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先輩の話と始末された男

先輩の話です。


「お前は勇者ゲロか?」


 いきなりゲローロがした質問に対して、俺は答えを一つしかもっていない。


「勇者?違うよ。あの時も言ったけど俺は、勇者じゃない。勇者だったらゲローロに攻撃してるさ」

「まあ、そうゲロね」

「ていうか何でこの質問を?」

「ああ、それはお前が勇者全体の外見にそっくりだからゲロよ」

「そうなの?」

「そうゲロ。私が見てきた勇者や先輩から聞いた勇者の外見と一致してゲロ。大体の勇者は、黒髪で平たい顔してるから勇者と疑ったけど杞憂だったゲロね」


 ゲローロは安心したように、フーッと息を吐き出す。どうやら余計な心配をしていたようだ。だが、そんなにアッサリと信じていいのか?


「あ、そうだゲロ。カゲマサ、今からしばらくするとダンジョンマスターが一同に会する〔魔の夜会〕かあるゲロ。お前のところにも招待状がくるから覚えておくといいゲロ」

「〔魔の夜会〕?なんだそれは?」

「いろんなことをやるゲロ。例えばDPランキングやダンジョンマスターに関する会議なんかあるゲロ。他のダンジョンマスターと交流するいい機会ゲロ」

「なるほど」


 〔魔の夜会〕ねぇ~。興味ないな。友達作るのは悪くないけど、変な奴に絡まれたくないし。


「不参加っていうのは」

「駄目ゲロね。断ったら父上の顔に泥を塗る行為として他のダンジョンマスターから一斉攻撃を食らうゲロ。過去にそんな奴いたゲロ」


 やっぱり無理か。父上って邪神のことかな?というか、断ってもいいだろうが。攻め込まれている最中に招待されてみろ。どんな目に合うか。


「まあ早い話、〔魔の夜会〕の招待状がきたら絶対出ろっていう話ゲロ」

「わかったよ。教えてくれてありがとう」

「いいゲロ。ってあれ、もう帰るゲロか?」

「うん。ダンジョンも心配だしね」


 攻略されかかっていたらいやだし。これだからダンジョン開けるの不安なんだよ。


「そうゲロか。じゃあ最後に教えてあげるゲロ」

「なに?」

「知り合いから聞いたんゲロが、新入りの中であちこちにちょっかいかけている奴がいるらしいゲロ。何でも人間の街を襲い財宝や魔石なんかを強奪してるとか。あと兵力もそれなりで、数々の新入りを兵力を背景に手下にしてるらしいゲロ。カゲマサも気を付けるゲロよ?」


 へえ~、そんなことしてるのか。バカな奴だ。俺ならそんなことはしない。何故って?面倒だからだよ。急速的に戦力拡大するより、コツコツと積み立てて戦力拡大したほうが良い。忠誠心だって疑わしい。


「わかった。気を付けるよ。暇が出来たら土産持って遊びに来たいけど、いいかな?」

「土産なら大歓迎ゲロ。何時でも、と言うわけにはいかないゲロがあの穴に伝令のモンスターを配置しておくゲロ。そいつに話してくれればいいゲロ」

「わかったよ」


 俺は、フロッグパラディンの一体に案内されながらゲローロのダンジョンを後にした。








 時は少し遡りカゲマサが、ゲローロのダンジョンに招待された少し前、森の一角で一つの出来事が起こっていた。


「ハァハァハァ」


 森の中で一人の男が、必死になって走っていた。その走り方は何かから逃げるような走り方である。


「いたぞ!」

「追え!」


 そして、追っ手らしき者達の声も聞こえてくる。


「ッ!」


 男は、走っている内に山の麓、つまり行き止まりまで来てしまった。


「な!?こんなところで!?」


 男が戸惑っていると、後ろに黒い装束を着て覆面を被った五人の人間が現れた。


「見つけたぞ」


 先頭にいた人間が、女性のような声で男に話しかける。


「ふっふふふ」

「何がおかしい」

「いや、私ごときに公国最強の暗殺部隊である貴様らが出てくるから私も有名になったものだと笑ってしまってね」

「お前が言うな。公国にその人有りとうたわれた若き名将、カイ・ザーバンスが何を言う。まあ今は国家の反逆者だが」


 男、カイ・ザーバンスは国家の反逆者という言葉にため息をつく。


「私はやっていないのだが」

「だが、公王はそのように決定した。我々は公王の命に従うまでのこと。・・・長話だったな」


 黒装束の五人は、カイに襲いかかった。カイは応戦しようと剣を抜こうとしたが、突如として目の前が真っ暗になる。


「【ダーク】か!」

「その通りだ」


 暗殺部隊の一人は、カイの目の前が真っ暗になった時の一瞬の隙を付き、カイの側まで近づく。だが、分かっていたようにカイはその一人に向かって剣を一閃。男は死ななかったものの、その場に倒れこんだ。カイは、他の敵に意識を向けようとした瞬間。



 グサッ。



 彼の胸に一本の針が刺さってしまった。


「グハッ」

「終わりだ」


 追い討ちとばかりに、二・三本の針が刺さる。


「その針には、致死性の毒が塗られている。お前が生き残ることはない」

「はっははは。そう・・・か・・・」


 カイは、自身の命がここで尽きることを悟る。


「で、きれば、もっと、・・・生きて・・・みた・・・かった・・な」


 カイは、そう嘆き息絶えた。


「隊長、どうしますか?」

「・・・念の為死亡確認を取れ。確認取れ次第しばらく待機だ」

「待機ですか?」

「ああ、奴の仲間が来るかもしれん。仲間共々殺すのが公王の命令だ」

「はっ」

「周囲のモンスターに警戒せよ。後、怪我人の手当てを」

「御意」


 一人は怪我人の手当てを。他三人と隊長と呼ばれた女らしき人間は周囲のモンスターに気を配る。

 そんな暗殺部隊の面々も空から監視していた者には、気がつかなかった。


カゲマサは、自身が勇者候補だと知りません。

次回は、黒装束の五人の予定です。

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[一言] これはアンデットにする奴かな?
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