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ダンジョンバトル・終盤戦②

カゲマサの部下の話です。少し長くなりました。


※旧ダンジョンバトル・終盤戦③④を統合しました。



◆敵ダンジョンマスターチームその一



「グ、トメロ!」


 屋敷前の戦場で、ユラ側のダンジョンマスターであるトロールが叫ぶ。現在、戦場は新人トップ3チームの優勢だった。その原因の一つはというと。


「グオオオオーーーー!!!」


 トロールの目の前で大暴れしているモンスターの存在だった。そのモンスターの特徴として、口から見える牙、巨大な体躯、背に付いている背鰭、長い尻尾だ。もし、この場にカゲマサがいたのなら、そのモンスターをスピノサウルスと呼んだに違いない。それほどにそっくりなモンスターだった。


「グ、オマエラ!イケ!」


 トロールは、大暴れしているモンスターを止めるために自らの最高の手駒であるトロール部隊を差し向けることにした。









◆スピノサウルス?側



「何だよ!どいつもこいつも張り合いがねぇな!もう少し頑張れよ!?」


 スピノサウルス?は、そんなことを言いながら目の前のトロールを殺していく。牙で噛み砕き、足で踏み潰し、尻尾で凪ぎ払った。


「あ?何だあいつら?」


 敵を凪ぎ払っていると、複数のトロールが向かってくるではないか。それにどのトロールも鉄の鎧で身を固め、金棒を構えながら突撃してくる。


「はは!あれは少し手こずるな!まあいい!全員ぶっ倒して」

「何言ってるのよ。手こずるなら、私を呼びなさいよ」

「うお!?って何だ、女悪魔かよ。びっくりさせやがって」

「ただの女悪魔じゃないわ。私は上位悪魔(グレーターデーモン)よ」

「へ!マスターに覚えよくしたいから手柄をあげるつもりかよ!おっと、来たようだぜ?」


 二人が呑気に話しているうちに、武装したトロール部隊が眼前に迫っていた。


「GAAAAAAA!!」

「・・・知性を感じないわね」

「どうでもいいだろ!【ウォーターレーザー】」


 トロールの雄叫びに知性が無いことを察したスピノサウルス?は、水のレーザーを放つ。水のレーザーは、鉄で武装したトロールを容易に貫き、トロールを絶命させる。


「あら、案外脆いのかしら?じゃあ私でもいけるわね。【ダークスピア】」


 グレーターデーモンは、黒い槍を生み出し発射。黒い槍は、トロールに真っ直ぐ飛んでいき頭を貫いた。


「おいおいおい、思ったよりも弱いじゃねぇか!どういうことだ!?」

「まだまだトロールはいるわよ?油断は・・・・あら?」


 スピノサウルス?が、あまりの敵の弱さにがっかりし、グレーターデーモンが注意を促そうとトロール部隊に目を向けると、他のトロールが倒れているではないか。そして、トロールを倒したであろう者は、二体共近くに立っていた。


