ダンジョンバトル・終盤戦③
※旧ダンジョンバトル・終盤戦⑤⑥を統合しました。
◆ユラの屋敷内
バークとかいうグレーミノタウロスを退けた俺は、二階に上がっていた。
「しっかし、自分のダンジョンなのに警備のモンスター少なすぎないか?いや、罠は多いけどさ」
俺ことカゲマサは二階を走り回り、一階よりも大量の罠に阻まれながらも、順調に進んでいった。
「あれ?扉か?」
しばらく走っていると、目の前に屋敷の扉と同じ扉が現れたではないか。
「何故扉が?・・・まさか、開けたら入り口に戻されるとか無いよな?」
今戻ったら、また面倒な屋敷攻略だ。それは避けなければならない。とはいえ、この扉以外の部屋は調べてしまった。う~ん、仕方ない。行こう。
覚悟を決めた俺は、ゆっくりと扉を開く。するとそこには百はいるであろう悪魔の軍団だった。
「来たわね侵入者!私は、ユラ様配下の幹部、〈五人衆〉の内が一人!ハイサキュバスのハイサ!貴方にこれだけの数の悪魔を倒しきれるかしら!?」
ハイサと名乗るハイサキュバスは、堂々と俺を指差しながら叫ぶ。また五人衆か。《鑑定》っと。
名前 ハイサ
種族 ハイサキュバス
職業 幹部〈五人衆〉
レベル 35
ランク B-
スキル 闇魔法 魅了 飛翔 指揮 統率 魔力視
ふ~む、指揮官寄りのモンスターか。最大の難関は魅了だな。魅了は、対象の欲を煽り対象を支配するスキルだ。悪魔の軍団の中には、サキュバスが何体か混ざっている。因みに、軍団のモンスターを種族、ランクだけで表すとこうなった。
・デーモン C
・ミノタウロス C-
・サキュバス D+
・レッサーデーモン D
・レイス E
・インプ F+
ふむ・・・・・・あ。
「悪魔なんだから、光魔法で吹き飛ばせばいいじゃん」
そう思い、早速魔力を集中させる。放つのは、あの魔法だ。
「【ライトボム】」
そう、かの死霊公戦に使った、とてつもない威力を発揮する魔法である。純白の光が俺とハイサ、悪魔の軍団を飲み込み
そして、目を開けた時には、あっという間に悪魔の軍団を壊滅させていた。
「そ、そんな・・・!?」
「もう終わりか?」
ハイサは、軍団が壊滅させられたことに驚きを隠せない。いや、生きている者はいる。ただし、満足には動けなさそうだった。
「ッ・・・!《魔力視》オェェェェ!!??」
ハイサは、せめてあの男の魔力を見てみようと《魔力視》を発動し、吐いた。その尋常じゃない魔力にあてられたのである。しかしハイサは、この経験を前にも体験していた。
(まさか、こんな魔力の持ち主だったなんて!?あの人間といい、このダンジョンマスターといい、いったい何だって言うの!?)
焦ったハイサは、苦し紛れに《魅了》を発動したが、効いている様子はなかった。
「時間はあまりかけていられない。悪いが通らせてもらうぞ!」
「ッ!?い、行かせはしまうぐっ!?」
敵、カゲマサは、ハイサに向かって突進。ハイサは抵抗するべく、魔法の準備をしようとした時体中に強い衝撃が走った。ハイサの意識は、ゆっくりと暗転する。
(ああ、申し訳ありません。マスター・・・)
自分の主に謝罪しながらハイサは、地に倒れ伏した。
「殺さなかったのは、甘かったかな」
俺は、倒れ伏したハイサキュバスを見て呟く。手っ取り早く終わらせたかったので、突進からのタックルにしたのだが。
「まあいい。他の奴等もこの屋敷に侵入しているようだしな。そいつが始末するだろう。・・・してくれるといいな」
そんなことを言いながら俺は、親玉のいる部屋を目指すべく走り出した。
◆ユラの屋敷内
俺ことカゲマサは、屋敷内を隅々に捜索した結果、やっと敵の大将のいる部屋の前に到達していた。していたのだが。
「はぁ~、またかよ。うじゃうじゃいるな」
案の定カゲマサの目の前には、またもやモンスターの軍団が群がっていた。カゲマサは、面倒くささと苛立ちを覚える。
「おいお前ら。死にたくないなら、そこ退け」
「グヒヒヒ、ならぬ!」
少しの希望を込めて、退くように言ったが拒否されてしまった。隊長らしき悪魔は、絶対通さないといった覚悟を感じさせる。
「グヒヒヒって気持ち悪いな。チッ、仕方がない」
「グヒヒヒヒッ!私は、幹部〈五人衆〉の一人!グレーターデーモンのモデン!さあ、全部隊突撃ィィィ!!」
オオオオォォォォ!!!!!!
