ダンジョンバトル・リューゼ陣営②
「お、また来やがったな!」
敵が全滅して退屈していた時、リューゼは再び現れた敵に喜びを見せる。
「よ~し。では俺直々に行って」
「駄目です」
リューゼが、一人で敵軍に突っ込もうとして・・腹心であるイチリザに止められた。
「何でだよ!?」
「マスター、あなた様が敗れた場合このダンジョンは負けたようなものです。もう少し自覚を持ってください」
「え~」
「え~っじゃありません」
イチリザは、リューゼにまるで子供をしつける母のような雰囲気を醸し出しながら注意した。
「チッ、判ったよ!じゃああのモンスターはどうすんだ?ニリザに殺らせるのか?」
「あの有象無象は、私とサンリザが対処します。ニリザには、あの有象無象の親玉を捕らえてきて貰いましょう」
「ふ~ん。殺さないんだな」
「ふふふ、確かに今は無闇に雑兵を突撃させる程度の者達です。しかし、リザン様の元で鍛えれば少しぐらいは使えるでしょう」
「リザン様が許すかねぇ」
「許されなかったら、始末するだけです」
それもそうだな、と思いながらリューゼはモニターを見る。ちょうど、ニリザが敵の本陣に向かおうとしているのが見えた。
「では、行って参ります。兵を置いていきますので、いかようにお使いください」
「おう!」
そう言って、イチリザは数十体のリザードマンを残しサンリザと呼ばれたリザードマンソーサラーを連れて、前線に向かった。
◆ユラ陣営ダンジョンマスター
「うわわわわ!?ちょ、ちょっと!あのリザードマン入ってきたよ!?」
「な!?チッ!ぜ、全力で食い止めろ!」
「全力って、大半の戦力は敵のダンジョンの中なんだな!」
ユラ陣営のダンジョンマスター、ネズミ、ヘビ、カタツムリは、ニリザが入って来てパニックに陥った。だが、それは仕方ないのかもしれない。
彼らは、カゲマサとほぼ同じ時期に生まれたダンジョンマスターである。つまり新人だ。しかもカゲマサのように能力に恵まれていなかったので、モンスターを狩ることが出来なかった。さらに言えば、ダンジョン自体まだまだ未完成でモンスター達の戦闘の機会が皆無だった。つまり、戦闘経験が圧倒的に不足していたのだ。すると、ユラなるダンジョンマスターが自身の派閥に勧誘、派閥に入ったらDPをいくらか融通すると言われ、ホイホイ乗っかってしまった。
「ッ!!・・・仕方ねぇ。罠で何とか時間を稼いで」
「ヒイイイイ!!あ、あいつら罠の場所解ってるのか!?」
モニターには、張り巡らせていた罠が次々に壊されていた。
ニリザ率いる攻撃部隊は、ダンジョンバトルを念頭にリザードマンシーフなるリザードマンの盗賊が何体か構成員として所属している。盗賊は、お宝を見つける他にも、斥候をしたり罠の解除もできるなど優秀だ。
「ば、バカな!?」
「こ、こっちも不味いんだな!」
「今度は何だ!?」
カタツムリのモニターをヘビが覗く。そこには、何百というトカゲ系のモンスターやリザードマンに囲まれた自軍の姿があった。
「おい!ちゃんと指示はしたのかよ!?」
「え、えっと。と、途中までは敵を倒せていたんだな。そんで、敵が逃げるから追いかけたらこうなったんだな」
ヘビは、この時一番の頭痛を感じた。
「思いっきり誘われちまってるじゃねぇかよ!ちょっとは頭使え!」
「ご、ごめんなんだな」
「どうすんだよ!?防衛戦力は、あのリザードマン共によって既に全滅寸前!攻略軍隊も敵に囲まれ全滅も時間の問題!ああもう!」
ヘビが、一体だけで叫び他二体はおろおろしていると、コアルームの壁が破壊される。三体は、あまりの事態に叫ぶ。
「な、なんだよ一体!」
「お、いたぜぇ。敵の総大将がよぉ!」
「「「!?」」」
振り向くと、既にニリザ率いる攻撃部隊が到着していた。そして、背中に差していた大剣を抜き、ネズミ、ヘビ、カタツムリに向ける。
「おい!貴様ら、喜べ!うちの大将は、寛大にもお前らを生きて捕まえろと命令なされたぞ!」
三体は、その言葉に希望を見いだした。ここで降伏すれば、死なずに生き残れると。
「わかった!降伏す」
「だが、それではつまらんので俺と戦え!」
「「「!?」」」
コイツ!俺達を退屈凌ぎの玩具って考えているのか!?
三体は、目の前のリザードマンが自分達をその程度としか捉えていないことを
「い、いやだから降伏」
「さあ、いくぞ!」
ああ、これはもう逃げられない。ユラの方に逃げるといった手があるが、敵を引き付けてきたら間違いなく殺される。
(もうやるしかねぇ!)
(やけくそだ!)
(やってやるんだな!)
「「「オオオオーーーーー!!!」」」
ネズミ、ヘビ、カタツムリの三体は、覚悟を決めニリザに突進した。ヘビは、牙を煌めかせて。ネズミは、純粋に体当たり。カタツムリは、殻に入り回転しながら突進し、ニリザに襲いかかった。ニリザは、ニヤリと笑い大剣を構え飛びかかった。
そして、三体は呆気なくニリザに捕獲された。そもそも、戦闘経験が無くレベルも弱かった三体とリューゼの元で実戦に次ぐ実戦を行いモンスターとの戦いに明け暮れたニリザとはレベルが違ったのだ。
「お前ら!こいつらをさっさと運べ!」
ニリザが命令を出すと、部下のリザードマンが三体を縄で縛り連行していった。
『はい!この区画はリューゼの勝利だね!おめでとう!』
突如として、邪神の声がダンジョンに響き渡る。どうやら、勝利したようだ。
「さて、俺も帰るか!」
ニリザは、尊敬する主の元へ帰還するべく歩き出した。
次回は、ダンジョンバトル・アルカ陣営の予定です。
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