ユラの最終兵器②
アルカの放った【ダークストラッシュ】は、真っ直ぐオリハルコンゴーレムを貫く。辺りには、衝撃波が発生し、調度品を次々に吹き飛ばしていた。
「やったか!?」
「あっ、おいバカ!!」
すると、不意にリューゼがフラグを立ててしまったので慌てて制止するも、既に遅し。オリハルコンゴーレムは、ゆっくりと立ち上がった。
「な!?何故だ!コアは貫いたはずだぞ!?」
リューゼが、驚きの声を出している最中に俺はゴーレムのコア付近を観察する。そこには、コアの僅か数センチ程度ずれて穴が空いていた。
「少しずれたのか」
「おい、アルカァァ!!何外して、ッ!?」
リューゼが、怒鳴りながらアルカの方に振り向き、目を見開く。そこには、右足の膝から下の部分を失いながら戦うアルカと、アルカと戦うハイサキュバスがいたのだ。
「あのハイサキュバスに邪魔されたようだな」
「チッ!厄介な真似を!」
片足を失ったからか、若干不利そうだ。
「リューゼ、手伝ってやれ」
「は!?良いのかよ!?」
「構わない。それよりも、後ろから邪魔されるリスクを避けたいんだ」
「チッ、判った!じゃあ後で旨い食い物よこせ!」
「判った」
そう言ってリューゼは、アルカの元に駆けていった。
「くっ!」
「どうしたどうした!動きがすっとろいわよ!?」
アルカは、現在ハイサキュバスのキュースの猛攻にあっていた。アルカの右足は、キュースの赤く光る槍によって吹き飛ばされている。再生はできるが、する暇を与えてくれそうにない。
「そらそらそらそら!!!」
「あっ!」
敵の猛攻を凌いでいるうちに、剣が弾き飛ばされ部屋の隅に飛んでいってしまった。
「しまっ!」
「貰った!!!」
今にも槍が、アルカの胸を貫かんとしたその時。
「うぉぉぉりぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
リューゼが、雄叫びをあげながらキュースに体当たりを食らわせた。
「グハッ!?」
キュースは、吹っ飛び壁に激突。気を失ってしまった。
「よう!無事か!?」
「・・あ、うん。ありがとうリューゼ」
「なんでぇ。あんまり嬉しく無さそうじゃねぇか」
「いや、カゲマサ君がよかったなぁって。君は、ガサツそうだから」
「誰がガサツだ!!」
そんな会話をしながら、二人は気を失ってしまったキュースに近づく。
「コイツどうする?またちょっかい掛けられたら、厄介だぜ?」
「そうだね。ここで殺しと」
ドゴォォォォォォォン!!!!!!!
「な、何!?」
「後ろからだ!!」
アルカとリューゼが後ろを振り向くと、壁にめり込みながら項垂れるカゲマサの姿があった。
(・・・・・・いてぇ)
俺は、壁にめり込みながら、先程受けた痛みを考えていた。
(ああ、・・・・いてぇ、・・・・口の中で血の味がする・・・・・息をするごとに肺が悲鳴をあげている・・・・・・感覚からして、肺に骨が何本か刺さったか・・・肺だけじゃないな、全身がいてぇ)
思えば、今までこれ程までに痛みを味わったことはなかった。死霊公の時も、戦闘狂のエリスの際も、勇者の時も。良くて無傷。悪くて軽傷だった。
「・・・・・これが、致命傷、ってやつか」
日本にいた頃は、テレビで資料画像や本人インタビューを見るだけで、実感が湧かなかった。なるほどなるほど、確かに想像を絶する痛みだ。並の人間ならば、あまりの痛みに声を失うだろう。最悪ショック死するかもしれない。
だが、この世界には魔法がある。そして俺には、邪神から戴いた膨大な魔力がある。俺は、魔力の大半の込めて、魔法を発動させた。
「【ヒール】!!!」
その瞬間、俺の体は優しい光に包まれた。そして、全身にあった痛みが急速に引いていく。痛みで悲鳴を挙げていた骨が、肉が、身体が、嘘のように治っていく。光が収まる頃には、俺の体は完治していた。ここまで完治すると、逆に気持ち悪い。
オリハルコンゴーレムは、依然こちらに向かってきている。魔石は剥き出しになったままだ。
「さてと、どうするか・・・・ん?」
俺は、不意に後ろを向く。そこには、自分がめり込んでいた壁がある。たが、壁はひび割れ今にも崩れ落ちそうだ。
「良し」
俺は、オリハルコンゴーレムに向き直る。オリハルコンゴーレムは、拳を振りかぶり殴りかかった。
「【ディメンションムーヴ】」
俺は、空間魔法を使ってオリハルコンゴーレムの背後に転移する。オリハルコンゴーレムは、後ろに振り向き、再び攻撃しようとするが
「【ウィンドスラスター】」
俺の足の裏に緑色の魔法陣が出現、そこから風がビームのように出された。俺は、風が生み出すスピードでオリハルコンゴーレムに突撃する。オリハルコンの剣を、前に突きだして。
オリハルコンゴーレムは、腕を交差させて魔石を守るように守りを固めた。その交差させた腕に突き刺さる俺のオリハルコンの剣。ここからは、魔力の量次第だ。先程の【ヒール】の影響で、魔力の大半は失っているが、まだ魔力は残されている。
するとオリハルコンゴーレムが、僅かに後ろへ退いた。良し、このまま押すぞ!
しばらくオリハルコンゴーレムを押し続けて、オリハルコンゴーレムは、後ろの壁に背をつけた。
「落ちろォォォォォォォォォ!!!」
俺は、残りの魔力を総動員した。【ウィンドスラスター】は、更に威力を上げる。オリハルコンゴーレムの腕もどんどんひび割れ、とうとう砕け散った。同時に背後の壁が砕け散り俺とオリハルコンゴーレムは、大地へと落ちていく。そして、大地へと墜落した。その時には、オリハルコンの剣が魔石に突き刺さり、魔石は真っ二つに割れていたのである。オリハルコンゴーレムは、完全に機能を停止した。
俺は、オリハルコンの剣から手を離すと、そのまま倒れ込んでしまった。
「ダル・・・・」
体が、異常に疲労を感じてしまったからである。魔力切れの副作用か?
俺は、ダルい気持ちに抗いながら、道具創造で魔力ポーションを造り出す。魔力ポーションを飲むと、魔石が回復してダルさが薄れていくのを感じた。
「あ、アルカ達はどうなった?」
俺は、アルカ達の安否が気になって振り向くと、アルカとリューゼが棒立ちでこちらを見ていた。
「おお、無事だったか。・・・・どうした?」
「え!?あ、いや、その。き、傷は大丈夫なのかい?」
「傷?傷なら【ヒール】で治したよ。そっちは?」
「あ、俺は大丈夫だ」
「ぼ、僕の足は再生したから大丈夫だよ」
「そうか。・・・・あ」
俺は、ここで重大なことを思い出した。
「なぁ」
「ん?」
「どうしたんだい?」
「・・ユラの奴は何処行った?」
「「あ」」
見事オリハルコンゴーレム討伐です。
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