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手駒集め②

あけましておめでとうございます。




 ローバント牢獄。この牢獄には、数々の犯罪者や犯罪者とされた者達が収容されている。凶暴な犯罪者然り、政治犯然り、公王によってぶちこまれた者然り。警備は厳重で、つめているのはおよそ千人、一個大隊並の戦力で構成されている精鋭部隊“獅子”。兵士の殆どはランクDかCで指揮官はランクB-をいく猛者、並の相手ならまず突破不可能である。


 そう並の相手なら。










 カゲマサとミルスは、目の前で転がっている兵士達を見て呟く。


「う~ん、弱すぎない?」

「はあ、確かに弱いですね!この国では精鋭部隊なんですがね?!」


 本当に精鋭なのか?魔法【スリープ】をかけたらすぐ寝たぞ?・・・まあいいか。


「良し、こいつらの息の根を止めておけ。【ボックス】に入れる」

「了解しました!」


 ミルスは、慣れた手付きで兵士の首をナイフで切り裂き絶命させる。俺は、その死体を【ボックス】に収納する。


「さてと、早く行くぞ。隠密系スキルを発動させながらな。俺達の目的は、強力な犯罪者だ」

「はい!・・・あの~、何故犯罪者なんですか?」

「簡単だ。犯罪者は己の欲望や感情に忠実な奴が多い。そこを突けば、簡単に手駒になるかも知れんからな」

「断られたら?」

「悪いが殺すしかない」


 俺は、淡々と述べる。犯罪者の思考については、己の偏見だが何とかなるだろう。断られても、殺して死霊混合人(アンデッドキメラ)の材料にすればいい。・・・・自分で言うのも何だが、随分と人を辞めたものだな。完全に倫理観が欠けている。

 俺は、そう考えながら牢獄内を走る。途中兵士を横切ったが、隠密系スキルのお陰でバレなかった。暫く走っていると、兵士達が会話しているのが見えた。俺は、ミルスに止まるよう指示を出し兵士達の会話に耳を澄ませる。


「なあ、聞いたかよ。最近あの“男殺し”が看守の兵士を殺して最下層の牢に入れられたって」

「ああ、あの“男殺し”か。確か女だろ?残念だな、顔は美女なのに。今頃最下層で、他の囚人達に遊ばれてるんだろうな」

「最下層なら、公王の列に突っ込んだ大男がいたろう。あいつはどうなった?」

「それがさ、最下層担当だった奴に聞いたんだが、他の囚人達相手に大暴れして、ほとんどの囚人を殺したんだとよ」

「ひえ~、恐ろしいな」

「今や最下層にいるのは、“男殺し”。先程言った大男。そして、魔女ミレンダとその取り巻きだな」

「よりによってその三名かよ。当分最下層には、行きたくねぇな」


 ほう、“男殺し”と呼ばれる美女に公王に突っ込んだ大男、そして魔女ミレンダか。


「良し、最下層に行ってみるとしよう」

「はい!」


 俺達は、情報を吐いてくれた二人の兵士を横切り、最下層に進んでいった。数分後、とにかく下へ下へと降りていくと、デカイ扉が鎮座していた。扉の前には、十数人の兵士がたむろしている。鑑定すると、どれもランクCの実力を持っていた。


「ふむ、見張りが厄介だな。一人一人は弱いが、連携して攻撃されると手こずる。ん?弱い?」


 俺は、戦力分析をしていると、もっとも早く片付ける方法があったことを思い出した。そして、兵士達の方に意識を向けて魔力を集中させる。


「【ショックミスト】」


 かつて山城にいた盗賊団に放った魔法を発動させた。すると、兵士達は次々と倒れていき、最後に残った兵士が倒れそうになりながらも、人を呼ぼうと笛を手に取り、


「させないわ!」


 ミルスによって命を刈り取られた。


「よくやった。他に気配は?」

「ありません!」

「ならば、早速入るぞ」


 俺達は、デカイ扉をズズズっと開けた。












◆ローバント牢獄最下層



 突然開き始めた扉を見て囚人達は、頭の中に疑問が沸いていた。今は、飯の時間じゃない。ならば、誰かが処刑されるのか?そんなことを囚人達は考えていた。だが、囚人達の中で三人だけは入ってきた二人の存在に注視していた。






◆“男殺し”の牢屋



 その牢屋には、世間では“男殺し”と呼ばれる女が収容されていた。“男殺し”の回りには、男囚人の死体が転がっており、他の女囚人は牢屋の端で震えている。

 “男殺し”は、入ってきた二人の存在を見て驚愕した。二人の服装は、マントに仮面と怪しい風体だ。だが、内面は違う。特に、あの茶色の仮面を被った人間、あれは明らかに人間の強さを逸脱しているのだ。直接見た訳では無いが、“男殺し”は数々の戦闘をこなしてきた己の感覚で理解したのだ。

 体格からして男の筈だが、自分の見てきた憎き男とは違うオーラを出していた。そんな人物に“男殺し”は、興味を抱いた。




◆大男の牢屋



 オレンジ色の逆立った髪型の大男は、二人の存在を見て激しい喜びを感じていた。大男は生粋の戦闘凶であり、強者との戦いのためならば国にも喧嘩を売る程である。しかし、幾ら強くても生物は生物、疲れが出たところを捕縛されローバント牢獄に収容された。

 ローバント牢獄での生活は、大男にとって退屈そのもの。自分の回りにいた囚人達は、自分が相対した相手より弱かった。脱獄しようにも、牢屋は自分でも壊せない固い金属で出来ているので出来なかった。

 そこに現れたのが謎の二人組、あの二人からは自分と同等以上の力を感じるのだ。ならば、挑まなければ後悔するに違いない。そう、大男は考えていた。




◆魔女ミレンダの牢屋



 魔女ミレンダ、三十年前に農民を騙して己の魔法実験の被験体として、何百人も殺害した危険人物。しかしそれは過去のこと、今では六十過ぎの老婆になっていた。だが、それでも魔法の腕は健在であっという間に一牢屋のボスに君臨している。

 そんなミレンダだが、二人の存在を見て最初は大した奴では無さそうと感じていたが、偶然持っていたスキル《魔力視》を発動させ、恐怖した。どこぞのハイサキュバスのように吐かなかったのは、彼女の意地だろう。あの茶色の仮面の人物は、自分よりも膨大な魔力を有していたのだ。自分と例えるなら、ゴブリンとドラゴンぐらいの差があるのである。

 しかし、それと同時に憧れた。自らも魔法の実力を高めるために、幾多の人体実験を繰り返してきたが叶わなかった。あの人物ならば、自らの魔法を高みを見せてくれるかも知れない。


 ミレンダは、本気でそう考えていた。


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