死霊公の軍団②
死霊公の軍団②です。
◆主人公side
「そうか。西の町にいたアンデッドは全滅したか」
「はい。アンデッドの大体がスケルトンやゾンビ、グールなどの下級アンデッドだったので、楽に対処出来たようです」
「ふむ。楽に対処出来たのは拍子抜けだったが、恐らく先程動きだした奴等が本隊だろう。急ぐぞ」
現在カゲマサ達は、ファースの街がある方向に向かっていた。メンバーは、カゲマサ、シロ、ドーロ、ロウガ、カレン、そしてオーク兵20、ゴブリン25、ゴブリンプリースト2、etc.を連れて来ていた。
オークの魔人たるカレンは、先程の会話を聞いても驚きはしなかった。ドラゴン相手ならば数千の雑兵を集めても敵わないことを知っているからである。
「マスター、敵本隊には少なくとも敵の主力がいるはずです。ここは私が!」
「ああ、頼んだ。他の奴等もシロについていけ」
「ちょ!マスターはどうするんですかい!?」
ロウガが驚いたように聞くと、俺はコートを着て茶色の仮面を被り、仮面の下で笑う。
「敵の先鋒を倒してくる」
そう言って、アンデッド兵の先鋒の所に駆け出した。
「あ~あ、何でこうなったかね。やっぱりDP入るから対価がわりの意見を受けちゃったからかね。目立ちたくないって言ったのに早速真逆のことをやってるよ。まぁやるって決めたからやるけどさ」
俺は一人愚痴ると、アンデッド兵の先鋒に目をやる。大半は人間の死体をベースにしているアンデッドだが、ゴブリンやオークの死体と思われるアンデッドもいた。ここまでは西の町と同じである。だが、そのアンデッド兵は異形だった。あるアンデッドは右手が異常に太かったり、またあるアンデッドは両足が異常に長かったりと体のパーツの一部が肥大化していた。
そして、特に目を引くのは中央にいる特殊なアンデッド。一体目は、背は低いスケルトンだが杖を持っていることから魔術師であることが伺える。ニ体目は、体格のいいスケルトンで武器に鉄の斧を持っている。三体目は、ニ体目より更にでかく武器として持っているのは、刺付きの金棒だった。
「なんだこれ、びっくり人間コンテストじゃないんだから。はぁ、もういい。さっさとやろう。」
こうしてる間にアンデッド兵が、街の壁にたどり着いてしまう。実はこの前に、カレンからあることを教わっていた。それは。
「魔法の行使に必要なのはイメージだったなカレンよ。参考になったぜ」
俺がイメージしたのは、光魔法の爆弾、アンデッドは光魔法と神聖魔法に弱い。なら、広範囲に攻撃出来る爆弾ならいけるかと考え、魔力を込めてイメージしたのだが。
そう考えていると、自分の手のひらに白い光を放つ球体が出てきたではないか。投げるか。
「頼む!爆発しろ!」
俺は願いながら、アンデッドの大群めがけて光の球体を放った。すると、辺りがピカッと光り、一瞬目の前が真っ白になった。
しばらくして目が回復したので、アンデッド兵のいた所を見ると辺り一面、更地になっていた。半径50メートルの円の中には、何一つ残っていなかった。草も石もアンデッドさえも。
「なんじゃこりゃ?」
俺はその光景に、暫し呆然としていた。
「何?あれ・・・・。」
無言になったモンスター達の中でカレンだけが、ポツリと呟いた。
「マスター、・・以前からただ者ではないって思ってたがここまではとはなぁ」
「スゴイ」
「さすが我らのマスターね!」
次にダンジョンの幹部が、カゲマサに畏怖、称賛、感動の声をあげる。他のモンスターも、称賛の声をあげ始めた中、カレンは一人考える。
(あんな威力の魔法が、初級魔法にあったかしら?あの人は初級魔法しか使えないって言ってたけど、あんなの初級魔法じゃない。下手すれば上級魔法・・・・・!)
カレンは一人考え、カゲマサは並の存在では勝てない怪物と考えた。そして、
(私たちは運が良かったんだわ。とても)
もしあの人が極度の悪性を持っていたなら、私たちオークなどすぐに滅ぼされただろう。よくて奴隷だった。カレンは一人そんなことを考えていた。
「さぁ我々もいくわよ。マスターに遅れを取るな!」
「オオォォォォォォ!!!!」
モンスター達は、後方のアンデッド兵に襲いかかった。アンデッドは途方もない数で向かってくるが、ドーロと三体のトロールがこん棒でなぎ払う。ドーロ達がこん棒を振るう度に何十体ものアンデッドが弾け飛んだ。ロウガは、手に石で作ったメイスを持っている。これは、スケルトンに対して打製武器が効きやすいからである。
「ジャマ」
「ハッハーーーーー!退けや骨野郎が!」
ドーロは鬱陶しそうに、ロウガは楽しそうにアンデッドを倒していく。そして
「皆退きなさい!」
シロが指示を出し、モンスター達は一斉に退く。そしてシロが、白いブレスを残ったアンデッドに放つ。アンデッドは抵抗できずに、ブレスに飲み込まれ消滅した。
シロのスキル、光のブレスには光属性つまり光魔法と同じ性質がある。アンデッドに対して特効があるのだ。
「さっ、アンデッドの死骸を集めてダンジョンに持ち帰るわよ!」
モンスター達は、ダンジョンの糧とするためアンデッドの死骸をダンジョンに持ち帰った。
◆死霊公サイド
時は少し遡る。
死霊公は、いつもの洞窟最深部でアンデッド兵を送り出したあと、自身の作戦を確認していた。
「まずは、陽動で西の町にアンデッド六千を送り込む。領主は慌てて増援を送るだろう。ただし領軍は、各地に分散されて即応できない、ならば使うは冒険者や神官だ。その増援部隊を我が叩き潰す。そうなれば西の町は滅び、人間は我の手駒になる。そして増えたアンデッド一万以上の軍団で領都を攻撃、ファースの街を滅ぼす」
死霊公はここまでは独白を進めると、チラリとドラゴンゾンビを見た。
「万が一アンデッド兵一万がやられてもアレがあれば何とかなる・・・・はずだ」
そう言って、死霊公は冒険者を襲撃すべく洞窟内から出た。
その後しばらく時が進み。
冒険者や神官を全滅されたあと、死霊公はドラゴンゾンビを連れてファースの街周辺に行こうとしたとき。
西の町に送ったアンデッド兵半数の反応が消えた。
「なんだと!?」
今も次々にアンデッドの数は減っている。
「どういうことだ!?」
それに続き、ファースの街に送った本隊も急激に減っている。
死霊公は混乱した。あのサキュバスは高い戦闘力を持つ人間はいないといっていた。ならばこんなに早くアンデッド兵が消えるとはどういうことなのだ。
「くそ!偽の情報を掴ませおったな!?あのサキュバスが!おのれおのれおのれェェーーーー!!!我が復讐を妨げおってェェ!!」
ハイサキュバスのハイサに怨嗟の声をあげ、死霊公はファースの街に急いだ。
次回は、死霊公ご本人登場です。
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