死霊公、そして絡む思惑
死霊公サイドです。
※色々追加しました。
◆死霊公陣営
「ク、ククククククククハハハハハハ!!!!」
ある洞窟内で死霊公は、狂気を含んだ笑い声をあげていた。
「いける!!これだけの兵力ならば私の大願も成就出来るぞ!!!」
「随分と上機嫌ですね。」
すると、死霊公しかいないはずの洞窟最深部に女性の声が響き渡った。
「何者だ!?」
死霊公が振り替えると、そこには扇情的な服を着て頭に黒い角、青い髪、豊満な肢体をもった女性が立っていた。傍らには、闇から吐き出された何か巨大な腐臭漂う物体が置かれている。
「貴様・・・サキュバスか!いつからそこに!?」
サキュバス。魅了を得意とする女悪魔で、男から精をすいとり干からびさせる人形モンスターである。
「半分正解です。私はハイサ、ハイサキュバスでございます」
「ハイサキュバスだと・・・?一体何の用だ?ッ!まさか私の大願を邪魔する気なのか!」
「まさか、私は貴方に取引を持ってきたんですよ」
「取引だと?」
死霊公は、怪しむようにハイサキュバスのハイサを見るが、ハイサは微笑むだけで表情を崩さない。
「ええ、こちらからは情報とある物を差し上げます。その代わりにあなた様がファースの街を攻め滅ぼした際、大量の金銀財宝や魔石をいただきたいのです」
「金銀財宝と魔石だと?ふん。金銀財宝ならばよいが、魔石は駄目だ。アンデッドを作るのに魔石の有り無しでは大きな差が出る。良い魔石は、アンデッド作りに使うのだからな」
「こちらを差し上げますと言ったら?」
そこには、バスケットボールサイズの赤黒く光る魔石、そして。
「こ、・・・これ、は」
ハイサの側に置かれた腐臭漂う物体、赤い鱗に巨大な羽、体長7,8メートルはあるドラゴンの死体だった。それも只のドラゴンではなかった。
「ランクB+はあるとされるレッドドラゴンとは・・・・!」
この死体とあの魔石があれば、並の人間では勝てない優秀なアンデッドが出来上がる。そう死霊公は考えた。
「・・・いいだろう。魔石はくれてやる。好きにするがいい」
「ありがとうございます。」
それからハイサは、死霊公に知る限りの情報を伝えた。ファースの街は、今領軍が各地に分散していて手薄になっていること。領主が、死霊公対策なのか神殿や冒険者ギルドに何かを要請しているような動きがあること。ドミニク辺境伯領は、財政難で国軍を呼ぶほどの余力は残っていないこと、などであった。
「ならば攻めこむのは、今が好機か?」
「そうですね。こちらとしても、早く金銀財宝や魔石を手に入れたいので」
ハイサの言葉の裏には、いいから早く攻め込めと言っている。死霊公もそれを分かっていた。
「よかろう。今日の夜にファースの街を攻める。貴様の主にも伝えておけ」
「ありがとうございます」
ドラゴンの死体という上物を手に入れるには一人では困難、ならば組織的に動いていると考える方が自然だ。
「それでは、マスターに伝える為に戻らせていただきます。御武運を」
ハイサは、胸の谷間から小さい石を取り出すと、石を床に叩きつける。すると、ハイサの姿がその場から消えた。
「人間の開発した使い捨ての転移アイテムか。そんなものを持っているとは、奴の主は人間か?・・・いや、奴はマスターと読んでいたな。まさか、ダンジョンマスターか?・・・まあ良いか、無闇に正体を暴き立て関係を壊すよりかは、利用し合うほうが良い」
そう言って死霊公は、気を取り直し作業を始める。大願の成就の為に。
「見ておれよ、セブンス帝国よ。私を帝国軍から追放した報い、いま受けさせてやる!」
「ただいま戻りました。」
先程死霊公との取引に成功したハイサは、自分の主たる者の所に帰還していた。
「ご苦労様。それで?どうだったの?私が送ったレッドドラゴンの死体は。喜んでた?」
「気に入ってましたよ。あ、交渉は成立しました。後は死霊公が動くのを待つのみです」
「そう。それにしても、昔にセブンス帝国軍の魔法連隊長だったのに、横領がバレて処刑。今じゃアンデッドになって帝国に復讐とはね。完全な自業自得じゃないの」
「まったくです。まあ、精々我々の糧になってもらいましょう。因みに見張りとしてインプを送り込みましたので、あちらの情報はすぐに入ります。ご安心を」
「おお。そりゃ良かったな!」
そう言ったのは、彼女の主ではなく主の側に控えるハイサキュバスだった。名前は、キュース。赤い髪と赤い目、そして赤い光を放つ槍を持つ。体は、ハイサとは違いスレンダーである。
「これで計画は一歩進んだな!」
「ええ」
「ねぇハイサ。」
「はっ」
「本当に不安要素は無いのよね?」
「はっ。街や森周辺を回りましたが、今の死霊公に勝てるものはいません」
「そう」
「そういえば、派閥の件はどうなされましたか?」
「そっちも順調よ。今や新人の中では私の派閥が最大派閥、どんなやつでも数で圧殺できるわ」
「それはようございました」
「じゃっ私は、休むから。後はよろしく頼むわよ」
「「お任せください」」
二人は頭を下げ、主が去るのを待つ。主が去ったあと、
「じゃっあたいは、ダンジョンコア守っとくから。作戦頑張りな?」
「わかってるわよ。」
そしてハイサは、死霊公が動くのを待った。
この時、ハイサは自分がミスをしていたことに気づかなかった。ハイサが調べたのは、森周辺。周辺である。森の細部まで隅々まで調べたら発覚したことだった。だが、誰が予想できる?
死霊公のいる洞窟のすぐ近くに千、いや万を越える雑兵なら瞬時に壊滅出来る戦力がいるなど。邪神お手製の魔人になった転移者兼ダンジョンマスターがいるなど。
次回は、死霊公進撃を投稿予定です。
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