった。何故自分の体があるのか。そして、その体には頭が無かった。


(俺、殺され...)


 そこで隊長の意識は途切れた。













「た、隊長ォォォォ!!!!」


 一人の兵士は、今まで話していた頼れる隊長が目の前で殺されたことに叫び声を挙げる。


「な、何者だ!?」


 他の兵士は、何とか冷静さを保ちつつ隊長の首を一閃した人物に剣を向けた。それに呼応して、兵士達は次々に抜刀、人物を包囲する。


「ふっ」

「な、何が可笑しい!」


 人物は、白い仮面に金髪、黒ずくめといった奇妙な出で立ちだった。両手には、二本の短剣がにぎられている。

その人物は、包囲を見て鼻で笑ったので兵士は怒鳴りながら問いただす。


「いや、何でも無いぞ。お前達の実力の低さを嗤ったわけじゃないぞ。くくくっ」


 その言葉に“鷹”の全隊員がキレた。


「殺せェェェ!!!!」


 その言葉に包囲していた隊員が、その白仮面に襲い掛かった。白仮面は、二本の短剣を構えると


「シャドウエッジ・四連」


 白仮面は、そう言うと同時に隊員達に黒き線が引かれる。それぞれ顔や首、胴体に様々。


「ふん」


 白仮面は、懐から取り出したタオルで短剣に付いた血を拭き取った。


(血?)


 隊員達は、何故血が付いているのか疑問を感じた瞬間、隊員達に引かれた黒き線から大量の血飛沫があがる。隊員達が、訳がわからないといった顔で絶命していくのを横目に白仮面は、改めてコイツらは大したことはないと認識する。


「さあ、お前達。カゲマサ様の歩まれる道、その踏み台になりなさい」


 白仮面、もといジ・キラーは仮面の奥にある口を歪ませながら“鷹”に襲い掛かった。







 そして、精鋭部隊の一つ。“鷹”は、全滅することになる。 

 精鋭部隊“鷹”を殲滅したキラーは、木の陰に隠れていた存在に命令する。


「貴方達は、これらの死体を回収せよ。死体は、あの魔女に渡すこと。カゲマサ様への忠誠を示せ」

「「「「はい!」」」」


 隠れていたのは、元囚人で今は魔人へと変異した女達だった。彼女等は、キラー程では無いにしろ凶悪な犯罪者である。今まで殺してきた人間は数知れず。大量虐殺の現場を見ても、動じない。それどころか、自分達を捕らえた国が痛い目を見たことに愉悦を感じている。

 だからこそ、彼女等はカゲマサには逆らわない。魔人なった瞬間、圧倒的なまでの力の差を感じ取ったこともあるが、国に報復する機会をくれたことに感謝しているのだ。部下達が、死体を集めているのを横目にキラーは戦場に目を向ける。戦場では、今も黒い竜巻が敵軍を蹂躙している。


(ふむ、カゲマサ様の魔法はまだ続いているか。だが、そろそろ消える頃だろう。私の復讐対象は、既に伝えている。竜巻が消えたら探して良いと許可は貰った)


 キラーは、無意識のうちに憤怒のオーラを撒き散らす。


(待っていろ・・・・!!必ず見つけ出してやる!我が一族を殺した報い、しっかりと味あわせてやる!!なあ、――――――――魔導師ジメイ!!)


 キラーは、憤怒の感情を宿しながら戦場を見つめる。早く黒い竜巻が消えることを願いながら。















◆平原 公国軍左翼 精鋭部隊“竜” テント



 公国軍は、左翼 中央 右翼と別れている。現在公国軍を襲っている竜巻があるのは、中央の軍。精鋭部隊“鷹”がいたのは右翼だ。そして、左翼にいるのは中央にいた筈の精鋭部隊“竜”。

