ユラの最終兵器①
扉を開けた先には、豪華な玉座に座るユラと赤く光る槍を持つハイサキュバスがいた。後ろには、ダンジョンコアがある。ハイサキュバスと言っても、随分とスレンダーで筋肉質だったが。ウォーサキュバス、といった種族かね?
「・・万の軍と五人衆をはね除けて、よく来たわねアルカ」
「〈五人衆〉?途中出会ったミノタウロスのことかな?」
「ええそうよ。私のダンジョンの幹部のモンスター達、よくも倒してくれたわね?」
「なあ、割り込んで済まないが、そんなに大事なモンスターならダンジョンバトルに出すなよ。・・・あ、俺も言えたことじゃないな」
そういえば俺自身、最高幹部二名、幹部複数送り込んでるじゃないか。
「コホン、さあユラ。貴方の手駒が、そのハイサキュバスだけなら降参しなよ。僕は、さっさと終わらせたいんだ」
ユラは、アルカをじっと見つめて、笑った。だが、それは諦めた者の笑みではない。寧ろ、まだ勝機がある者の笑みだ。
「ふ、ふふふ。諦める?冗談じゃないわ。私はね?貴女を殺すことをずっと待ちわびていたのよ?」
「僕を?」
「そうよ。貴女さえ、貴女さえいなければ私は、一番だった。ロワン様の寵愛も受けられた。私は!」
ユラの口から出てくるのは、アルカへの恨み言と輝かしい未来への羨望だった。だが、俺とリューゼから見たら、
「おい、カゲマサ。これって只の逆恨みじゃねぇか?」
「ああ、うちに攻めてきたダンジョンマスターが言ってたが、ユラはロワンの修行をサボることがあったらしい。更には、ダンジョンの調整も部下に押し付け、自分は宝物を弄っていたそうだ」
「・・・よく新人四位になれたな?」
「殆どが、部下の狩ったモンスター分のDPだってよ。自分を鍛えなかったらしいし。どうりで、ユラからは強そうな気配がしないわけだ。あのパンドラッチってやつの方が実力高そうだったぞ?」
俺は、試しに《鑑定》した。
名前 ユラ
種族 ハイサキュバス
職業 ダンジョンマスター
レベル 21
ランク C
スキル 魅了 闇魔法 魔力障壁
低。部下の方が圧倒的に強いぞ?よくこんなもので生き残れたものだ
「ふー、ふー、お喋りが過ぎたわね。さあ、始めましょう」
「そうだね。けど、そのハイサキュバス一体だけじゃあ勝てないよ?」
「ふふ、こんなときのために召喚しておいて正解だったわ」
ユラはパチンッと指を鳴らす。
すると、天井を突き破って巨大な何かが出現したではないか。
「な!?」
「な、なんじゃこりゃあ!!??」
「・・・・・ッ!?」
出現したのは、全身金色に輝くの巨人。全長二十メートル程で全体的にずんぐりとした体型であった。〈鑑定〉する。
名前
種族 オリハルコンゴーレム
職業 ダンジョンの守護者
レベル 50
ランク A+
スキル
スキルは無しか。スキルありだったら絶望的だったが、何とか行けるかもしれん。
「ふふふ、アハハハハハハハハハハハハハ!!!さあ!アルカ共を皆殺しになさい!!!」
ユラが、今までにないぐらいの興奮具合で命令すると、オリハルコンゴーレムはゆっくりと動き出した。
アルカ、リューゼは、持っていた武器を抜く。俺は、ミスリルの短剣を【ボックス】から取り出し構える。
「おい、ゴーレムの弱点は何だ」
「ゴーレムなら、体のどこかにコアとなる魔石があるはずだよ?でも、オリハルコンに傷をつけるなんてことは容易じゃない」
「へっ!そんなものやってみなけりゃあ判らねぇだろうが!!!」
リューゼは、大剣を構えて跳躍しオリハルコンゴーレムに斬りかかる。だが切り傷は無く、逆に振り払われてしまった。
「チッ!」
「ハハハハハハ!!!!オリハルコンにそんな剣効くはず無いでしょう!!!???」
オリハルコンは、鉱物の中でも最上位に位置する。並の貴族、ましてや王族でも手にはいる逸品ではない。あれ?じゃあ、かつての部下であるヨロイがオリハルコンアーマーになれたのは何故だ?まあ、良いか。
「ユラめ、こんなものを隠し持っていたなんて」
「・・おいユラ!」
俺は、一つの疑問が生まれたので戦いながら問いかけた。
「貴様、このオリハルコンゴーレムを何処で手にいれた!50万DPでは無理だろう!」
「はあ?そんなの簡単じゃない。今まで貯めていた宝物を全部DPにしたのよ。そして、渡されたDPと宝物のDP、自前のDP全部使ってね!」
何と、ユラは自分のDPを、本当の意味で全部使って勝負に出たと言うのだ。良く言うと胆が座っているが、悪く言うと後先を考えていない奴だ。
「そうか。・・まあ、何としてでもアルカを倒そうとするその執念と覚悟は認めよう。いっそ清々しいね」
「・・・・はん、今更何よ!」
一瞬ユラから、声に間が空いたような気がしたが、俺は気のせいかと頭から消した。
「おい、アルカ。お前は、オリハルコンを貫ける技とかあるのか?」
「う~ん、あるには有るよ?でも、魔力を食うから一回しか使えないね。リューゼは?」
「俺は、魔力を込めた剣ならかすり傷ぐらいか?」
ふ~む、どれも決定的な一撃にはなり得なな。・・よし。
「おい、リューゼ。ちょっと時間稼ぎ付き合え」
「は?時間稼ぎだと?」
「アルカ、お前は俺達が時間稼ぎしている間にコアを探せ」
「え?でも、それじゃあ君達が」
「大丈夫だ、多分。なっ、リューゼ」
「・・・そうだな。奴は、その巨体のせいで動きが鈍い。そこに勝機有りだ!」
リューゼの了承をもらったところで、俺は【ボックス】からオリハルコンの剣を取り出した。ミスリルの短剣は閉まっておく。
「え?オリハルコンの剣?」
「おまっ!なんてものを!?」
この剣は、今は亡きオリハルコンアーマーのヨロイの体で作ったものだ。奴に傷をつけられるのは、これしかない。
「さあ、行くぞリューゼ」
「お、おう!」
リューゼは、戸惑いつつも大剣を構えて突撃した。
オリハルコンゴーレムに接近すると、オリハルコンゴーレムは敵を排除すべく攻撃を開始した。オリハルコンゴーレムは腕を振りかぶり殴りかかってくるが、俺は跳躍して避ける。そして、オリハルコンの剣で切りつけた。すると、バキンッと音が鳴り、ゴーレムのボディに傷が付いたではないか。
「おお、同じオリハルコンなら傷を付けることは可能か」
これなら俺一人でもいけるのでは?と思ってしまったが、おれ自身剣は得意じゃない。魔法の方が、得意なのだ。
あれから、オリハルコンゴーレムに傷を付けていくと、オリハルコンゴーレムの胸の位置に灰色に輝くコア、魔石の一部を発見した。
「あ、魔石あったぞ!」
「アルカ!やれ!」
「もちろん!準備万端だよ!」
アルカの剣には、既に魔力が大量に注がれている。
「食らえ!【ダークストラッシュ】!」
アルカは、グレーミノタウロスのバークを倒した時の何倍の魔力を込めて剣を突き出し技を放った。そして膨大な魔力を込めた【ダークストラッシュ】は、オリハルコンゴーレムのボディを真っ直ぐに貫いたのだった。
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