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領都に行こう



「で?そのプーリ侯爵領とやらには、どうやって行くんだ?」

「あ」


 おい。「あ、」ってまさか考えてなかったのか?まあ、馬車行っちまったししょうがないけどよ。


「そ、その、実は先に馬車を行かせてしまい」

「と、徒歩になります」


 う~む、徒歩か。


「徒歩だとどのくらい掛かるんだ?」

「・・・およそ1.2日程です」


 1.2日か。時間が掛かりすぎる。・・・少し魔道書で便利な魔法調べてみるか。

 俺は、【ボックス】から邪神からもらった魔道書を取り出すと、ページを捲り始める。捲り始めてから数分後、お目当ての魔法が見つかった。


「カナベール令嬢、プーリ侯爵領は何処にある?」

「はい?プーリ侯爵領なら、ここから道沿いに真っ直ぐ行ったら着きますが」

「ならばいい」


 俺は、早速魔力を込め始める。十分込め終わると、魔法を発動させた。


「【グループフライ】」

「え?ちょ、わわわ、体が浮いて!?」


 カナベール令嬢は、突然体が浮き始めたことに驚き、狼狽えた。ダッチムも同様。カイ達は、普段からカゲマサのやらかしを知っているので、呆れたような感じになっている。


「おい、本当にあっちなんだな?」

「・・・は、はい」


 カゲマサは、再度確認してきたのでカナベール令嬢も頷く。


「良し、行くぞ」


 そのままカゲマサ達は、凄まじい速度でプーリ侯爵領に飛んでいった。










 一方のプーリ侯爵領、プーリ侯爵は代々公王を補佐する一族であり、国内では公王家を除き有数の力を持つ有力な貴族である。そんなプーリ侯爵の本拠地、領都マーシェはとんでもない情報を聞いてしまった。



「何だって!?我が娘、カナベールが盗賊の囮となっただと!?それは真ですか!?フィナロムス殿下!!」

「・・・はい」


 現公王の妹、フィナロムス・フリンから話を聞いたのは、プーリ侯爵家当主であるカリウス・プーリ。がっしりした身体を持ち、オールバックの髪型にカイゼル髭を生やした中年男性である。カリウスは、明るい赤髪を揺らしながら問い詰めた。


「く、糞共がぁぁぁ!!愛しのカナベールに手を出すなど万死に値する!!おい!領軍を出せ!!いや、私が行く!私自ら葬ってくれるわぁぁぁ!!」


 カリウスは、優秀な男である。それと同時に娘を大事に思う親心も持ち合わせている。


「か、閣下!落ち着いてください!今はやたらと軍を動かせば、公王に目をつけられて」

「黙れぇぇぇ!!娘が襲われているのに、見逃す親がいるかぁぁぁぁ!!」


 ・・・・いや、子煩悩と言うべきか?部下が必死に静止しようとするが、カリウスは聞く耳を持たず部屋から出ていこうとする。そこに、一人の部下が駆け込んできた。


「も、申し上げます!プーリ侯爵閣下!」

「うるさぁぁぁい!!私は今から娘を助けにいくのだ!!その他のことなど、知ったことかぁぁぁ!!」

「で、ですが!そのカ」

「どけぃ!!」

「ですから!!そのカナベール令嬢がお戻りになられました!!」


 その言葉を聞いた一同は、一瞬静かになる。


「・・・それを早く言わんかぁぁぁ!!今行くぞ我が娘よぉぉぉぉぉ!!」


 カリウスは、凄いスピードで部屋から飛び出していった。部下達は、フィナロムス・フリンに目を向ける。


「・・・殿下も参られますか?」

「お願いします」

「畏まりました」










 時は少し遡る。



 魔法、【グループフライ】で空を飛行しているカゲマサ達は、一つの都市を発見する。


「おい!あれか!?」

「は、はいぃぃぃ!」


 カゲマサが質問してカナベール令嬢が答える。だが、答えるカナベール令嬢の顔は飛行スピードのせいで、あられもない顔になっていた。


「あ~、あれは侯爵令嬢に同情するね」

「まあ、カゲマサ様の魔法は凄いからな・・・」

「私は、どうでもいいね」


 アンデッド三人組は、慣れたように話している。


「ぐ、グオォォォ!!何のこれしきぃぃぃ!!」


 三人組の後ろでは、ダッチムが飛行スピードによる突風に耐えていた。

 暫くして、一行は降下。領都の門の前に着地する。


「ふう、着いたな。良し、人数確認するぞ。カイ、ロンド、ミルス、カナベール、ガッチム、全員いるな?」

「はっ」

「へい」

「はい!」

「は、はいぃぃ」

「は、はい。って!私はガッチムでは無い!ダッチムだ!」


 若干一名抗議した者がいるが、無視する。すると、門に駐屯していた兵士達が駆け寄って来た。


「おい貴様ら!一体何処から・・・ってカナベール侯爵令嬢!?盗賊に襲われていたのでは!?」

「そ、それは・・・」


 駆け寄って来た隊長らしき人物に、ここまでの経緯を話す。


「なるほど、そんなことが・・・・失礼した。貴殿らが救出してくれた恩人と知らずに貴様などと」

「いや、気にするな。こちらとしても偶然だったからな」


 隊長らしき人物は、カゲマサ達に謝罪する。カゲマサは笑って許した。


「それではカナベール令嬢。私は、この事を侯爵閣下に報告してまいります。汚いかとは存じますが、衛兵駐屯地に留まって頂きますがよろしいですね?」

「構わないわ」

「はっ、ありがとうございます。おい!カナベール令嬢御一行をご案内しろ!」











 それからというもの、俺達は門付近にある衛兵駐屯地に待機することになった。


「カゲマサ殿」

「ん?」

「改めて礼を言わせてください。私達を救って頂きありがとう。貴殿方のお陰で、こうして無事戻ってくることが出来ました」

「気にするな、偶然だったからな。ああ、後できっちりお代を頂くぞ?」

「わかっております」


 そんな会話をしていると、ドタドタと足音が近付いてきた。敵か?そう思い、武器に手をやり


「カナァァァァ!!!!無事かぁぉぁぁ!!??」


 ・・おっさんが、扉を突き破りカナベールに抱きついた。


「ちょ、お父様!皆が見ています!お控えください!」

「う、う、グスッ。私は、私はなぁ。てっきりお前が盗賊の毒牙に掛かって死んでしまったのかとぉぉぉ!!うぉぉぉぉん!!」

「大丈夫!大丈夫ですから!」


 ・・・何だこの光景は。


「・・・おい、カイ。これは」

「彼はカリウス・プーリ。プーリ侯爵家当主であり、えっと、娘には甘すぎる貴族、だったかと」

「・・・・・ああ」


 要するに子煩悩という訳か。

 その後、暫くカリウスはカナベールのお腹でオンオン泣いた。泣き終わるまでに少しと気を要してしまった。


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