「なんだ、ワーキャットかよ。急に出てくるなお前は」

「急にで悪いですか~?」

「いいえ、悪くないわ。ありがとね。そちらは、確かゼクト殿の部下の方かしら?」

「ええ、アラクネです♪」

「あらそう。って、ワーキャットはあのライオンの部下じゃなくって?」

「あ~、あの人ならトロールの親玉仕留めにいきましたよ~?」


 ワーキャットがそう言うと、後ろからズシンと音がした。振り向くと、喉を斬られ絶命したトロールと大剣を持った二足歩行のライオンが立っていた。


「おいネコ!トロールの親玉弱かったぞ!?どういうことだ!?親玉ならもう少し強いはずだろうが!」

「あ~、ライオンさんの方が強かったんでしょ?倒したなら、カイさんに報告してほしいです」

「ならお前が行ってこい!俺はもっと敵を倒してくるぜ!」


 そう言うと、ライオンは敵陣に突っ込んでいった。


「はあ~、すみませんが私はカイさんに報告してきます。皆さんは?」

「俺は、親玉を倒したなら雑兵共を始末しているぜ?暇だからな」

「私は、この事を他のダンジョンマスターの二人に報告するわ。部下のインプに任せるより早いし」

「あらあら〜、ライオンさんにも困ったものね。じゃあ私は、子どもたち用の餌を取りに行きましょう!」


 それぞれの方針を固めた四体のモンスターは、行動に移るべく動き出した。








◆カイ・ザーバンス側



「カイさんカイさん、うちのライオンさんがトロールの親玉を討ったそうです」

「そうか。僕の方も、もう少しで終りそうだから落ち着き次第一旦合流しようと伝えてくれ」

「了承しました~」


 突如現れたワーキャットに驚くことなく、カイは対応する。現在カイが相手にしているのは、虎型のダンジョンマスターだ。そして、虎型モンスターである。モンスターについては、もう壊滅寸前だった。何故ならば


「カイ、虎は大体始末出来ましたぞ」

「こっちも終わったぞ」

「・・・肉不味い」


 この三体のモンスターのお陰だからだ。一体は、茶色の皮を持つヘビで腹が膨らんでいる。恐らく、虎型モンスターを丸のみにしたのだろう。もう一体は、木でできた人形モンスターだ。たしか、魔樹人とかいうモンスターだったか。武器は持ってないので、素手で殴り倒したらしい。最後に、カラスのような鳥型モンスターだった。言葉からわかる通り、虎型モンスターを食べてお気に召さなかったのだろう。


「お疲れさま、敵のダンジョンマスターはどうしたんだい?」

「えっと、いまこっちに向かって走ってくる」

「そうか。・・・あれかな?」


 カイの呼び指した先には、猛然と駆けてくる一頭の虎が目に入った。


「貴様等ァァァ!!よくも俺様のモンスターをォォォ!!」

「良し、あれは僕が倒す。君達は、他のモンスターを警戒してくれないかい?」

「了解だ。・・大丈夫か?」

「大丈夫さ。多分、一撃で終わる。あいつからは、そんなに強い気配は感じない」

「そうか」


 魔樹人は、納得したように頷くと辺りの警戒に移った。


「ふん!俺様を一撃だと~?舐めた真似しやがって!てめぇなんざ俺様だけで」

「五月蝿い」


 カイは、飛び掛かってきた虎型ダンジョンマスターに剣を一閃


「へ?」


 虎型ダンジョンマスターは、何が起こったのか判らないといった顔をしながら首を切り落とされた。


「ほら、一撃だったよね」


 実は、このカイ・ザーバンス。剣の腕ならば、英雄に匹敵するほどの腕前である。そして、人間時代のモンスター討伐経験も加味されているのであっさりと倒せたのだ。


「さて、他のモンスターと合流しなければ」


 そう言うと、カイは走り出した。












◆ユラの屋敷内



 カゲマサは、未だに屋敷内を走り回っていた。


「畜生が!全然階段が無いぞ!?」


 そう、この屋敷は二階建てだ。ならば、必ず階段があるはずなのだ。


「何処だ!?まさか、忍者屋敷みたいに壁の後ろにあるのか!?」


 そんなことを叫びながら走り回っていると、やたら豪華な扉の前まで来ていた。


「・・・この先か?」


 俺は、恐る恐る扉を開けると、中には四体のミノタウロス。そして、毛色の違うのが一体。


「やっと来たか侵入者!」


 他のミノタウロスより頭一つ分大きいミノタウロスだった。普通のミノタウロスは毛が茶色なのだが、このミノタウロスは灰色である。《鑑定》するか。



名前 バーク

種族 グレーミノタウロス

職業 幹部〈五人衆〉

レベル 40

ランク B-

スキル 剛力 鉄皮 指揮 咆哮 格闘 金棒術



 〈五人衆〉?あ、もしかして敵の最高幹部か?幹部ってあるし。だとしたら、愚行だな。俺が一人で来たところを、五人衆総出で叩き潰せば容易に勝てるのに戦力を分散させるとは。いや、まさか一体だけで勝てると思っているのか?


