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女王軍、出撃

難産でした。短いです。


◆黒岩島サブダンジョン カゲマサside



 俺は、ナタリアの膝枕で数十分間軽い睡眠を取った後、軽く背中を伸ばす。すると、憔悴した顔でナタリアが話しかけてきた。


「しゅ、主君よ」

「ん?何だ?」


 ナタリアは、まるで憔悴しながら何かに怯えるように震えて言葉を続ける。


「今後は、その、膝枕するならマヤに頼んでくれ?私だと膝が硬いからな」

「はぁ?いや、十分に柔らかかったが」

「と、とにかく!今後は、マヤにお願いしてくれ!?では!」

「お?おお」


 ナタリアは、言葉をまくし立てた後立ち上がって、ヨロヨロと部屋から出ていった。俺は、ナタリアの様子に戸惑いながらもソファから立ち上がり、最奥区画から立ち去った。


 俺は、最奥区画から出た後に牢屋区画へと移動した。何となく気分で、囚人達の様子を確認するためなのだが、軽い散歩みたいなものだ。

 俺が牢屋区画に入ると、そこには手枷を取り付けられているが牢屋を出て労働に勤しむ囚人達の姿があった。


「···え?何で出てんの?」


 俺は、今まで閉じ込めたままと思っていたので困惑していると、側に南方諸島出身の元人間である魔人シドル·ヴァレンスリーが近寄ってくる。


「これはカゲマサ様。実は、彼女等が運動不足を訴えておりまして」

「それで労働をさせることで運動不足を予防すると?」

「ええ。それにストレス解消にもなりますので。私の独断をお許しください」

「いや、ちゃんとした理由があるならいい」


 俺は、シドルの説明に納得を示すが囚人たちを冷たい目で見回す。牢屋から開放されて要らぬ企てを企んでいるものが居るかもしれないからだ。例えば、反乱とか。


「ふむ、シドル。見回ってもいいかな?」

「はっ!ご自由にどうぞ!」


 俺は、シドルの許可を貰って囚人達の労働風景を見回ることにした。

 今牢屋区画にいるのは、捕らえたアマゾネス女王国女王軍の兵士達や黒髪糸目アマゾネス一派、海賊に囚われた巨乳女性達である。行っている労働は、俺の部下達が趣味で釣り上げた魚を冷凍庫に入れたり、木材をヤスリで削ったり、鉄材をハンマーで叩き製鉄を行っていたりと広範囲で様々なことをしていた。

 俺は、その中で囚人たちに指示を出している三人の存在を見つけると、興味本位で近付いていく。


「よお、何してやがんだ?」

「っ!カゲマサ様!」

「こ、こんにちはカゲマサ様!」

「これはこれは、カゲマサ様。ご機嫌麗しゅう御座いますわ」


 指示を出していたのは、海賊に囚われていた元は貴族令嬢である金髪縦ロール巨乳の女性のシェヘラリーゼ·ターボルと修道院勤めの修道服を着た長身巨乳の銀髪エルフのメルナ·エルーメン、そして黒髪糸目アマゾネスだった。


(そういえば、黒髪糸目アマゾネスの名前知らんな。《鑑定》)


 俺は、今更な事を思い出したので黒髪糸目アマゾネスに《鑑定》を発動させる。



名前 フェオール·テニシア

種族 戦女(アマゾネス)

職業 女王軍魔法最高顧問 虜囚

レベル 32

ランク B

スキル 火魔法の達人 水魔法の達人 風魔法の達人 魔力視 魔力障壁etc.



 ふ〜ん。辺境の存在としては、かなりやるようだな。というか、アマゾネスって戦女(アマゾネス)と呼ぶのね。

 俺は、そんなことをぬかしながら黒髪糸目アマゾネス、フェオール·テニシアの《鑑定》結果をジロジロと観察する。


「···カゲマサ様?一体何をしてらっしゃいますの?」

「だ、駄目ですよカゲマサ様!?女性の体をジロジロ見ては!」


 俺がフェオールの体をジロジロ見ていると思ったのか、シェヘラリーゼとメルナがフェオールの目の前で立ちはだかる。


「あら、私はよろしかったのに···チッ」

(私の身体で陥落するならよかったのですが、思ったより邪魔ですねこの二人。まあ、良いです。いずれ、私という超雌のことをしっかり刻みつけてあげますからね?ふ、フヒヒヒヒ)


 フェオールは、薄く笑いながらも影で小さく舌打ちし、内心狂ったように哄笑する。俺は、その場面をしっかりと見ていたがで何故舌打ちしたのかわからなかった。


「いや、済まないな。ところで、お前達はしないのか?アレ」


 俺は、訝しげに労働に勤しむ囚人達を指差して問いかける。


「私達は、所謂纏め役ですので。こうして、仕事の指示を出すことが労働になると言われましたの」

「ええ。それに、私共もしっかりと肉体労働をいたしましたから」

「ふ〜ん、そうかい。まあ、頑張れよ」


 俺は、興味無さげに呟くと三人の肩を叩いてその場を去ろうとする。


「あ、そうだそうだ」


 が、俺は何か言うことを思い出したので、三人の耳元へ口を近付け、殺気を放ちながら呟く。


「下手なことして俺達に不利益が出たら、地の果てまで追い詰めてでも殺すからな?そのつもりでいろ」


 そう言って今度こそ俺は、その場を立ち去った。そして数分が経ち、残された三人はその場にへたり込む。


「···少し漏らしちゃいましたわ」

「あ、後で下着持ってきてもらいましょうね。二人分」

(···やはり超雌としての私を刻みつけるのは、難しいのでしょうか。いえ!やれます!私ならやれます!)


 三人は、恐怖を忘れるようにヨロヨロと立ち上がると囚人達に指示を出すべく動き出した。













◆アマゾネス女王国 軍港



 アマゾネス女王国のあるアマゾーン島北部にある軍港にて、アマゾネス女王国の兵士達が集結していた。その数五百人。また、それとは別に貴族と思わしきアマゾネスが数名に、何やら大きな板に括り付けられている男性達も存在した。

 兵士達がワイワイガヤガヤと騒いでいると、軍港に設置された演説台に一人のアマゾネス、女王軍総司令官ペンテレイシアが登壇した。兵士達は、皆一斉にその場で跪く。それを確認したペンテレイシアは、口を開いた。


「聞け、我等が女王国の誇る精鋭達よ!先程陛下より厳命が下された!アマゾーン島より、北にある黒岩島にいると思わしき誘拐犯を捕縛または殺害せよと!与する者も同様である!」

「「「はっ!」」」

「前置きはここまでだ!征くぞ!敵を殺し、奪い、犯し尽くすのだ!敵に我らに手を出したことを後悔させてやれ!」

「「「オオォォォ〜〜〜〜!!」」」


 総司令官ペンテレイシアの号令の元に次々と軍艦に乗り込んでいく兵士達。それに伴い、大きな板に括り付けられていた男性達も次々と軍艦に運び込まれていく。

 ペンテレイシアは、全員が乗り込んだことを確認すると、戦斧を振り上げて声を張り上げる。





「錨を上げろ!いざ、出港だ!」


 その掛け声が合図となり軍艦は、ゆっくりと錨が上げられ、軍艦が進み出す。その数、十隻。

 ペンテレイシアは、腕を組みながら司令官室にて一つのことを決意していた。


(必ずや、やり遂げる。たとえ、私が死んだとしても)


 このときのペンテレイシアの目は、まるで激しく燃え盛る炎のように熱く燃えたぎっていたという。


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