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潜入と手駒集め①



 【グループフライ】でフリン公国首都ツンドルンに向かっている俺とミルスは、前方に石の壁によって守られている街を見つける。


「もしかしてアレか?」

「はい!あれが首都ツンドルンです!」


 なるほど、ならば手前で降りておこう。俺は、門から見えない位置に降下し魔法の効果を消す。降りた俺達は、門に目をやる。


「ふ~ん、意外に人並んでるな」

「カゲマサ様、あれは恐らく公王への賄賂、献上品の荷物を運んでいるのです!」


 賄賂ねぇ。そういえば、カイからの報告にあったな。それか。


「カゲマサ様、どうやって入りますか?!」

「まともに入るつもりはない。いきなり仮面をつけた二人組なんか入れてくれるわけ無いだろう。プーリ侯爵領は例外だが」


 結構アッサリ入れたからな、あそこ。


「さて、さっさと行くぞ。え~っと」


 俺は、【ボックス】から魔法書を取り出しペラペラとページを捲る。そして、


「お、これならいけるかな?【カモフラージュ・ダブル】。・・・おお!ミルス、いるか?」

「は、はい!」


 魔法を発動させると、俺とミルスの体が透明になり見えなくなった。


「良し、後は隠密系のスキルを発動させろ。一先ずは、それで兵士の目を誤魔化すことは出来るはずだ」

「了解です!」


 そして、隠密系のスキルを発動させた俺達は、壁を越えてツンドルンに侵入を果たした。











 首都ツンドルン。先代公王の代では、活気があり非常に栄えていた街だった。だが今は、


「道を通る人一人もいない、寂れに寂れてるな」

「はい・・・、くっ」


 ミルスは、悔しげに口を歪ませ歯ぎしりしていた。よっぽど悔しいようだな。


「スラムには、小さい子供が沢山いるな。恐らく孤児だろう。それにチンピラが多数、か」


 実際に路地裏には、六歳程の子供が座り込んでおり、更に奥の方には数人のチンピラがたむろしていた。


「・・・カゲマサ様、これからどうしますか?」

「手駒を増やす。今は手が足りん」

「手駒、ですか?あのアンデッドだけでも」

「いや、あの死霊混合人(アンデッドキメラ)は人外過ぎる。街中で動くのに不向きだ。あれは、万が一の戦術兵器程度に思っておけ。今は、手頃に動かせる鉄砲玉が必要だ」

「鉄砲玉?あ、は、はい!では手駒はどこで手に入れるのですか?!」


 その質問に俺は、無言で目を向ける。そこには、数人のチンピラが。


「ま、まさか!」

「ちょっと、ねぇ?」


 俺は、ニィっと悪い笑顔を浮かべて、チンピラに向けて動き出した。











 数分後。


「あ、あが・・」

「た、助け・・・!」

「し、死にたくねぇ・・・・!」


 俺達を見てナイフで脅しながらカツアゲしようとしたチンピラには、金の代わりにパンチをくれてやったら上半身が吹き飛ばされていた。それを見た他のチンピラ達は、皆怯えて逃げ出そうとしてミルスに回り込まれた。そこに俺が、もっと手加減してチンピラ達をなぎ倒した。そして今、俺はチンピラのリーダーに尋問をしようとしていた。


「おい、少し質問をする。答えろ」

「わ、分かった!分かったから、殺さないでくれ!」

「答えてくれたら、この場から立ち去っていいぞ」


 その言葉にチンピラリーダーは、ホッと息をつく。


「それじゃあ質問するぞ。このツンドルンで、一番デカイ事件を起こした強い犯罪者はいるか?」

「は、犯罪者?」


 チンピラリーダーは、一瞬迷うような素振りを見せ口を開く。


「・・・今から三週間前ぐらいに、公王のパレードに一人で突っ込んだバカがいた。理由は簡単、強い奴と戦いたいから、だってよ」

「ふうん、他には?」

「ああ、後は」


 その後、チンピラリーダーから情報を全て聞いた俺は、チンピラリーダーを掴んでいた手を離す。


「良し、質問は以上だ」

「な、なら!」

「はいはい、早く立ち去れ」


チンピラリーダーは、慌てたようにその場から走り去る。そして俺は、そのチンピラリーダーの背中を見ながら、


「【デス】」


 ワイバーンに放った即死魔法を発動させた。すると、チンピラリーダーは糸の切れた人形のように崩れ落ちる。

 俺は、立ち去っていいって言っただけで殺さないとは言ってないからな。

 俺の行動に驚き怯えるチンピラリーダーの手下を俺は見る。


「さて、お前らもさっさと始末しよう」

「ま、まって」

「い、嫌だ!」

「く、来るな!」


 そんなチンピラ達の声など意に介さず、【デス】を放ってチンピラ達を始末した。そして、死体を【ボックス】にしまうと、


「ミルス、行くぞ」

「え?どこにですか?」

「ああ、ツンドルン最大の牢獄・・・確かローバント牢獄、だったかな。そこに行く」










 とある一室、そこには公王の側近である魔導士ジメイが、ある装置を弄っていた。後ろには、二人の男が佇んでいる。だが、その目には意思を感じられない。ジメイが弄っている装置は、何本ものチューブに繋がれた透明なガラスの玉にどす黒い液体が入っている。


「ふむ、やっと45%か。まだだ、これでは足りん。これでは、まだあの方の再臨には到底足りん」


 ジメイは、ブツブツと独り言を話していた。


「仕方ない、私への疑惑が増えるがスラムのガキ共を拐ってくるか」


 ジメイは、納得したように頷くと部屋に飾られている黒い目が描かれている水晶に深々と一例する。


「全ては、あの方の為に」


 その時、水晶に描かれている黒い目が、怪しく光った。


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