 何故左翼にいるのか。それは、“竜”の総隊長が竜巻を見た瞬間部隊に引くよう命令を出したのだ。それでも、いくつかの部隊が竜巻に巻き込まれたが。


「・・・どうやら敵には、規格外の魔導師がいるようだ」


 そう重々しく呟いたのは、“竜”五千名を束ねる総隊長にして将軍のドラヌス・ローベッジである。今年で四十九歳になる男だが、肉体や覇気はそこらの兵士以上だ。


 ドラヌスが思案している所に副官が声を掛ける。


「しかし、仮に魔導師がやったとして一人では無理でしょう。恐らく複数人で放ったものかと」

「ふむ....」


 ドラヌスは、本当にそうだろうか?と思った。常識的に考えれば、確かにあの規模の魔法は複数人で行わなければ出来ない。だが、ドラヌスの長年戦場に立ってきたことで身に付いた勘が警鐘をガンガン鳴らしている。

 ここまで明確に感じ取れるということは、この戦場に居るのだ。規格外の怪物が。しかし、引く訳にはいかない。自分達は、国を守る為に集った軍隊だ。国に仇なす輩を滅ぼす竜なのだ。


「・・・あれほどの魔法を放ったのならば、魔力を使い果たしているだろう。その間に部隊を立て直して」

「おっ!ここかぁ?“竜”って奴等の陣は!!」

「ッ!!??」


 突如響いた知らぬ声にドラヌス以下“竜”の兵士は、腰に差した剣を引き抜き構えながら声のした方を見る。そこには、白のシャツに黒いスボンとシンプルな服装の大男が立っていた。顔には、黒い仮面が取り付けられている。


「貴様・・・何者だ」

「俺は、おっと。名前出しちゃいけなかったんだった」

「見張りの兵士はどうした」

「ああ?全員殺った」


 まるで無邪気な子供のように黒仮面、ギオ・ウォーマンは答える。ドラヌスは、そんなギオを冷静に観察していた。


(見張りを皆殺し、か。しかも一人で)


 “竜”の兵士は、けっして弱くはない。ランクD以上の精鋭で揃えているし、連携によって格上の相手にだって勝てる。それが千人以上いた筈。だが、この男はたった一人で打ち破った。それだけでも最大限の警戒をするには十分だ。


「貴様、一体誰の差し金でここに来た」

「俺の雇い主だ。さあ、それよりも」


 ギオは、拳を振りかぶる。


「殺り合おうじゃないか!!」


 その瞬間、ギオの姿が消えた。そして。


「グウゥウッ!!??」


 ドラヌスの腹に巨大な拳が突き刺さっているではないか。


「な、何を・・・した」

「なぁに、ただ踏み込んで殴っただけだ。しかし、お前もハズレかよ。強者がいないぞ強者が!」


 そんなバカな。ドラヌスは、薄れ行く意識の中で黒仮面の馬鹿げた身体能力に戦慄した。そこでドラヌスは、意識を手放した。


「まあ、お前は話が通じやすそうだし連れていくか」

「貴様!よくもドラヌス将軍を!」

「許さんぞ貴様!」

「うるせぇぇ!!」


 ドラヌスの仇とばかりに襲い掛かってきた部下をギオは、長い腕を鞭のようにしならせて打ち付けた。部下達は、テントを突き破って外に転がっていった。


「ふい~」

「おい、何してんだ。味方になりそうな奴はいたのか?」

「お!ロンドか!コイツならいいだろう?」


 ギオは、ロンドに意識を手放したドラヌスを見せる。ロンドは、暫く顔を見た後。


「なるほどなぁ。ドラヌス将軍なら、いけるかもしれん」

「だろ!」


 そしてギオとロンドは、ドラヌスを脇に抱えてテントを出ていった。

















◆プーリ侯爵領 壁の上



 プーリ侯爵領の街を囲む壁の上で俺、カゲマサは【ダークテンペスト】を操作しながら戦争とは全く別のことを考えていた。


(死霊混合人アンデッドキメラに魔人化使ったらどうなるんだろうな)


 アンデッドのままなのか、魔人に変化するのか、それぞれの長所を備えた強化形態になるのか、劣化するのか。興味が尽きない。


「おっと、そろそろ次の段階に移るか。死体もだんだん集まってきたし」


 カゲマサは、仮面の奥で顔を引き締めた。


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