報酬の件
少し短いかな?
カリウス・プーリは、暫く泣きわめいた後、落ち着いたのかこちらに振り向いた。
「・・・もしや貴殿らが我が娘を助けてくれたのか?」
「まあそうですね。成り行きで」
何やら確認してきたので素直に答える。発見したのだって偶然だし、助けたのだってこちらに利益があると気まぐれに判断したからだ。嘘は言ってない、よな?
「そうか、・・・礼を言う。お陰で娘が盗賊共に汚されずに済んだ」
「どうも。あ、そういえば娘さんから報酬を頂けると伺ったんですが?」
「報酬か。うむ、私の権限の及ぶ限り叶えよう。金か?爵位か?好きなものを言うといい」
「ほ~、太っ腹ですな。仲間と相談するので、少々お待ちを」
俺は、そう言ってアンデッド三人組を呼び寄せる。そして円陣を組んで相談を始めた。
「さて、報酬だがどうする?俺は、知らないモンスターの魔石があれば確保したい」
「私は・・・・、拠点が欲しいですね。フリン公国の現体制を変えるなら、少なくない時間を要しますから」
「俺は~、えっと、酒ですかね?最近飲めて無いんで」
「次は私ですね!私は、今のフリン公国の情報が欲しいです!」
俺ことカゲマサはモンスターの魔石、カイは拠点、ロンドは酒、ミルスは国の情報。ふむ。
「何か俺とロンドが、自分の欲望を優先しているような感じがして、気持ち悪いな」
「ちょ、カゲマサ様。俺を巻き込まないでくだせぇ」
「いや、悪い。それよりアンデッドって酒飲むのか?味わからねぇんじゃないの?」
「いや、味覚はありますぜ?この前、カゲマサ様の奴隷であるマヤさんから弁当渡されたんですが、旨かったですよ」
何だって!?アンデッドって味覚あるのか!?・・・いや、まて。ここは異世界だ。俺の常識や知識が通じるとは限らないし、様々なイレギュラーが発生しても不思議じゃない。
「そうか、じゃあ頼んでみるか。お前達は、待機しておけ。何時でも動けるようにな」
「はっ」
「了解でさぁ」
「分かりました!」
俺は、先程話した報酬をカリウス侯爵に話す。
「なるほど。魔石に拠点となる場所、酒、我が国の情報、か」
「ええ、暫くはこの国に滞在することになりますから拠点があれば良いし、我々傭兵にとって情報はいくらあっても困りません。酒と魔石は、まあ道楽ですね」
「ふむ、よかろう。拠点なら、この街の高級宿の一室を使うと良い。資金はこちらが負担しよう。情報は後にして、酒と魔石は信頼できる店を紹介する。紹介状は、後で渡すので待ってもらいたい」
「分かりました。それで構いません。あ、契約書をお願いします」
「む、よかろう。おい」
カリウスは、部下に目を向けると、部下は退室した。そして、暫くすると戻ってくる。手に契約書を持って。カリウスは、その契約書に懐から出した判子をポンッと押した。
「良し、これで契約成立だ」
「ありがとうございました。では我々は、その宿とやらに行きますね」
「うむ、ではこの文を持っていくが良い」
俺は、カリウスが差し出した一通の封筒を受けとる。
「事情を書いたものだ。案内も付ける」
「重ね重ねどうも」
俺は、天井を見ながら感謝を伝える。こうして俺達は、案内の人に連れられ宿に向かった。
カゲマサ達が、部屋から立ち去って暫くすると、天井から一人の男が出てきた。
「・・・どうだ?」
「・・・・実力は間違いないかと。現に奴は、私に気付いておりました」
「お主程の者が勘づかれるとは・・・・」
男は、カリウス配下の密偵である。それも、配下の中ではトップの実力を持つ強者だ。そこに別の部下が、今まで黙っていたカナベール令嬢に話しかける。
「カナベール様、あの者達は信頼できるのでしょうか?途中で裏切られたら」
「大丈夫よ。私が見た限り、報酬さえ貰えれば仕事はやり遂げるタイプだから。あの方々は」
「ふむ、カナの観察眼は無視できんな。・・・では、奴等も参加させるか」
「はい、あの方々が味方なら我々の願いも」
「我々の願い、つまり・・・革命ですね?」
そこに別の声が響く。全員がそちらに振り向き、頭を垂れた。
「お早いお着きで、フィナロムス殿下」
「話は聞きました。いよいよ準備が整う頃合いですね?カリウス」
「ははっ、同士も着々と集まり、今や革命軍は万を越します。皆フリン公国の為にと。うれしい限りです」
「後は、カゲマサ様方をお迎えすれば革命の成功に一歩、いや二、三歩進むでしょう」
「そうですか。・・・いよいよ戦うのですね、兄と」
「フィナロムス殿下。確かにあなた様の兄君、ハマル殿下は昔はやさしいお方でした。しかし、今やハマル殿下は愚王と化しています。今この国を背負えるのは、貴女しかいません」
「ええ、わかっております。・・・わかっております」
「・・・殿下」
「・・・・少し風に当たってきます」
フィナロムスは、部屋から退室する。退室する時のフィナロムスの背中は、酷く沈んで見えた。
「カナ、側にいて差し上げなさい」
「分かりましたわ、お父様」
カナベールも部屋から退室する。残るは、密偵ともう一人の部下だけだった。
「フィナロムス殿下には、辛い役目を押し付けてしまったな」
「いえ、カリウス様。フィナロムス殿下も覚悟は出来ていたはずです。今から変えようとしても、殿下は拒否するでしょう」
「・・・そうだな。良し、我が娘を救ったあの傭兵達への報酬をくれてやらんとな!」
カリウスは、早速作業に取り掛かるために侯爵領の城に戻る準備を始めた。そこであることを思い出す。
「そういえば、あのカゲマサとやらの隣にいたあの男・・・どこか、カイ・ザーバンスに似た雰囲気だったが、気のせいか?」
カリウスは、コキリと首を傾げた。
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