勇者①
めちゃくちゃですみません!
ロウガ。
あいつは、話し方は乱暴だったが気立てのいいやつだった。
ヨロイ。
無口だが、強化のときに何度背中を守ってくれたことか。
ドーロ。
幹部の中では、頭は良くなかったがそのパワーは頼りになった。
どいつも俺にとって、短い間かもしれないが大切な仲間だった。そいつらを勇者が・・・!たとえこちら側が悪だとしても、仲間を殺されて苛立たないほど俺は冷徹じゃねぇぞ・・・!
◆ダンジョン第3階層
奴は、ここにキャンプをしているらしい。スキルで気配を消しつつ、キャンプのある所に近づく。ちなみに、ロウガ達の戦死場所がここだった。そして、勇者らしき人物を発見する。《鑑定》。
名前 ケンヤ・タケダ
種族 人間
職業 剛力の勇者
レベル 30
ランク A
スキル 聖大剣 剣術 剛力
ぬ?これだけ?
俺は、少し拍子抜けしたが気を取り直す。さっきまで、あれほど怒り狂っていたのが嘘のように落ち着いている。ただ、精神にはグツグツと煮えたぎるマグマさえも生温いほどの怒りの炎があった。
俺は、勇者を始末するため冒険者を装い勇者に近づいた。
「おや?どなたですかな?」
「はい?」
勇者がこちらに振り向く。見た感じは、年齢二十代の好青年だな。黒髪黒目で体格は少しガッチリしている。前世ならそれなりに好感を抱く奴だが、今じゃあ怒りを抱く要因にしかならない。
「あ、失礼しました。僕は、ケンヤ・タケダといいます。勇者をしている者です」
「なんと勇者様でしたか。これは失礼しました。それで勇者様は何用でこのダンジョンへ?」
「はい、実はダンジョンの調査に来たんですよ」
調査?一体何の・・・・。まさか帝国とやらがここを嗅ぎつけてコイツを送り出したのか?俺が人間を招き入れたからこんな事態になったのか?これ、完全に俺の自業自得?
俺は、もっと情報を集めるため勇者に話しかける。
「調査ですか?」
「ええ、以前このドミニク辺境伯領に死霊公が現れたのはご存知ですよね?」
「はい、勿論ですとも」
「あの死霊公の一件で、国がダンジョンが絡んでいるかもしれないと言って勇者である僕に依頼してきたんですよ」
「なるほど、それで何か分かりましたかな?」
「いえ、アンデッドは見かけませんでした。やたら強いワーウルフやオリハルコンアーマー、トロールジェネラルが出てきましたが、まあ勇者の僕には楽勝でしたよ」
ああ?楽勝だと・・・!?ふざけるな・・・!あいつらは、お前の踏み台として生まれたわけじゃないぞ?この神のくれた力を我が力のように振る舞う勘違い野郎が・・・!!
おっと、俺もそうじゃないか。いかんいかん。
「・・・そうですか。いや~流石は勇者様ですな」
「いや~それほどでもないです。そういえば、貴方は何をしに?」
「私ですか?私は、素材取りですよ。ここの宝箱からは、高価な物が出るらしいですので」
「へ~、そうなんですか」
勇者は、興味深そうに返事をした。
「あとは、仲間の弔いのようなものですかな」
「弔い?」
「ええ、かつて私には勿体無い程の仲間がいましてね。彼らがこのダンジョンで亡くなったのですよ」
「・・・それはお辛いですね」
勇者は、気まずそうに言う。
お前に殺されたんだがな!
「いえ、冒険者の世界は死ぬか生きるかのギリギリの世界です。納得はしていますよ」
「そうですか・・・・」
「納得はしているのですが、せめて仲間を殺した奴の姿を拝もうと足を運んだのです」
「大丈夫です!」
勇者が突然立ち上がった。その目には、メラメラと炎が燃えているような錯覚を受ける。
「僕が、貴方の仲間の仇を討ちます!」
「おお!それは頼もしい!」
「任せてください!あ、そういえば貴方のお名前は?」
「ああ、そうでした。私はですな、
こういう者だよ。クソ勇者めが」
「え?」
俺は、呆気にとられている勇者の胸に凄まじいスピードで短剣を突き刺した。
「仲間達の仇、討たせてもらう!ケンヤ・タケダァァァァァァァァァァァァ!!!」
俺は、憎しみと怒りを全面に出しながら吠えた。さあ、仇討ちの時間だ。
次回は、勇者②の予定です。
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