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ダンジョン防衛作戦、第三十五階層③

難産でした。


◆ダンジョン第三十五階層 闘技場



 襲い掛かってきた巨漢にパークス達は、即座に散開。パークスとエマを前に、タロとドトールが後ろへ飛んだ。


「来るぞエマ!」

「分かってるって!」


 パークスは、巨漢から溢れ出る戦意と凶暴さを感じ取り注意を促す。エマも感じ取ったのか、冷や汗を流しながらも構える。


「オラァ!!」


 そして巨漢の拳がパークスとエマに突き刺さり。


「ガッ!?」

「イギっ!?」


 吹っ飛ばされた。


 いや、わざと吹っ飛び衝撃を流したといったほうが正しいか。パークスとエマは、今までの冒険者人生で衝撃を逃がす技術を身に着けてたのだ。


 二人は、空中でクルリと回って地面に着地する。そして、何度目か分からない冷や汗を流す。


「ッ·····!馬鹿力過ぎるだろう!」

「腕がまだ痺れてる!?こんなこと無かったのにさぁ!」


 パークスの鎧は砕け、エマの衣服が一部破け腕が震えていた。


「ほお〜、さっきまでの奴等とは違うじゃねぇか!いいぞいいぞ!まあ、さっきのはほんの挨拶代わり」


 巨漢は、快活に笑いながらも殺意を漲らせながら腰を深く深く屈めて両腕を地面に付け前傾姿勢となる。その構えは、まるで四足歩行の獣。


「さあ、本気だぜぇ!マジと描いて本気だ!耐えてみろよ?お前等ぁ!!」


 巨漢は、そう叫んだ後一気に加速、拳を振りかぶる。


「まずはお前からだ、女ぁ!」

「いかん、エマァ!!」


 パークスは、エマを突き飛ばして剣に魔力を集中させる。


「喰らえ、《白氷収束斬(アイスブレード)》!!」

「ヌンッ!」


 パークスは、白い氷を纏った剣を巨漢へ振り下ろす。巨漢は、意に介さず拳を突きだす。


 衝突する剣と拳、吹き荒れる風。


「···ぐっ!」

「ヒヒっ!」


 パークスは顔を歪ませ、巨漢は仮面越しに笑う。やがて拮抗していた剣と拳のつばぜり合いは。


「あっ!」

「隙きありィィ!!」


 拳へと軍配が上がった。剣は折れ、パークスの胸に拳がねじ込まれる。あまりの威力にパークスの口から血が漏れ、後方に吹き飛ばされる。


「ッ!パークス!」

「そら、追撃だ!」


 吹き飛んだパークスへ駆け寄るタロ。そして追撃を仕掛けるべく巨漢は、再び前傾姿勢となり加速した。


 しかしそう上手くは行かない。


「···いけ、〈真銀魔導人形(ミスリルドール)〉!!」


 タロの前に躍り出たドトールは、懐から取り出した三つの人形を叩きつける。すると、小さかった人形が一気に人間大へと変化し巨漢の前に立ちふさがった。


「···〈真銀魔導人形(ミスリルドール)〉は、僕が一ヶ月掛けて作った傑作だ。壊せるものなら壊してみろ!一番!」


 ドトールは、三体のうち一体の人形に命じると、一番と呼ばれた〈真銀魔導人形(ミスリルドール)〉は、右腕を曲刀へと変形させ巨漢に向かっていく。が。


「ふんっ!」


 巨漢の一撃で呆気なく粉砕されてしまった。


「おいおい、脆いなぁ。こんなんじゃあ!」


 巨漢は、もう一度拳を振るう。


「···ッ!?二番!」

「オレの相手に」


 振るわれた拳は、二番と呼ばれた〈真銀魔導人形(ミスリルドール)〉を粉砕し。


「なれないぜ!」

「···三番まで!?」


 盾を構えていた三番と呼ばれる〈真銀魔導人形(ミスリルドール)〉も盾ごと破壊した。









「いい加減に、しろぉ!」

「おっ」


 そこに腕の痺れから復活したエマが巨漢に向かって跳躍する。


「《炎武·深裂脚》!!」

「お〜」


 炎を纏った脚で踵落としを放つエマ。巨漢は、別にどうこうする訳でもなく、普通に関心しながら受けた。


 踵落としで地面にめり込む巨漢。エマは、再度跳躍し仲間の元へ降り立つ。


「···ダメージあったと思う?」

「さ、流石にあったんじゃないの?」

「いえ、油断は出来ません。何かしらの防御スキルを発動したかも」

「とにかく今は逃げよう!こんな所にいたんじゃ命が幾つ合っても足りない!宝は惜しいけど、命には変えられないぞ!」


 ドトールが巨漢を見据えて呟き、エマが汗をかきながら楽観的に答え、タロが警戒を促す中、パークスは直様退却することを提案した。


「···そうしよう」

「タロ、アンタ転移魔道具持ってたでしょう?使いなさいよ」

「分かってます。···さあ、いきますよ?」


 タロは、懐から出した丸い転移魔道具を取り出し、起動させる。


 しかし、転移魔道具は効果を発揮しなかった。


「···え?」

「そんな!?起動出来ているのに!?」

「····まさか!」


「おう、そのまさかだな」


 その声にパークス等は、後ろに振り向く。そこには、さっきまで倒れていた巨漢が立ち上がり首をゴキゴキと鳴らしている。


 巨漢がしていた仮面は、見事に砕け散り素顔が顕になっていた。逆立つオレンジ色の髪に猛獣の如き赤き目、獰猛に笑う口。浅黒い素肌。


「ま、魔人、だと」

「せっかく楽しい楽しい戦いを行うんだ。逃げられちゃ困る」

「転移を妨害する結界か!クソったれ!」


 巨漢、魔人ギオは左右の拳を突き合わせながらこちらに近付いてくる。


「おい、女。お前の一撃中々良かったぜ?足の指がタンスの角にぶつかった時ぐらい痛かった」


 と、よくわからない評価をしながら魔人ギオは、獰猛に笑い構える。




「さあ、第二ラウンドだぁ!」


 そう言って魔人ギオは、再びパークス等に襲いかかった。

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