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賞品と依頼



「そんな・・・・・・」


 コアを砕かれたユラは、その場で膝をつき項垂れた。


『さて、生き残ったダンジョンマスター達を転移させるよ~!そいっと!』


 黒い仮面を顔の上半分に取り付けている少年、邪神は指を動かす。すると、ダンジョンマスター達の目の前の光景がパッと変わり、ロワン、ナナ、リザンのいる空間に変わった。


『よし、皆来たね?まずは、このお三方に感想を聞こうかな?最初は、リザンから!』

「はっ」


 邪神から指名されたリザンは、ゆっくりと立ち上がった。


「まずは、皆の者ご苦労である。ワシが言いたいのは、・・・・リューゼよ」

「へ、へい」

「何故、大将たるお主自ら出向いたのだ?」

「あ、いや、爺様。俺はただ」

「言い訳無用。本当のことを話すのじゃ」

「・・・面白そうだったからです」


 上司であるリザンの言葉に逆らえなかったリューゼは、理由を白状した。因みに、白状したリューゼは酷く震え声だった。


「はあ~、全くワシの派閥は何で一人で突っ込むのか。少しは、自分の欲を制御出来ぬのか?」

「うっ」

「まあよい。帰ったら鍛え直しじゃ」

「ゲェェ!!??」


 鍛え直しという言葉にリューゼは、酷く怯えた表情を浮かべて、リザンにすがり付く。


「い、いやいや爺様よぉ。俺は十分に育ったから大丈夫だって!」

「黙れぃ!何のために部下がいると思うておるのだ。ちょうど良い、後で部下の重要性を叩き込んでくれるわ!大体お主は」

『え~、長くなりそうだから次いくよ?次は、ナナお願いね~』

「承知しました、お父様」


 リザンの説教が長くなりそうなので、邪神は無視することにした。そして、ナナにバトンタッチする。


「さて、まずはカゲマサ。勝利おめでとう」

「あ~、ありがとうございます」


 カゲマサこと俺、黒木影正はとりあえずお礼を言う。


「私からは特に言うことはないわ。貴方自身はどうなのかしら?」

「えっと、戦力の準備が不足していたかと」

「・・・あれで?」

「はい、安心して戦いに臨むならもっと戦力を用意すべきでした」


 俺は、自身の意見を正直に述べる。もっと、質の良い戦力を用意していれば、屋敷内に連れていける戦力も準備出来た。だが、ナナは別のことを考えていた。


(・・・あの戦力なら十分にいけると思うんだけど。私が可笑しいのかしら?)


 事実、カゲマサが今回連れていた配下にはランクBクラス相当のモンスターが沢山存在している。正直言って、新人がこれ程の戦力を集めれるのは異常だった。


「そう、ならもっと精進なさい」

「分かりました」


 ナナは、とりあえず精進するように伝えて、カゲマサは了承した。


『終わったかな?じゃあ次は、ロワンだね!』

「御意」


 最後に大魔王と呼ばれるダンジョンマスター、ロワンが立ち上がり、アルカとユラを見据える。そばには、パンドラッチも控えていた。


「ふむ、アルカよ。先の勝利、見事であった」

「はっ」

「だが、リザン同様最前線に立つのはいただけない。部下を使い捨てにすればよかったものを」

「・・・・はっ」

「次からは気を付けよ。さて、ユラ」

「は、はっ!」


 名前を呼ばれたユラは、ビクッと肩を震わせながら返事をする。


「貴様には失望した。あれだけの数を用意しながらこの体たらく。恥を知れ!」

「・・・はっ」

「ふん、何故もっと早い段階で大軍を侵入させなかった?勝利のためならば、部下だろうと使い捨て、如何なる手段を用いて勝利せよという教えを忘れたか!」

「・・・・」


 ユラは、うつむいたままだ。だが、その目には怒りが宿っていた。


(部下を使い捨て?冗談じゃないわ!私にとって一番の理解者、そして仲間を殺すような真似をしろって言うの!?この糞ジジィが!!)


 最早そこには、尊敬の欠片もない。ただただ、憤怒の感情だけだ。


(そもそも、他のダンジョンマスター達を手下にしたのだって、自分の部下に被害がいかないようにするだけだってのに!)


 仲間を守る盾として抱え込んだ他のダンジョンマスター達をは、あっけなく敗れていった。


「ふんッ、もう良い。・・・貴様を我が派閥から追放する。二度と大魔王派閥を名乗るでない」

「・・はっ」


 派閥の追放。これは比較的に軽い処分だが、新人にとっては派閥の援助を得られないのはキツイ。


『終わったかな?じゃあ、新人トップ3チームには賞品を用意しているんだ~。今から渡すね~?ちょちょいのちょい』


 邪神からのアナウンスと同時に、アルカとリューゼ、俺の目の前に一つの光る箱が現れた。

 まずは、リューゼが開けると。


「うおお!?何だこれは!?」


 リューゼが取り出したのは、真っ赤に光る大剣だった。《鑑定》する。



・灼熱の大剣

強力な炎を宿す魔剣。魔力を込めると炎を放射することができる。



 お~、魔剣か。結構レアなものだぞ?次に、アルカか。


「これは・・・」


 アルカが手にいれたのは、何やら玉のような品だった。《鑑定》。



・光耐性のオーブ

使うと光属性の攻撃全般に耐性を持つ。



 おお、これがあれば、アルカは光属性の攻撃に耐えれるのか。吸血鬼にとって光属性の攻撃は、天敵だからな。


 おっと、最後は俺か。俺は、ゆっくりと光る箱を開ける。そこには、一冊の本が入っていた。《鑑定》してみる。



・邪神監修!魔法大全

全ての魔法について書かれた本。中には、禁呪と呼ばれる魔法も存在する。



 おお!これは嬉しい!役立つ魔法があれば是非とも使っていきたいな。


「ありがとうございます」

『喜んでくれて何よりだよ~。あ、カゲマサ君。ちょっといいかな?』

「はい?」


 邪神からの頼み?なんだろうか。邪神のことだから、変な依頼じゃなきゃいいけど。


『あのね、ユラちゃんをそっちで預かってもらえないかな?』


 ・・・・は?


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