死霊公の進撃、そして反応
死霊公進撃します。
◆死霊公サイド
「良し、準備は整ったぞ。・・・・・時は来たのだ!」
空が暗くなった時、洞窟最深部で死霊公は静かに呟く。側には、先程アンデッドにしたドラゴン、いやドラゴンゾンビがいる。そして万を超えるアンデッド兵がいる。アンデッド兵は森の出口付近に、水魔法に分類される【ミスト】と呼ばれる魔法で隠されていた。
「たとえ、アンデッド兵がやられようが、こっちには切り札がある。負けはせん・・・!」
死霊公は、切り札であるドラゴンゾンビに自身の持ちうる全ての強化技術の中で、最も最適な強化技術を施していた。
「だが、懸念があるのは冒険者や神殿の者共だ。奴等はモンスター退治のプロ、神官共はアンデッドに対して有効な神聖魔法が使える。奴等をどうにかしなければな」
死霊公は、考えに考えた結果、一つの作戦を思い付いた。
「ふむ、上手くいけば冒険者や神官共を始末できるが、失敗すれば自分も只では済まないな」
だが、死霊公はこの作戦を決行することにした。
◆領主サイド
夜になり辺りが真っ暗になったドミニク辺境伯領の領主、マジーメ・ドミニクは突如その報告を聞くことになる。
「西の町にアンデッドの軍勢が現れただと!?本当かオルフェ!?」
「はい。町に駐在していた領軍からの伝令が申しておりました。間違いないかと」
「遂に死霊公が動きだしたか・・・・!」
オルフェ・コーコーヤから報告を聞いたマジーメは、恐れていた事態が起こったことに戸惑いを隠せなかった。
「閣下。狼狽えている時間はありません。早急に対策を練らねば」
「ああ、わかってる。それで数は?」
「およそ六千ほどだと。人間のアンデッドやゴブリンのアンデッド、他にも様々なモンスターのアンデッドが勢揃いしているそうです」
「先代の時より、およそ五倍の軍勢か・・・・。死霊公の姿は?」
「死霊公は確認できなかったようです。ただ、アンデッドの中に普通の個体とは明らかに違う個体がいると」
普通とは違う個体、恐らく上位種だろう。マジーメはそう考え、オルフェに更に問う。
「では、冒険者と神官を向かわせるか?」
「いえ、もしこれが陽動ならば下手に冒険者達をファースから離す訳にはいきません」
「う、だが六千もの軍勢を陽動に使うか?」
「こう言う見方もできます。奴は六千の軍勢を囮に使えるほどの大軍を持っているか、この街を攻めるアンデッドが六千体分の戦力かです」
「どちらも想像したくないな」
「ええ、対してこちらの数は、領軍全て集めても三千ほどです。冒険者や神官を従軍させても、大した数にもなりません。」
「・・・どうすればいい?」
マジーメは、どう考えてもいい案が出なかった。
「閣下。今は出来ることをやるしかありません。とにかくアンデッドの軍勢を野放しにしてはなりませんぞ」
「そうだな。冒険者と神官から出来るだけ派遣してくれ」
「ははっ」
オルフェは一礼し、派遣する人員を決めるため退室した。
◆主人公サイド
「アンデッドが動きだした?」
「へい。シャドウウルフから報告でさぁ。数千体ものアンデッドか町に向かったと。」
ダンジョンの幹部ロウガの報告に俺は頭を悩ませる。
「数千体か・・・・。」
「マスター、どういたしますか?」
シロが尋ねてくるが、俺には町にいる人間を助ける義理もないし助けるメリットも無い。それに目立ちたくないし。
「あ、あのアンデッドは殲滅した方がいいんじゃないんでしょうか。」
「え?」
そう言ったのは、ダンジョンに匿うことになったオークの“巫女”、カレン・ブだった。
「何でかな?人間は我々と敵対関係だぜ?人間を助けても感謝が返ってくるとは思えない。寧ろ敵が増えたと誤認するぞ」
「い、いえそうじゃありません。ここでアンデッドを殲滅しないと、更に数が増えてこっちに来るんじゃないかって」
あ、それは言えるかもしれん。アンデッドは大抵死体から発生する。奴等が大量の死体を手に入れたなら、ダンジョンも一溜りもない。
「だが、正体はバレたくないけど」
「これを被ってはどうでしょうか?」
そう言ってカレンが取り出したのは、茶色の仮面を取り出した。目と鼻のところだけ穴が空いているだけの茶色の仮面だった。
「これと何か羽織るものがあれば」
「それなら、冒険者から奪ったマントがある。それを使うか。」
この時点で俺は、アンデッドを殲滅すると決めた。
「マスター!シャドウウルフから、更に追加でアンデッドが数千体動きだしたと報告がきました。!後、でかいアンデッドもいたそうですぜ!」
うわ、まだいるのかよ。黒幕いるとしたら、どれだけいるんだ。
「そうか。シロ、ダンジョンを守る戦力を残し、アンデッド討伐部隊を二つ編成しろ。ただし、人間には出来るだけ被害を出さないように。敵と認識されたら面倒だ」
「承知しました」
俺は、シロに指示を出し出撃の準備をしにコアルームに向かった。
次回は、死霊公の軍団の予定です。
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