アマゾーン島侵入①
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◆アマゾネス女王国 王城内会議室
女王軍総司令ペンテレイシアからもたらされた突然の報告に、アマゾネス女王国女王ヒッポリュテ·アマゾネスは緊急御前会議を開いた。会議室には、アマゾネス女王国女王であるヒッポリュテを始めとして、宰相のアンティオペに女王軍総司令ペンテレイシア、農務卿や財務卿等のその他国務卿が列席している。突然の招集に慌てて走ってきたのか、数人の国務卿は肩で息をしながら会議の開始を待っていた。
やがて、肩で息をするものがいなくなり、会議室に静寂が訪れた時女王ヒッポリュテが口を開いた。
「女王軍総司令ペンテレイシア。先の報告は、誠か?」
ヒッポリュテは、冷静にペンテレイシアへ質問を投げかける。だが、その額には血管が浮き出ており、激情に駆られているのは傍目から見ても明らかだった。
「はっ!海から投げ出されたのは、間違い無く陛下の従魔アングでございました!」
ペンテレイシアは、内心恐れを抱きながらも席から立ち上がり敬礼をしながら答えた。その答えにヒッポリュテは、額に浮き出る血管を更に増やす。
「そうか。余の最強の従魔であるアングを、か。···して、下手人はどうした?帝国の戦士の可能性有りとのことだが」
「はっ!下手人らしき存在は、アングを死滅させた後、海底に潜航し行方を眩ませたと配下の戦士が推測しております!」
「ふむ····。ペンテレイシアよ」
ヒッポリュテは、一度言葉を切り息を整える。そして、再び口を開いた。額の血管を色濃くしながら。
「其奴は、男か?」
その言葉に会議室は、極寒の吹雪に襲われたかのように凍りつく。誰しもが避けたかった話題だからだ。それは、彼女の過去に起因する。
女王ヒッポリュテは、過去に気に入った数々の男を夫として迎えてきたのだが、どの夫も女王の持つ権力や宝に目がくらみ王の地位を簒奪せんとヒッポリュテを裏切ったのだ。ヒッポリュテが彼女なりに愛そうとしたにも関わらずである。幾度も裏切られた彼女は、男を嫌悪し王にとって大切な世継ぎも、男を身体を許したくないと拒否するまでになったのだ。挙句の果てには、種馬として献上された複数の美男子を処刑するまでに至る。
「余が聞いているのだ。ペンテレイシアよ、其奴は男か?答えよ」
ヒッポリュテは、黙っているペンテレイシアに再び問うた。対してペンテレイシアは、ヒッポリュテの過去を知るが故に話していいのか迷っていた。
(もし男だって言ってしまえば、陛下に多大な心労をかけてしまう。それは、臣下として正しいことなのか?)
そんな考えがペンテレイシアの頭をよぎるが、すぐにかき消す。たとえ心労をかけてしまっても、報告しなければ早急に対処できないからだ。
「これは、部下からの報告になりますが、アングが死滅した近くの海域に」
ペンテレイシアは、一旦言葉を区切る。そして、額に汗を流しながらも口を開いた。
「···男の匂いを嗅ぎ取ったとのことです」
その言葉を聞いた国務卿達は、顔を青ざめさせて狼狽える。狼狽えは、ざわめきとなり会議室は一時騒然となった。
「静まれ」
そこに女王ヒッポリュテの鶴の一声によって、ざわめきは収まる。だが当の女王自身はというと。
「··くっ、···ひ·····ひ」
激情を抑え込むことさえも疎かになったのか、狂気的な笑みを浮かべながら椅子の肘掛けを握り潰していた。その腕は、人間の物から黒く変色し、竜の腕へと変質している。
「じょ、女王陛下?」
「捕らえよ」
「え?」
椅子の肘掛けを握り潰したヒッポリュテに宰相アンティオペが声を掛けると、ヒッポリュテの突然の発言に疑問符を浮かべる。
「捕えよ。その男を捕らえよ。どんなに人員を割いても構わん。島中を探し捕えるのだ。そして、余の前に引きずり出せ」
