盗賊全滅、令嬢の依頼
「ひ、ヒャアアアアア!!??」
「な、だ、誰だテメェ!?」
「うるさい。【デス】【デス】」
盗賊達は、あからさまに狼狽えて叫んだが、お構いなしに【デス】を発動させる。すると、二人の盗賊は意図が切れた人形のように崩れ落ちた。
「ひっ!ば、化け物だぁ!」
「落ち着け野郎共!」
盗賊達が狼狽える中、頭目らしき男が叫ぶ。
「奴は、魔道士だ!接近戦なら勝てる!殺れ!」
それを聞いた盗賊達は、恐怖で顔を引きつらせながら武器を構えて突撃してくる。
「食らえぇぇ!!」
「死にさらせぇぇ!!」
うわっ、近くで見ると何処ぞの世紀末を思い出してしまう。まあ、いいや。始末始末っと。
俺は、指先に魔力を込めて新魔法を放った。
「えっと、【ダイヤモンドダスト】」
唱えた直後、猛烈な吹雪が吹き荒れて、あっという間に盗賊達を氷像に変えてしまった。
「あらまぁ、強力。ただ、魔力消費も少なくないな。【インフェルノ】」
氷像を見ながら考察した俺は、止めと言わんばかりに火魔法を放つ。直後、氷像は木っ端微塵となった。
「あ、あああ」
「ば、化け物だぁぁ!!」
化け物はさっき聞いたよ。もうちょっと言葉のレパートリーはないか?
そう思っていると、生き残りの盗賊達の間から、盗賊の頭目が強姦されかけた赤髪の女性を掴みながら、前に出てきた。
「おい貴様!この女がどうなってもいいのか!?」
あ、人質にする可能性忘れてた。うっかりうっかり。女は、あ~怯えてるね。
「殺されたくなくば、そこにうつ伏せになれ!魔法を使えば即殺す!」
う~ん、正直言って王女がいればそれでいいが、鑑定したら侯爵令嬢だったからなぁ。見殺しにしたら恨まれるか?いや、盗賊達が殺したってことにしたらいいか。良し、助けられれば助けるぞ。
俺は、最悪公爵令嬢を見捨てることにして頭目の言葉を無視して歩き始める。
「は!?お、おい!動いたら女を殺すんだぞ!?」
「うん、そうだね」
「だったら、止まれよ!お前は女、いや侯爵令嬢がどうなってもいいのかよ!?」
「いや~?別に〜?」
「い、イカれてんのかお前!チッ!お前ら!コイツを、何!?」
頭目が後ろに振り向くと、部下の盗賊達が一人の人間に殺されていく風景がそこにあった。
「や、止め、ギャァァァァァ!!」
「ま、待て。話せばわかる。交渉をぐはっ!」
「嫌だぁぁ!!死になくねぇ!!」
阿鼻叫喚。そんな言葉が相応しい光景だった。
「な、何が?」
「お前なぁ。俺が一人で来るわけないだろうが」
因みに、一人の人間の正体はミルス・ドウガーである。カイとロンドは、後ろでムキムキの男性に肩を貸していた。
「く、糞がぁぁ!!もうキレたぜ!この女を殺す!」
「殺ってみろ!出来るものならなぁぁ!!」
頭目は、頭がおかしくなったのか、自らの盾でもある人質を殺すべくナイフを振り上げる。だがそれは、殺すことは叶わなかった。何故ならば。
「がぁぁぁぁぁ!?」
ナイフを持つ頭目の腕が、斬り飛ばされていたからだ。頭目の後ろには、短剣を持ったミルス・ドウガー。どうやら盗賊達の始末は終わったようである。
「ナイスだ、ミルス」
「ありがとうございます!」
ミルスは、元気よく返事をする。俺は、軽く手を振って頭目の目の前まで歩いた。女は、ミルスが回収している。
「さ~て、コイツをどうするかねぇ」
「ひっ!」
頭目は、怯えた表情で俺を見ると、土下座した。
「ま、待ってくれ。俺はただ人に頼まれただけなんだ。他のやつらは、積極的だったが俺は反対だったんだよ」
「じゃあ、止めろや」
「と、止めようとしたんだよ!だが、場に流されて・・・・。そ、そうだ!今まで溜めてきた宝全部やるよ!どうとして構わない!だから俺の命だけは!」
俺は、冷めた目で頭目を見ると、ため息を出す。
「じゃあ、お前に頼んだ人物は誰だ」
「え!?そ、それは」
「言わなきゃ殺す」
「ヒィィ、わ、わかった!話す、話すから!・・・俺達に依頼したのは、確か黒いローブを着た男だ!多分魔道士だ!」
「ほう」
「ほ、ほら言ったぞ?」
「ああ、わかったわかった。早くこの場から立ち去れ」
「あ、ああ」
頭目は、いそいそと走り出す。そして、その背中が小さくなったところで俺はというと。
「【ホーミングボム】」
魔法を発動させた。手から発射された光弾は、真っ直ぐ頭目の元に飛んでいく。何やら、悲鳴が聞こえた瞬間爆発した。
「う~む、不安だからもう三発撃つか」
そしてもう三発の【ホーミングボム】が放たれ、頭目のいた場所に撃ち込まれる。
「あ、あの~」
「ん?どうしたミルス」
「い、いや、さっき助けるみたいなこと」
「ああ、俺は立ち去れって言っただけで、別に殺さないとは言ってないぞ?」
「そ、そうですか」
「そうそう、嘘はついてな〜い」
さて盗賊達を全滅させたので、人質となっていた侯爵令嬢とムキムキ男の元へ歩いていく。
「やあ、危なかったね。お嬢さん?」
「あ」
侯爵令嬢は、こちらに気付て駆け寄ってくる。ムキムキの男性も一緒にだ。
「この度は、救って頂きありがとうございます。私は、カナベール・プーリ。プーリ侯爵家長女でございます」
「私は、元近衛騎士団騎士、ダッチム・トーパーであります。お見知りおきを」
「え?ガッチム?」
「ち、違います!ダッチムです!」
「そうか、よろしくな。カナベール令嬢とガッチム騎士殿」
そう言うと、カナベール令嬢は困ったような表情になり、ガッチム、いやダッチムは俯いた。
「コホン、ところで貴殿方は一体何者でしょうか?・・・・まさか、公王の」
「いや、俺達は・・傭兵団だ」
俺は、咄嗟に言う。冒険者じゃなくて傭兵団のほうが革命に参加しやすいと判断したのだ。すると、カナベール令嬢はしばらく考え込み、顔をあげる。
「では、私達に雇われませんか?報酬は言い値の額を約束しましょう」
「か、カナベール令嬢!?」
「構わないわダッチム。責任は、私が取ります」
「は、ははっ」
やっぱりな。これで、コイツらの拠点に忍び込める。
「少し相談させてくれ。オーイ、集合」
すると、カイとロンド、ミルスが駆け寄ってくる。そして円陣を組むと、小声で話し始める。
「と言うわけで、俺達は傭兵団として動く。いいな?」
「構いません」
「いいですぜ」
「了解です!」
「恐らく、カナベール令嬢は護衛を頼むだろう。一先ずは、奴等の拠点に忍び込むんだ」
「「「了解です」」!」
相談、と言うより方針を決めてカナベール令嬢に振り向く。
「わかった、雇われよう。ただし、契約書を書いてもらう」
「わかりました。我がプーリ侯爵家の治めるプーリ侯爵領にて用意しましょう」
「違えるなよ?違えたら、貴様らを殺す」
「わかっております。私達はまだ死ねませんから」
こうして、俺達は傭兵団として潜り込むことに成功した。
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