手駒集め③
ローバント牢獄最下層に来た俺とミルスは、辺りを見渡す。囚人達は、疑問や歪んだ欲望の混じった視線を向ける。だが、その中で特に三つの視線には明らかに違う視線が存在した。
一つは、驚愕。
もう一つは、異常な程ギラギラした戦意。
最後には、恐怖と羨望。
う~む、良し。ギラギラした戦意を放つあの大男から行くか。俺は、スタスタと大男の元に歩く。
「ミルス、囚人達のリスト探してこい。一応な」
「了解です!」
ミルスは、素早くその場から離れ囚人リストを探しに行った。そして俺は、大男の目の前まで来てスキル《鑑定》を発動させた。
名前 ギオ・ウォーマン
種族 半巨人
職業 囚人 戦闘狂
レベル 32
ランク B-
スキル 格闘 身体能力向上 連打 威圧
おお、純粋な格闘家か。ん?種族は半巨人、職業に戦闘狂ってあるな。あのエリス・ドミニク、ご長女様だって戦闘狂だが職業にはなかったから、コイツはその上をいく戦闘狂か。半巨人ということは、巨人と何らかのハーフか。
俺がそんなことを考えていると、いきなり牢屋がガアンッ!と音をたてた。何事かと思い、そちらを見ると例の半巨人が牢屋に拳をぶつけているではないか。
「おい、お前・・・!」
「ん?何だ半巨人君、ちょうど俺も君と話をしたいんだが」
「話か・・・なら俺と戦えぇ!!」
「戦う?」
「そうだ!戦い、いや殺し合いだ!さあ!早く殺ろう!」
なるほど、戦闘狂だ。エリス・ドミニクから感じた気迫の更に上をいく。ふむ、倒して言うこと聞くなら手っ取り早いかな?時間もあまりないしな。
「いいだろう、ただし君が負けたら俺の部下になれ」
「部下だぁ?ふん、いいぜ」
「良し」
俺は、【ボックス】から魔法書を取り出しお目当ての魔法を発動させた。
「これでいいかな?【アンロック】」
すると、牢屋の錠前が外れ扉が開いた。その瞬間。
「オラァァ!!」
「ッ!!うおっと!」
殺気を感じて横に跳ぶ、そして目の前を横切る巨拳。そう、扉が開いたと同時に半巨人、ギオがカゲマサに殴りかかったのだ。
「ふぅ、危ない危ない」
「へっへっへ、俺のパンチを避けた奴を見るのは初めてだなぁ」
そう言いながら牢屋を出たギオは、体勢を整えてカゲマサを見る。俺は、魔法書を【ボックス】に収納し、改めてギオに目を向けた。
(さてどうするか、さっきの一撃から察するに人間だとランクB上位レベルの早さ、威力だった。やはり種族が起因してるのか?まあ、半分巨人だからと納得しよう。巨人って、たしか亜人の一種だったっけ?まあいいか)
俺がそんなことを考えていると。
「殺し合いの最中に考え事かァァ!?」
ギオが巨拳を再び繰り出し、俺の右頬を直撃した。
「ぶふっ!」
「今は俺に集中してくれ!!強い奴!!」
そしてギオは、只でさえ強力な一撃を嵐のような連打で繰り出す。俺は、辛うじて躱しているが所々にかすり傷が出来始めている。
「チッ、中々早いな!」
「それを躱すお前はすごいな!!もっと殺ろう!」
すると、ギオの連打のスピードが、威力が更に増した。
「いいッ!?更に早くなった!?」
「ハハハハッ!!」
辛うじて躱しているが、次第に後ろへ追いやられていく。このままでは不味い。
「いい加減にィィ」
「何だよ!こんなものかよォォ!!」
「しろォォォ!!」
「なっ!?」
俺は、スキルで身体能力向上を行い、人間なら一発KOの一撃をギオの頭に喰らわせた。ギオは、後ろに吹き飛び牢屋の壁に激突する。
「ふ~、若干危なかった」
「まだだァァァァァァ!!!!」
「ファ!?」
完全に気絶させるために放った一撃だったのに、ギオは立ち上がってきた。
「はあ、はあ、はあ、はあ、俺はまだ・・死んでねぇぞ!!」
「・・・・いや殺したら部下にできないよ」
「はあ、はあ、関係ねぇぇぇ!!」
俺は、ため息をつきギオの目の前まで近づくと耳元でメリットを話す。
「いいか?俺に着いてこれば、更なる強敵と戦えるぞ?」
「何!?強敵だと!」
「そうだ、だからよ。俺の部下になれ。お前の欲望、強敵との戦いを叶えてやる」
「・・・・」
ギオはしばらく黙り混むと、顔を上げる。
「チッ、わかったわかった。部下になってやる。その替わり、また戦え!」
「いいぞ」
「絶対だからな!!そういやお前の名前なんだ!!」
「カゲマサだ」
「そうか!!じゃあカゲマサ!!また戦えよ!?」
こうして半巨人のギオ・ウォーマンが部下となった。
ギオ・ウォーマンを従えた俺は、次に白髪の老婆が収監されている牢屋の前に立つ。《鑑定》してみるぞ。
名前 ミレンダ・マージィ
種族 人間
職業 囚人 魔導士
レベル 41
ランク C+
スキル 闇魔法 呪術 錬金術 魔力視 扇動 統率
うわ~、めっちゃハイスペック。
「アンタが魔女ミレンダか?」
「・・・そうだよ」
「じゃあ、単刀直入に言おう。俺の部下になれ」
「・・一つ聞かせな」
「どうぞ?」
「何故アタシなんだい、他にも若い才能を持つ奴は幾らでもいる。ましてや、犯罪者であるアタシを」
「おいカゲマサ、騙されるな!!コイツは強いぞ!!」
「お黙り!!この戦いしかやることの無い獣が!」
「んだとクソババァ!!」
何やらギオとミレンダが喧嘩を始めだしたのでミレンダにとって、美味しいメリットを提示する。
「魔女ミレンダ、俺の部下になったら生身の人間に魔法実験し放題だぞ」
「何!?本当かい!?」
「本当だとも。研究室も贈呈しよう」
「・・・良し、アンタの話乗ったよ!」
「わかった」
「しかし、もし嘘だったらアンタを殺すからね」
「ハッハッハ!!無駄だぜ婆さん!!コイツは強いからな!!」
「お黙りよ!!」
こうして魔女ミレンダの勧誘も成功した。
そして最後、俺は女性しかいない牢屋の前にいた。
「・・・お前が”男殺し“か?」
「それがどうした?」
牢屋の中から殺気に満ちた目を向ける一人の美女。髪は金髪、顔は気の強そうな美女かな?あれ?頭に角が・・・?よし、鑑定。
名前 ジ・キラー
種族 魔族
職業 元奴隷 復讐者
レベル 50
ランク B
スキル 隠密 闇魔法 身体能力向上 暗視 透明化 etc.
な、魔族だと!?それに何だ、このレベルとランクは!?大当たりじゃないか!さっそく勧誘だ!
「なあ、お前。俺の部下に」
「断る。男、ましてや人間の男の下に付くことはしない」
断られた。ツライ。
次回、魔族の美女を引き抜き作戦。