「おい!聞いてるのか侵入者!」

「ん?何か言ったか?聞いてなかった」


 どうやら何か話していたようだった。全く聞いてなかったよ。失敬失敬。


「ふん!ならば、聞け!俺様は、ユラ様配下の最精鋭にして幹部、〈五人衆〉の内が一人!力のバ、ってうお!?」


 チッ。語っている間に【フレイムスピア】で貫いてやろうと思ったが、失敗したようだな。伊達に、最精鋭は名乗ってないか。


「き、貴様!!」

「避けられたか。良し、ならば」

「ふん!やっと来るか!返り討ちに・・・は?」


 俺は、グレーミノタウロスのバークに背を向け走り出した。つまり、逃走したのだ。


「待て!俺様から逃げられると思うな!」


 バークは部下と一緒に追いかけてくるが、ミノタウロスは腕力がある分、やや遅い。それでも、他の力自慢のモンスターと比べると少し速く感じた。

 そして、バーク達が俺を追いかけはじめて部屋を出た後、部屋の入り口に俺が現れた。


「さて、距離的に十分だろ。門番がいない階段なんて、只の階段だ。ユラがチクる前にさっさと二階に行くとするか」


 今頃は、【ミラージュ】で作り出した俺の幻影を追いかけているはずだ。ユラがマップで気づいても、距離的に直ぐに来ることはない。そう考えながら俺は、二階に昇った。


「はあ、はあ、はあ、こいつの体力は無限か・・・・!?」


 一方のバークは、依然としてカゲマサの幻影を追いかけていた。すると突然通話が入る。


『グヒヒヒ、おいバーク!!貴様何をやっているのだ!?』

「ああ!?侵入者を追いかけてるんだよ!」

『グヒヒヒ、それは侵入者ではない!只の幻影だ!本物は既に二階に昇ったぞ!』

「なんだと!?」


 バークは、足を止めて急ぎ二階へ行こうとした。


「待ちなよ。二階に行く前に、僕の相手をしてくれると嬉しいな」

「ッ!?だ、誰、ガハ!?」


 が、突如声のした方にバークは振り向き、振り向き様に体を斬られてしまった。


「やあ、確かミノタウロスだよね?嬉しいな。まだ持ってない奴だ」

「チッ!また侵入者か!表の奴等は何してる!?」

「ああ、門の前に群がってたモンスターのこと?もうすぐ全滅すると思うよ?」

「何!?」


 バークは驚きつつも侵入者を観察する。明るい紫色のポニーテールに、口許から覗いている鋭い牙。これだけあれば、侵入者の正体など容易に判る。


「貴様・・・ユラ様を貶した奴だな!?ダンジョンマスター、アルカ!」

「貶した覚えはないよ。単に実力不足を指摘しただけ」

「ほざけェェェ!!」


 部下のミノタウロスと共に、バークはアルカに突撃を開始した。アルカは、腰に差した剣を抜き払う。そして。


「【ダークストラッシュ】」


 そう唱えて、突きの構えをとる。そして、黒く染まった剣を前に突きだした。

 その瞬間、巻き起こる衝撃波によって吹き飛ばされるミノタウロス達。バークは粘ったが、最終的には部下と同じく吹き飛ばされてしまった。


「ありゃりゃ」


 衝撃波が収まった後、通路は滅茶苦茶になっていた。床は抉れ、天井、側壁はひび割れ今にも崩れ落ちそうだ。そんな中、辛うじて生き延びていたのが


「へぇ~、あれを耐えるなんてやるじゃん。君」


 アルカが、辛うじて生き延びていたモンスター、バークを見下ろして話しかける。一方のバークは、生き延びてはいるが身体中ボロボロだった。


「く、糞がぁ・・・!」

「ハイハイ、恨み言なら地獄で言ってね。あるかは判らないけど」


 そう言いながらアルカは、バークに止めを差すためにバークの首を断ち切った。


次回はダンジョンバトル・終盤戦③の予定です

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「ふん!ならば、聞け!俺様は、ユラ様配下の最精鋭にして幹部、〈五人衆〉の内が一人!力のバ、ってうお!?」 力のバカに見えたw
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