アンデッドの戦力②
少し短いかも
俺は現在、ダンジョン前に出来た村の冒険者ギルド兼酒場で昼飯を食べていた。今食べているのは、巨大猪のステーキと野菜スープ、黒パンである。巨大猪のステーキは、少し臭みがあるものの癖になる味だった。黒パンは、口にいれるとガリゴリと音をたてる。野菜スープに浸けて食べると案外美味しかった。
「はあ~、食った食った」
「いかがでしょうか?」
「旨かったよ。ありがとな、マヤ」
そう、何を隠そうこれらの料理を作ったのは俺の奴隷で牛獣人であるマヤだ。今はギルドの酒場で料理人をしている。首輪は外しておいたので、奴隷とは分からないはずだ。
「そういえばナタリア、お前は食べないのか?」
「ああ、私はいい。先程食べたからな」
そう答えたのは、マヤと同じく俺の奴隷で元冒険者にして近衛騎士だったという経歴があるナタリア。種族はエルフ。今は、首輪を外し冒険者として復帰させている。ギルドの上層部に頼んでみたら、あっさり承諾された。
「しかし主君、さっきから落ち着きがないがどうした?」
「ああ、ちょっとな」
俺は、食事の最中ずっとキョロキョロしたり手首を回したりしていた。すると、ナタリアが声を潜めて話し掛けてきた。
「もしかして、例の奇襲作戦のことか?」
「まあな。上手くいってるといいが」
俺は、不安を感じながらスープを一飲みした。やっぱり不安なものは不安なんだよなぁ。
◆魔の森 モンスター討伐部隊“虎”
「総隊長、変だとは思いませんか?」
「お前も思うか?」
「ええ」
現在、カイ・ザーバンスを探索しているモンスター討伐部隊“虎”の面々は、あることに気づく。
「ここは魔の森だよな?」
「はい、モンスター出現率があまりに多い森だったはずです」
「・・・その割には、モンスターに遭遇していないよな?」
「はい、不気味なくらいに」
そう、魔の森に侵入したときからモンスターに一度も遭遇していないのだ。遭遇したといったら、小鳥や小さい虫ぐらいか。
「まったく、こんなことなら装備をもう少し減らしてもよk・・・」
「報告!前方よりモンスターが出現!繰り返す!前方よりモンスターが出現!」
「ッ!?総員戦闘態勢!」
とある洞窟の前まで来て突然のモンスター襲来に、“虎”の面々の顔に緊張が走る。
だが、そんな彼等の緊張をあざ笑うように森の奥から現れたのは三匹のゴブリンだった。
「なんだ、ゴブリンか。さっさと倒して」
「総隊長!後方からもモンスターの一団が!」
「なんだと!?」
総隊長は、ゴブリンだけと思い討伐命令を出そうとすると、後ろからオーク、トロール、ウルフ、リビングアーマー、ドラゴンなどの様々なモンスターがこちらに向かって来るではないか。
「な、なんでこんな・・・!?」
「総隊長!撤退指示を!あれはマズイ!本当にマズイ!ドラゴンまでいるなんて想定外だ!」
「分かってる!総員撤t・・・!」
「ぎゃあ!?」
「ぐぺッ!?」
「!?」
総隊長と呼ばれた男が声の方に振り向くと、後ろにいた部隊がモンスターに襲われていた。そのモンスターは、顔は猫で全身はスラッとした体格、手には長い爪が伸びている。爪には、切り裂いたであろう兵士の血液が滴っていた。
「うん、やっぱり弱いね。情報どおりだ」
「き、貴様は、何だ?一体何者だ!」
「ん?私かい?私はワーキャット。種族名位知ってるだろう?」
ワーキャット?猫系のモンスターで人に近い姿を持つと言われるあの?だが、何故そんな奴がドラゴンやトロールを率いてここにいる!?
「ぐあ!?」
「た、助け!ぐぎゃ!?」
先方の部隊が全滅し、総隊長は負けを悟る。だが、ただでは終われない。終わって溜まる筈がない。
「くそがあ!!!」
総隊長は、腰に指していた剣を抜きワーキャットに斬りかかった。だが、あっけなく躱される。
「なっ!?」
「残念だったね」
ワーキャットは、爪を使い総隊長の体を切り裂いた。爪は、鎧を用意に切り裂き総隊長の肉を容易く断ち切った。
「ガッ!?」
総隊長は、命が尽きることを感じながら息絶える。部下達への謝罪をしながら。そして。
(もし、あの世でバカ公王に会ったら殴ってやる。うん、絶対にだ)
そう考えながら。
「終わった?」
「終わったよ~」
ワーキャットが間延びした声で返事をする。返事した先には、一頭の鹿がいた。その鹿は、通常の鹿よりも遥かに巨大で青い体毛に覆われている。
「というかさ。あんたも手伝ってくれたらもっと早く終わったのに」
「ごめんごめん。シロさんから聞いた情報を見るからに君の隊だけでもいけると思ったからね」
「そりゃないよ。そのせいでいらぬ手間をかけることになっちゃったじゃん」
ワーキャットと鹿は、のんびりと話していると一体のインプがワーキャットの元に飛んでくる。
「ん?あーはいはい。・・・分かりましたよ。はあ~、じゃあ仕事を終わらせよう」
「了解了解〜」
インプから何かを聞いたのかワーキャットと鹿は、部下に命じて死体を回収させた。そして、死体を全て集め終わったあとに死体を見ながら首を傾げる。
「これ、大丈夫かなぁ?死体の一部の欠損がひどいぞ?」
「まあ、大丈夫でしょ。一部だけだし」
そんな会話をしながら、ワーキャットと鹿のモンスターは、その部下達と共に側にあった洞窟に消えた。
次回は、アンデッドの戦力③の予定です。
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