〈五人衆〉のモデンの叫びで、モンスター達は一斉に突撃を開始した。そこに隊列は存在せず、ただただ真っ正面から突っ込むだけだった。それでも迫力十分だが。
俺は、迎撃に【ライトボム】を放・・てなかった。何故なら窓の外側、つまり屋敷外から何かが突っ込んできたからだ。
「「は?」」
俺とモデンは、同じタイミングでそう言ってしまった。窓をぶっ壊して屋敷に侵入したのは、赤い鱗に覆われた体、そしてトカゲの頭、巨大な大剣を背負ったモンスター。
「・・リザードマンキングか」
「あ~、頭がクラクラするぜ。って、カゲマサじゃねぇか。何してんだ?」
「お前こそ何があった?」
窓をぶっ壊して侵入してきた割りに元気そうなリザードマンキング、ダンジョンマスターのリューゼは、目の前にいたカゲマサに質問し、カゲマサは質問し返した。
「俺か?あの吸血鬼女に先越されたもんだから、どうにかしようと思ったんだぜ。そして閃いたんだよ!入り口じゃなくとも、窓から入れば良いってな!」
「力任せかよ。まあいいけど」
吸血鬼女とは、恐らくアルカだろう。ということは、屋敷外のモンスターは大方倒したってことか。
「なあ、カゲマサ。俺達の目の前にいる奴等って敵だよな?」
「ん?ああ、敵だ」
「ああそうかよ!じゃあ、こいつらは俺がいただくぜ?」
「・・・勝手にしやがれ」
「おう!」
リューゼは、大剣を構えるや否や軍団に突撃した。
「グヒヒッ!?と、突撃ィィィ!!奴等をこの先に通すなァァ!!」
リューゼの乱入で、足を止めていた軍団はリューゼに遅れるも突撃を開始する。
「ハッハッハ!笑わせるぜ!貴様等ごとき雑兵に!」
リューゼは大剣を振りかぶる。
「俺を止められるかってんだ!!!!」
一閃。それだけで、数十匹のモンスターは吹き飛び絶命。辛うじて生き延びたモンスターも、致命傷を負っていた。たいした傷を負っていないのは、モデンだけである。
「グ、グヒヒヒ。き、貴様・・・・!」
「お、少しは骨のある奴がいるじゃないか。さあ、かかってこいよ!」
「グヒヒヒ、オオオオォォォォ!!」
モデンは、自らの剣を構えリューゼに襲い掛かった。リューゼも大剣を構えて突撃する。そして、二人の剣が交差し。
「・・・グヒ、ヒ・・ヒ」
「・・・へっ、今の一撃。中々良かったぜ」
軍配は、リューゼに上がった。リューゼがモデンを称賛した後、モデンは頭から真っ二つになり、物言わぬ骸と化したからだ。
「大丈夫か?」
「ああ、かすり傷だ。だが、奴の剣の腕は確かだったぜ?」
「そうか」
俺ことカゲマサは、剣術の素人だ。今の刹那に何があったのかはよく判らない。だが、どちらも実力者だったことは判る。《鑑定》するか。
名前 リューゼ
種族 リザードマンキング
職業 ダンジョンマスター
レベル 60
ランク A-
スキル リザードマンの王・・配下のリザードマンへの指揮能力上昇 配下のリザードマンの能力上昇 自身の能力上昇 剣術の達人 格闘の達人
うわ、つよ!スキルは少ないものの、殆どが戦いに特化したスキル構成だな。よく判らないけども。
「さあ!扉の先に行くか!」
「ああ、そうだな・・・待て。誰か来る」
「は?」
すると、俺とリューゼの背後に一つの気配が。敵かと思った俺は、即座に背後へ裏拳を放とうとする。
「ま、待ってよ!僕だよ僕。アルカだよ!」
そこにいたのは、吸血鬼のダンジョンマスターであるアルカだった。
「何だ、お前だったのか吸血鬼女」
「そうだよ。後リューゼ君、僕はアルカだから」
「そんなことよりアルカ。お前、返り血付いてないか?どうしたそれ」
「これ?途中に灰色のミノタウロスがいたから、ついでに殺っちゃったときに付いたんだ」
あ。灰色のミノタウロスって、すごく身に覚えがあるぞ。階段前で門番してたやつか。ついでで殺されるとか、不運だな。
「さっ!気を取り直して、ユラの所に行くよ!」
アルカの号令で、俺達はユラが居るであろう部屋の扉を開けた。
リューゼは強かった。
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