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閑話 聖邪の神々②



 それはダンジョンバトルから少し時を遡る。

 カゲマサが初めて邪神に会った空間で、聖神と邪神はある光景を目にした。


「・・・・・っ!!!!」

「ぶっ・・・あっはっはっはっは!!カゲマサ君とうとう殺ったねぇ~。特別なスキルを持ってなかったとはいえ、まさか勇者を倒しちゃうなんてねぇ~?」


 そう、カゲマサが仲間の仇討ちで勇者を倒したところである。聖神は、ワナワナと体を震わせて怒りを抑えようとしていた。邪神は、そんな聖神の顔を覗き込み煽る。


「ねぇ、どんな気持ち?やっとランクA相当に育った勇者を元勇者候補に倒されるって、どんな気持ち?ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ、答えてよ聖神ちゃ~ん?」

「・・・っ!!・・・あ、あれは未熟者です。勇者特有のスキルを持てず、ただ力が強いだけの者。おまけに、物語の主人公になった気分で浮かれていたのでしょう」

「ふぅ~~ん、冷たいねぇ。召喚していてそれは無いんじゃないの?」


 聖神の答えに邪神は、詰まらなさそうに言うとカゲマサの行動に目を光らせる。


「お!【アンデッド創造】か!こりゃあ有力な戦力確保の手段を得たね?カゲマサ君!」

「はい?・・・勇者候補がアンデッドを使役って、無いでしょう」

「え?今さらでしょう。もう勇者じゃないし」

「というか【アンデッド創造】があるのなら、あの勇者をアンデッドにしたらいいのに」

「あ~、さっき心読んだけどやりたくないらしいよ?自分の仲間を殺した張本人を側に置きたくないって」

「はぁ、そうですか」

「そうそう、って仕事の時間じゃん!“創造のジジイ”に殺される!」

「殺されたらいいのに」

「なんだと!」


 二柱の神々は、一旦会話を止めて仕事に戻った。









 仕事を終えた二柱の神々は、再びカゲマサの様子を見ることにした。ダンジョンバトルの時である。


「うんうん、今年の新人は優秀だねぇ」

「ちっ、なんでこんなに強者がいるのですか。一人ぐらい寄越しなさい。優秀な勇者に改造します」

「止めてよ!僕の子供達だよ!?手を出したら僕が黙ってないよ!?」

「・・・・・分かっていますよ」

「今の間は何だよ」


 そこから暫く観戦し、終盤戦に突入する。


「およ、オリハルコンゴーレムか。中々の物を出してきたね。いいよユラちゃ~ん」

「オリハルコンゴーレム、ランクA+のモンスター。暴れれば、小国をいともたやすく壊滅に追い込む怪物、ですか。よくそんなものを」


 そして、戦闘の末にオリハルコンゴーレムはカゲマサによって破壊された。


「お~、カゲマサ君凄いねぇ~。彼、もう上級魔人に進化したんじゃない?」

「くっ、これ程の人材ならば勇者でもやっていけたのに!」

「諦めなよ。もう彼はダンジョンマスターなんだから〜」

「いや、貴方が横取りしたせいですからね!?貴方の!!」


 そして、カゲマサ達に商品を譲渡した後、聖神が突然立ち上がった。


「ん?どうしたのさ」

「勇者召喚の要請がきたわ」

「ありゃ、どこから?」

「エルザム神聖国」

「お、君の信者達がいる所じゃん。よかったね」

「・・・」

「あれぇ、嬉しくないの?」

「・・・今のエルザムは正直見てられません。私の名前を騙り周りの国々を攻め、国内では聖職者達が横暴の限りを尽くしている国なのですよ?暴行、強姦、差別、その他諸々。見ていて吐き気がします」

「ふぅ~ん」

「はぁ、一体どうしたら。勇者を送っても酷い目に会うのは確実・・・・ぶつぶつ」


 聖神は、頭を抱えて悩む。それを見ていた邪神は、一つの考えが浮かんだ。


「なあ、勇者って生物でないとダメか?」

「え?」

「これ見てくれ」


 邪神が取り出したのは、一つの石。聖神は、石を受けとると驚愕に満ちた表情を浮かべた。



・勇者の石(笑)

 勇者の称号がついた只の石。所持していると勇者になるとかいうものでもない、本当に普通の石。


「これは・・」

「いや、やつらは勇者の称号のついた奴が欲しいんだよね?なら、これでもいいと思うなぁ」


 邪神は、ニヤニヤしながら提案する。対して聖神は、数秒思案したあと答えを出す。


「・・・確かに、今まで好き勝手やってきた彼等には、いいお灸かも知れませんね。気に食わないですが、貴方の案でいきましょう」


 そう言いながら聖神は、勇者の石(笑)を魔法陣に置き、召喚者の元へ転送した。


「よし、これで一件落着!」

「そうですね・・ん?また勇者召喚要請ですか。これは・・」

「お、ここは」


 二柱の神々は、勇者召喚要請の出た国の名前を見て邪神は面白そうに、聖神は嫌そうに顔を歪めた。

 その頃の地上では、エルザム神聖国の勇者召喚で只の石が召喚されたことにより、国主である教皇は酒を飲みながら発狂。上層部も大混乱に陥ったそうな。


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