この言葉にペンテレイシアとアンティオペは、再び疑問符を浮かべる。国務卿達も同様だった。いつもの女王ならば、発見次第殺せと言うのだが捕獲命令など前例がない。だが自分たちは、女王ヒッポリュテの配下なのだ。命令に背くことはしない。
「「御意!」」
ペンテレイシアとアンティオペを始めとした配下たちは、一斉に頭を下げて了承の意を示す。その返事に満足したのか、ヒッポリュテは席を立ち会議室から出て行った。それと同時にペンテレイシアとアンティオペが頭を上げて国務卿達に告げる。
「諸君、我々は今から件の男の捜索に入る。なので諸君等はアンティオペと連携しことに当たってくれ」
「私は、ペンテレイシアからの情報を頼りに、島内貴族の情報網を使って調べます。国務卿の方々には、手勢を出してもらって捜索をおねがいします。人員の配置は····」
ペンテレイシアとアンティオペを中心とした会議は、一時間に及んだが女王の命令を果たす一心の彼女等にとっては苦痛ではなかった。
そして、アマゾーン島全域に巨大な捜索網が敷かれることになる。
◆アマゾーン島 港の反対側 カゲマサside
アマゾーン島全域に自分の捜索網が敷かれていることなど露知らず、泳いでアマゾーン島に上陸した俺は、海水を【ドライ】という水分を飛ばす魔法で乾かした。その際全身塩まみれになってしまったが、風魔法【ウィンド】で風を発生させて塩をすべて取り払った。
「これで良し。しかし、島の反対側って何も整備されてないんだなぁ。だから、こんなにもモンスターが多いのかねぇ」
俺の目の前にあったのは、どこまでも広がるジャングルだった。しかも、スキル【存在感知】によって得られる情報によると、ジャングル内には多数のモンスターが生息しており、その中にはモンスターを狩るアマゾネス兵までいる始末。
なにより、俺自身が上陸した途端複数のモンスターに囲まれていたのだ。
「「「「コッコォォォ!!」」」」
「いや、何故にニワトリ?まだ朝じゃないぞ?」
現れたのは、四匹のニワトリ型モンスター。俺は、早速《鑑定》を行う。
名前
種族 バーサクチキン
職業
レベル 12
ランク D+
スキル 狂乱 脚術
へ〜、バーサクチキンねぇ。怒り狂うニワトリって意味かな?
俺がそんなことを考えていると、バーサクチキンが鳴き声を上げながら飛び上がる。そして、落下しながら俺に向けて脚を突き出した。
「落下スピードを生かした蹴りか。本当に《狂乱》してるのか?」
俺の疑問を余所にバーサクチキンの蹴りは、迫ってくる。
「まあ、別にいいか。そんなに大したスピードじゃないし」
俺は、素っ気無く言うとバーサクチキンの蹴りを躱すとバーサクチキンの首を掴む。
「こ、コケッ!?」
「ほい、斬首」
俺は、自身の手刀によってバーサクチキンの首を切り落とすと、その死体を【ボックス】へと放り込む。その行動を隙と見たのか、二匹のバーサクチキンが同時に蹴りを放つ。
「「コケっ!」」
「おっと」
二匹のバーサクチキンの蹴りを俺は、二匹の足首を掴み握力で握りつぶす。二匹のバーサクチキンが悲鳴を上げる隙に、蹴り一発で二匹のバーサクチキンの首を刎ね飛ばした。
「コ、コッケェェ!!」
最後に一匹は、唾を吐き散らかしながら文字通り狂乱状態で向かってきた。俺は、向かってくるバーサクチキンを足払いで転ばせる。そして、胴体を鷲掴みにした。
「【フレイム】」
「コケェェェェェェ!!」
バーサクチキンは、断末魔の鳴き声を上げながら絶命した。俺は、丸焦げどころか炭化したバーサクチキンの死体を握り砕くと、ジャングルの奥地へと足を向ける。
「ニワトリかぁ。唐揚げにするかな?」
そんな冗談を口にしながら俺は、スキル【暗殺者】と透明化魔法【ステルス】を発動させて、ジャングルへと踏み入った。
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