思ったよりアンデッドじゃない件
暗殺者と接触です。
自分のダンジョンに帰還した時、俺はシロから妙な報告を聞く。
「暗殺現場?」
「はい。村の近辺をマスターが召還し育成した鳥系統モンスターが監視していたところ、一人の人間が複数の人間に殺される場面を見つけまして」
「あれは育成じゃなくて戦s・・・・そうか。で?暗殺者はどうした?」
「暗殺者は仲間を警戒しているのか距離を取りつつ、死体を監視しています」
「フム」
これはどう考えたって厄介事だよな。ここは、何もしないが吉かな。・・いや、待てよ?
「・・・これは新しいスキルが日の目を見るいい機会か」
俺はそう呟くと、シロに命令を出す。
「シロ、俺はこの暗殺者共を抹殺しに行く。留守は任せたぞ」
「承知しました。しかし、他の幹部を連れていかなくてよろしいのですか?」
「これは実験も兼ねている。一人で何処まで戦えるかをな」
そう言いながら俺は、暗殺者のいる場所へ風のごとく駆けていった。
◆山の麓 暗殺現場
フム、確かシロに教えてもらった場所はここか。あ、死体があるな。これが暗殺対象か。顔はイケメンだな。年齢はおよそ二十代後半、金髪で細身だが引き締まった筋肉がある。服装は、黒を基調とした地味目の軍服という感じか。胸に針が刺さってる。と、俺が死体を観察していると後ろから殺気が出たな。
「おっと」
その場から素早く離れると、さっきまで立っていた場所が地雷の如く爆発したのだ。
「魔法か。随分と荒っぽいな」
すると、俺の背後に複数の気配が生まれる。
「おや、君達かな?あの死体の原因は」
「・・・貴様、何者だ?我々の【アースボム】をかわすだけでなく、我々のいる位置まで特定するなど只者ではあるまい」
「さあ?俺は只の茶色の仮面を被った変人だよ」
「ほざけ!」
そう言いながら、暗殺者は襲いかかってくる。暗殺者らしく素早い動きだ。だが、それだけなんだよな。
俺は、イメージを開始する。イメージするは、ホログラムだ。自分が写し出されているホログラムをイメージするのだ。
「【ミラージュ】」
「ッ!?」
暗殺者からしたら、自分の攻撃が相手の体を素通りしたように見えただろう。その一瞬の隙が命取りだ。
「まずは一人」
「な!?」
俺の手に握られているのは、道具創造で生み出した鉄のナイフである。そのナイフを心臓に突き立てると暗殺者はしばらく藻掻き、やがて沈黙した。
「貴様・・!」
リーダーらしき暗殺者は、こちらに怨嗟の視線を向ける。
「ん?何だ?まさか恨んでいるのか?おいおいおい、それはおかしいぞ。お前達は人を殺す為に来たんだろ?なら、殺される覚悟も当然あるよな?なのに恨むなんて逆恨みもいいとこだ」
その言葉を皮切りに他の暗殺者も襲いかかってきた。沸点低いな。それぞれの構成員は、ナイフを持っておりどれも毒々しい色の液体が垂れている。だが、どいつもこいつも速いだけで特に変わった所はない。俺は、容易に暗殺者共を倒すことが出来た。
ある一人は、首に腕を回し首をへし折った。
またある一人は、盗賊襲撃の際に冒険者にやったことをした。そう、相手の口を手で抑え中で【ファイア】をぶちこむことだ。念に魔力をこめてやったので、頭が完全に無くなっていた。
またある一人は、そこら辺にあった尖った石で撲殺した。
残るは、後一人である。
「くっ。まさか、ここまでの手練れがいたなんて。聞いてないわよ」
「人生そういうもんさ。上手くいかない時なんていくらでもある。ていうか女だったの?」
「女で何か悪い?」
「いや、全然」
「そ、まあいいわ。今は部下の仇を討たせてもらうわよ?」
「嫌だから抵抗させてもらおう」
そこから暗殺者の女リーダーとの戦闘になったのだが、この女が中々強かった。ただ速いだけじゃなく、敵の目を掻い潜る独特の走行技術に回りの木々の陰も利用している。更に森という地形を活かし、木々の間を自由に移動し常にこちらの背後に回ろうとする。ただただ厄介な敵だった。このままじゃ埒が明かない。少し痛いが、やるしかない。
俺は、途端に動きを緩める。その隙を奴は見逃さなかった。
「隙有り!」
俺の背中の心臓より少し上あたりに、ナイフが突き立てられた。女リーダーは、相手に致命傷を与えたと感じたと同時にナイフを抜こうとしても抜けないことに気づく。そして、腹部に今まで食らってきたどんな一撃よりも重い一撃が女リーダーを襲った。
「ガッ!?」
「いって~。今度は、やらないほうがいいなこれ」
その時点で、女リーダーは悟る。こいつは、わざと自分の一撃を受けたのだと。わざと一撃を受けて動きが止まったところを反撃する腹積もりだったのだ。
「さて、あんたには恨みはない。だからせめて痛くないように殺してやる。【スリープ】」
女リーダーは、そんなことを聞きながら意識を手放した。
さて、暗殺者は掃討完了。心置きなく実験が出来るぞ。
俺は、先程の死体がある所に暗殺者達の死体を集める。そして、道具創造であるものを作った。
・無性の魔石(大)
なんの属性もない大きい魔石
俺は、生み出した大きい魔石あのイケメンの死体に乗せてあるスキルを発動させる。
「《アンデッド創造》」
すると、イケメンの下に紫色の魔法陣が出現した。そして、魔石がイケメンの体の中にズブズブて入っていく。魔法陣が消え、俺はイケメンの死体の様子を伺う。魔力は多めに付与したが、イケメンは動きそうにない。失敗か?そう思った瞬間、イケメンの目がうっすらと開いたのだ。
「あ、あれ?私はあの時、暗殺部隊に殺されたはず。何で?」
「よう。調子はどうだい?」
「え?」
イケメンは、俺の方に振り向く。そして、地面に転がっている暗殺者を見て驚愕した。
「こ、これは!?君がやったのかい!?」
「ああ、一人でな」
「そ、そうか。ということは、余程の手練れ何だな。君は」
う~ん。アンデッド創造は成功者した・・・・・はずだ。なのに、この生き生きとした表情は何だ?まるで生きてるような・・・。《鑑定》。
名前 カイ・ザーバンス
種族 エルダーゾンビ
職業 カゲマサの僕
レベル 1
ランク B
スキル 指揮 剣術の達人 剛力 俊足 水魔法 腐食
うん。ちゃんとアンデッドになってるな。そして、上位種族になってるわ。
俺は、喜んでいる彼に事実を教えるべく申し訳ない気持ちを含みながら近づいた。アンデットとして復活したという事実を。
次回は、事情説明の予定です。
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